3階の者だ!!

DEBがお送りするネタバレありのコミックス紹介ブログです。 短編物では一話にスポットを当てて、長編物ではこの後どうなるの?と言うところまで紹介しているつもりです! ※作品記事につきまして、権利者様が問題があると感じられた場合はご一報ください。対応いたします。

カテゴリ: 伊藤潤二

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本日紹介いたしますのはこちら、「憂国のラスプーチン」第3巻です。
小学館さんのビッグコミックスより刊行、ビッグコミックにて連載されています。

作者は原作が佐藤優先生、脚本が長崎尚志先生、漫画が伊藤潤二先生。
本作の紹介は「伊藤潤二」のテーマにてまとめておりますので、よろしければそちらもあわせてご覧ください。

さて、佐藤先生の実体験を基にして息詰まる検察との意地のぶつかり合いを描いている本作。
第2巻では交友があった人物や、ついには尊敬する都築議員も逮捕されてしまい、ますますその戦況はかんばくなくなってきてしまった憂木。
本巻でもますます執拗に攻めてくる高村との舌戦や、憂木の体験してきた外交の修羅場などを描きます!

その日の取調べは一風変わった開幕を迎えました。
開口一番高村が発したのは、深々と頭を下げての謝罪!
憂木をいろいろ理由をつけて捕まえたが、そのどれもが動機がない、リスクとリターンがまったくつりあわないと言い出すのです。
じゃあ無実じゃん、と当たり前の反応を返す憂木ですが、勿論それは高村の作戦。
それでもこれは国政捜査だから、これじゃ勇気を捕まえた意味が無い、この上都築の事件を作れないとなると申し訳ないから、「もう一件我々で何か作りたい」と言うではないですか!
無いはずの事件を作りたいと聞いては憂木も当然、アンタおかしいんじゃないかと怒らざるを得ません。
高村は一転していつものいやらしい笑みを浮かべながら、そこで憂木のことをもっと知りたいと語るのでした。

高村は憂木の行動理念がいまひとつ理解できませんでした。
女、風俗、不動産、不正蓄財。
都築の通帳も勇気の通帳もキレイなモノで、それらのよろしくない金の動きが一切なく、それどころか私生活や私財と注ぎ込んでまで北方領土問題に挑んでいたのですから。
その動機は「都築にほれ込んだから」だと憂木はいつも答えるわけですが、高村はそれだけではないだろうと突っ込んで聞きます。
すると憂木はもう二つの動機を口にしたのです。
ひとつはノンキャリアから上り詰めた事からもわかる、外交官としての野心。
そしてもうひとつは、本橋、田淵、堀の三人の総理大臣の熱意に感動したからだと言うのです。
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それを聞いた高村は意外だという顔つきをします。
勇気のようなインテリなら、総理なんかと馬鹿にしていると思っていたからです。
ですが憂木はとんでもないとばかりにそのエピソードを語り始めたのでした。

まずは本橋虎太郎総理。
彼は都築から時のロシア大統領、エリツィンが彼の次女、タチアーナに裏切られていることを知りながらもあえてだまされている不利を続ける、リア王のような一番愛されたいものに愛されない喜びを知る者である、と憂木に聞かされて外交方法を再考しました。
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どうやら本橋にも信頼していた部下に裏切られた過去があったようで、彼に共感を覚えて駆け引き無用の個人的信頼関係を築こうとして成功。
外交を有利に進めたんだそうです。
また、彼は会談に挑むときも官僚が用意した発言要領をほとんど見ない、抜群の記憶力ももち合わせており、明らかに外交でロシアをリードしていたのです!!

続く田淵栄三総理は、温厚そうに見えて熱血漢だったとか。
あるとき本橋とエリツィンが信頼の証にキスをしていたシーンを思い出し、どうやってやるのか教えてくれと憂木と都築の2人に再現させました。
嫌々ながらも両頬にチュッチュとキスし、最後に意を決して口同士で熱いベーゼを交わす2人。
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ですが田淵はいまひとつ納得できないらしく、ついには自分と憂木で再現してみようと言い出したのです!!
一方で本橋とは違い、官僚の用意した発言要領をすべて丸読みしていた田淵。
一見すると記憶力が悪いのか、官僚の言いなりなのかと思われがち。
しかし実際は準備段階で納得のいかないことがあるととことん納得のいくまで突き詰めていくタイプだったのだそうです。

最後の堀敏朗総理。
世間では評判が悪かった彼ですが、憂木の印象は違います。
次期総理候補が堀内閣打倒に立ち上がった「古藤の乱」。
その勢いもあって総理としての地位が風前の灯となった堀。
彼がプーチンとの会議の前日に憂木に対してこんなことを言ったのです。
自分はもう駄目かもしれない。
だが主将が古藤になっても、自分に使えるのと同じ気持ちで仕えてくれ。
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憂木は日ロの関係のために必要だ、古藤になった後も頼むぞ、と!
自分の地位を失っても、そのあとの日ロ関係を憂えていた堀。
そんな状態でも日ロ首脳会談を成功させ、プーチンと個人的信頼関係を築き上げた彼もまた、憂木にとっては命を懸けて仕えるべき存在だったのでした。

高村はそんな話を聞き、それほど三総理に近く接したなら嫉妬を買うよなぁ、とチクリとやった後、歴代総理の共通点ってあるのかと尋ねて来ました。
憂木はまずカリスマ性と返答。
その答えには高村はいまいちピンと来なかったようですが、憂木はさらにこう続けました。
「寂しい人たちだった」と。
自分の知る総理は誰もが国家のため身を削る立派な人たちだった。
それなのにいつもマスコミは言動や行動を揶揄し、笑いものにする。
いつも孤独な人たちだった、と……

というわけで、総理の逸話が語られた今巻。
モデルとなった実在の総理たちのイメージと照らし合わせたりすると、より興味深く読める内容でした。
勿論このあとも様々な逸話や高村との戦いは続きます。
外務省にいたと言う幽霊とその幽霊を作り出したホトケ。
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世間を先導するマスコミの偏向報道。
ついに突き止められてしまった続きから渡されたある金を巡っての戦い。
エリツィンを巡る権力闘争で暗躍する謎の男、カルテンブルンナー。
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様々な衝撃的な事件と、息詰まるやり取りが描かれるのです!!

今巻もグイグイと読ませる「憂国のラスプーチン」第3巻は全国書店にて発売中です。
政治を取り扱い、更に実在の人物をモチーフにしているためにとっつきづらい印象もある本作。
内容の是非はともかく、引き込まれてしまう内容であることだけは確実!
物は試し、敬遠していた方も読んでみてはいかがでしょうか!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!


憂国のラスプーチン 3 (ビッグ コミックス)
小学館
2011-10-28
長崎 尚志

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本日紹介いたしますのはこちら、「憂国のラスプーチン」第2巻です。
小学館さんのビッグコミックスより刊行、ビッグコミックにて連載されています。

作者は原作が佐藤優先生、脚本が長崎尚志先生、漫画が伊藤潤二先生。
本作第1巻の紹介は10年12月26日の記事に、それを含めた伊藤先生作品の紹介は「伊藤潤二」のテーマにてまとめてさせて頂いております。
ご興味等湧きましたら、そちらもあわせてご覧くださいませ。

さて、佐藤先生の実体験を基にした、検察とのバトルを描く本作。
北方領土問題に挑む都築議員の部下である憂木が、彼の信念と敬愛する都築議員、そして日本を守るため検察と戦い続けます。
拘留され、様々な心理的攻撃を受けながらもまったく折れない憂木。
ですが相手もさるもの、手を変え品を変えて憂木の心を揺さぶってくるのです……

信頼していた商社マン、今田が検察によって落とされ、偽計業務妨害での再逮捕となってしまった憂木。
もちろん憂木はそんな覚えはないと主張するのですが、だからといってじゃあ無実!といかないのは当たり前です。
改めての取調べとなるわけですが、このまま黙っていてはずるずると相手のペースに引き込まれていずれは心が折れてしまいかねません。
そこで憂木はとうとう反撃を試みることにしたのでした!

憂木が試みた反撃とは、つい先ほどテレビで放送されていた憂木自身の再逮捕に関する報道に関してです。
北方四島のディーゼル事業に入札できないようにした主犯が憂木だ、と報道していたのですが、そういうガセネタを流したのは検察だろう!と噛み付いたのです。
それを聞いた検察の高村は少し慌てたような表情を見せ、ちょっと待ってと言い残して取調室を去っていってしまいました。
確かにまだ何も確定していない状況で、まるで完全に犯人扱いしているような報道は偏っていると言わざるを得ません。
血相を変えた高村を見送った憂木は噛み付きすぎたかなと勝ち誇ります。
その余裕からか、部屋に残っているもうひとりの男に高村の人となりを尋ねてみました。
ところが他の検事同様えらそうなのかい?との問いに、帰ってきたのは「真面目で仕事熱心、きっちりしていて人当たりもいい」との賛辞ばかりです。
たいていの特捜検事は時間に対して変則的で、午後から取調べを始めてとっぷりと夜が暮れるまで取調べをする。
が、高村は容疑者に対してそれをやらず、特に憂木に対してはいつも夜、短時間の取調べだけ。
その話を聞いた憂木は、冷静に高村の情報を反撃の手段にしようと分析。
それで簡単に評価を変えようとは考えません。
すると程なくしてそこへ高村が帰ってきました。
彼の口から出てきたのは、電話で文句を言ってきたと言う言葉。
検察で余計なことを漏らすやつがいるから、難しい性格をした憂木があばれて取り調べにならないよ!と告げてきたのだそうで。
きむずかしやの暴れん坊呼ばわりされた憂木はむっとした表情を浮かべますが、高村は今日の取調べはなしにするから怒らないでよとおどけて見せます。
上も暴れている=黙秘はしていない、ととってくれ一安心しているんだそうで……
そして口のすべりが良くなってきた高村は、「駐車違反と同じ」などと言い出します。
今田の起こした犯罪に対し、「なんて大罪を起こしたんだコラ!」とは思っていない、談合は日本の文化で本気で企業が価格競争なんかしたら会社がつぶれまくる、必要悪だ。
だから駐車違反のように皆やっているし、みつかったらごめんなさいって素直に謝りさえすれば問題ないよ……と!
その言葉は自分が絶対に悪事を働いていないと確信している憂木にとっては、火に油を注ぐようなものです。
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いい加減にしろ、そうやって言葉巧みにだまして罪を認めさせようとするんだろう!と激高します!
高村もその様子を見て大きくひとつため息。
今日も憂木を落とすことができなかったと言うわけです。

が、今日の戦いはこれでは終わりません。
いえ、戦いではなく、憂木からのお願いというか、注意がひとつ投げられたのです。
今田を落としたとき、商社マンはアイスクリームのようにすぐ溶ける、と形容した今田。
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商社マンがアイスクリームのように溶けやすいのなら、自殺に追い込むようなことはするな。
憂木は刺すような眼光と共にそう念を押すのです。
その言葉は、決して過ぎた猜疑心から生まれたものではないことが数日後にわかることになります。
裁判所に移送されるとき、たまたま見かけることとなった今田。
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その姿は見る影もなくやせ細り、国益のための夢に燃えていた在りし日の彼からすると見る影間ない姿になっていたのです。
憂木はその背を見送りながら、声に出さないエールを送ります。
この拘置所が人生の終着点じゃない。
ここからが出発点なんだよ!と……!
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この後も憂木は戦い続けます。
ある程度の自由があり、その間に勉強もできればデザートなんかも注文できる。
更に食事もなかなかのものが出るこの生活を完全に受け入れ、「拘置所は楽しい!」と開き直るのです!
ですが周囲の状況は良くありません。
一見話がわかるようにも見える高村は、その奥に鋭い観察眼を持っている油断なら無ない相手。
さらに悪いことに、とうとう都築議員が逮捕されることになってしまうのです。
高村は様々な材料を使って憂木を追い詰めようとしてきます。
憂木もまたハンガーストライキ等で対抗するのですが……
果たしてこの終わりの見えない検察との戦いを潜り抜けることができるのでしょうか?
事体は好転する気配すら見せないのです……!

というわけで、行き詰る攻防が繰り広げられる本作。
現実の世界でこの事件の真相がどうなのかはおいておいて、本作では絶対の正義(と本人は確信)を背にした主人公が、孤独に戦う様を淡々と描く作品になっています。
揺るがない精神力で、拘置所生活も難なく(?)すごし、絶対的不利であるはずの検察相手にも引かない憂木の姿には思わず肩入れしてしまうこと必至でしょう!!
ですが問題は着々と崩されていく城壁……周囲の状況です。
都築はともかくとして、かつての仕事仲間などははやくも憂木にすべてを擦り付けて事件を終わらせてしまおうと言う動きを見せてきています!
無論そのもと仕事仲間は国家の組織であるわけで。
もはや憂木の周りは弁護士以外、敵しかいないといっても過言ではないのです!
もちろんその敵の手は同じく拘置されている都築にも伸ばされていて……
緊迫の状況は続き、読者をより引き込むのです!!

あと注目したいのは、結構豪華な拘置所のお食事。
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なんかシャバよりいいものでてるんじゃ……と思う献立は、あなたの興味をそそっちゃうこと間違い無しですよ!

敵だらけのなかでの孤軍奮闘、「憂国のラスプーチン」第2巻は全国書店にて発売中です!
伊藤先生の本職(?)であるホラー的描写はなりを潜めている今巻。
ですがその分、より人間の心理描写に力が割かれており、物語に没入できること請け合いですよ!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!


憂国のラスプーチン 2 (ビッグコミックス)
小学館
2011-06-30
佐藤 優

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本日紹介いたしますのはこちら、「憂国のラスプーチン」第1巻です。
小学館さんのビッグコミックスより刊行、ビッグコミックにて連載されています。

作者は原作が佐藤優先生、脚本が長崎尚志先生、漫画が伊藤潤二先生。
佐藤先生は外交官として活動された方で、現在は主に文筆業などをされていらっしゃいます。
長崎先生は様々な雑誌で編集者として活躍された後、いろいろあって浦沢直樹先生作品などに協力をしたり、その他様々な名義で漫画原作をされている方。
そして伊藤先生は押しも押されぬホラー漫画家で、「伊藤潤二」のテーマで著作の紹介をまとめさせていただいております。

さて、本作は佐藤先生のをもとにして描かれた作品です。
それゆえ実在の人物や政治家をもとにしたキャラクターが登場していて、その描写にはいろいろと思うところある方も多いかもしれません。
ですがそこはそれ、漫画として楽しんで読めるしっかりとした内容になっているのです!

2002年5月。
ざわつく外の様子を見た憂木は、コーヒーを入れている手の古江を押さえられませんでした。
いよいよ今日なのかと呟いていると、電話が鳴り響きます。
出てみれば、相手は都築と言う政治家。
彼こそが勇気が敬愛し、同時に今こうして逮捕寸前の状況に追い込まれる原因を作った人物。
憂木が暴走して行ったという背任の容疑で逮捕される……その日が今日だとまことしやかに噂されている状況で……
どうして一介の主任分析官だった自分が国を揺るがす大悪人に仕立て上げられてしまったのか。
悔しさのあまり荒れる彼の元に、やはりやってきた検察。
彼らは「国際学会に出るための費用を、協定に違反することを承知しながら引き出し、3300万円の被害を与えた」と言う被疑事実を読み上げました。
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すると入れ替わりで強面の男が現れ、書類にサインとはんこを押すように指示。
ですが机からはんこを取り出そうとするといきなり怒鳴りつけられ、もう逮捕されているんだからそんな身分じゃない、拇印をおせと朱肉を叩きつけられました。
釈然としないながらも拇印を押すと、次は弁解録取書なるものに今思っていることを書けと命令されます。
思わず僕は無実だと口に出すものの、訪問者達は表情一つ変えずではそう書けと返すばかり。
ぶちまけた思いが暖簾に腕押ししたように手ごたえを得られなかった憂木はやむなくそのまま書類を書くと、今度こそ手錠をかけられて留置所に向かうことになったのでした。

検事に多くの質問を投げかけられ、続いて主だった荷物を預けさせられる憂木。
すると今度は「1095」と言う呼称番号をあてがわれ、これからは番号で呼ばれるからすぐ覚えるようにと言いつけられました。
そして次に行ったのは検査です。
採血などの健康診断の後、何か隠し持っていないかと
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おしりの穴まで調べられることに。
ですが憂木はグッと歯を食いしばって耐えるのです。
たった一人で、これからこの検察と戦い続けるために……!

その後、憂木は「調べ」を受けることになります。通された部屋の中にいたのは逮捕されたときに来ていた眼鏡の男の高村と、同じく拇印を押させた強面の男。
どうやらこれからいわゆる取り調べが行われるようです。
部屋に入った早々、憂木は違法なことなどまったくしていないと待ち構えていた2人に主張するのですが、今日は遅いから簡単な経歴だけ聞く、とはぐらかされてしまうのでした。
そして憂木の大学院での専攻や、両親職業、最近の生活、持病の有無や趣味でスポーツをしているかなど世間話のようなことばかり聞いてくる高村。
最初はその意図がつかめませんでしたが、ゴルフはやらないのかと言う質問などから金の流れを探っていることに気が付きます。
潔白であるならそんな質問をされても埃すら出ないのでしょうが、このまま相手のペースに流され続けていては飲まれてしまうことは必至。
そこで憂木は流れを変えるため、後ろの鏡を指差して「マジックミラーになっていて誰かが監視しているのか」と逆質問を投げかけたのです!
図星なのか、ほんのわずかに表情を変える高村。
まさか、と答えるものの、やはり流れは変わった様子。
長い付き合いになるのでこの辺で切り上げようということになりました。
終了の証に自分は拇印、高村は象牙の印鑑。
憂木は、こうして身の回りのことからも力関係を見せ付けようとしているのかと考えていると、高村もまた憂木の考えを見透かしているようで質問をしてきました。
もしかして勤めてきた情報分析官で培ったテクニックで戦おうとしていないか、と。
押し黙る勇気に対し、高村は更にこう続けるのです。
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勝てるわけがない。これは「国策捜査」なんだから、と!
その言葉をきっかけに、2人の長い長い戦いは幕を開けたのです……!

と言うわけで、手に汗握る憂木と高村の戦いを描く本作。
もう一本の柱として、以前憂木が勤めていた外交官の仕事風景も描かれます。
そちらでは都築の強引なところもあるものの国のために身を粉にして奮闘する姿や、憂木の外交官としての活躍が描写されており、成功を収める回想パートと辛い取調べを受ける現代パートが対照的に紡がれます。
それも単に2パートを混ぜて書いているわけではありません。
外交官の仕事はスパイのようなものだといわれた過去を思い出し、その当時の心情に立ち返って検察との戦いに挑むシーンや、高村に憂木の「ラスプーチン」などと言う売国奴を思わせるあだ名を馬鹿にされたあとに始まる回想で、そのあだ名は都築が命名したものであり、憂木がラスプーチンの世界情勢を見切って預言めいた超能力を発揮したことに由来していることが明かされるなど、現代パートと回想パートが密接に関係している場面が多く見られるのです。

原作つきで、更に原作者の実体験に基づいているということもあり伊藤先生には切っても切れないホラー要素、オカルト要素は一切皆無。
ですが高村の不気味な自身や、不安をあおる薄気味悪さと言う面で伊藤先生の持ち味が発揮されています。
比較的大人しい描写で書かれている本作ですが、伊藤先生らしい表現もバッチリと駆使。
憂木がなんでも思い通りの供述をする「自動販売機」にされてしまう、と言うイメージは
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ホラーでギャグ風味もはらむ伊藤先生ならではの筆致で描かれているのです!

伊藤先生初の原作つきでオカルト要素皆無なドキュメント調作品、「憂国のラスプーチン」第1巻は全国書店にて発売中です!
題材などからいろいろ手を出しにくくなってしまっているきらいのある本作。
確かに伊藤先生なのにホラーやギャグじゃないですし、いろいろ意見がぶつかりやすい実際の事件を基にした作品で、更に政治やなんかの暗部を描くやや高年齢向けの内容と、食指を伸ばしづらい作品かもしれません。
ですが様々な背景はおいておいて、いやらしくアレコレ手を尽くしてくる検察に、正義は我にありと確信する主人公が立ち向かう話として考えれば、素直に読み応えのある骨太な作品になっています。
政治モノはなぁと言う方も、心理バトル(?)モノとしてお手にとって見てはいかがでしょうか。
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!


憂国のラスプーチン 1 (ビッグコミックス)
小学館
2010-12-25
佐藤 優

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本日紹介いたしますのはこちら、「怪、刺す(かい さす)」です。
小学館さんのゲッサン少年サンデーコミックススペシャルにて刊行されました。

作者は伊藤潤二先生と木原浩勝先生。
挿し絵を担当していらっしゃる伊藤先生やその著作は「伊藤潤二」のテーマにてまとめておりますので、宜しければごらんください。
木原先生といえば中山市朗先生とともに編んだ「新耳袋」をはじめとした、怪談関係の書籍を多数発表されている作家です。
伊藤先生とは「ミミの怪談」にてすでにタッグを経験されていまして、今回は再び漫画界と活字界の恐怖2大巨頭が競演となったわけです!

さて、いきなり何なんですが、本作は漫画がメインではありません。
100ページ強の本書のうち、8割は活字による恐怖譚がつづられています。
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ですがその全てのお話にはふんだんに伊藤先生の描く挿絵が描かれており、絵の面でもしっかりと恐怖&伊藤味を楽しめるのです!
正直字だけだと読む気がしないなぁと言う方でも大丈夫!
ページを開いた見開きに絵がひとつもないという場所はなく、どこをとっても伊藤先生イラストに出会えます!
更にフォントにも工夫が。
強調する部分の字が大きくしてあったりするだけでなく、書体が変わったり、字と字の間のスペースが大きくなったり、文字の配置が変則的になったり、字の向きが変わったりと、あの手この手で不安感や違和感を増幅させる仕掛けが施されているのです!

伊藤先生の作品といえば、おぞましく書き込まれた絵柄で、ホラーなはずなのにどこかコミカルな匂いを孕む作風が特徴です。
ですが今作は真っ当(?)なホラーストーリーに挿絵をつけるという構成なため、そのおぞましい絵柄がホラーにのみ作用していつも以上の恐怖感を味わえるのです!
いつもよりグロ描写が少ないにもかかわらず!

そんな数々の恐怖譚のなか、ウチは一応漫画紹介ブログという体裁となっていますし、活字を文字で紹介するのもアレなので、唯一掲載されている漫画作品、「夏の卒業旅行」を紹介したいと思います!

女子大生の直美と和子は卒業旅行として東北にあるホテルに泊まることになりました。
見た目はこぎれいで感じよく、周囲の景色も最高、料理もおいしいらしいということ無しのホテルです。
ホテルに入ると仲居さんたちが丁寧に出迎えてくれ、早速係の人が部屋に案内してくれます。
係の人は夕食は6時、大浴場はロビーを抜けて階段を下りたところ、ごゆっくりどうぞ、とテンプレどおりの説明をして部屋を立ち去りました。
こうなればまずするのはやっぱり入浴。
二人は浴衣に着替え、ロビーを通りぬけ、階段を下り始めます。
階段に足を踏み入れる直前から早くも温泉独特の香りが漂い始め、盛り上がってくる二人。
この温泉はお肌にいいらしいだとか、風呂上りの食事が楽しみだとかキャッキャとはしゃぎながら階段を降りていきます。
ふと気がつくと、
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階段は先が見えないほど長く伸びていることに気がつきました。
この階段はこんなに長かったか?こんなに暗かったか?……いいえ、下り始めたときは明るく、下の階の廊下も見えていたはず。
恐ろしくなり引き返そうかとも思いますが、なんと上方向も同じように暗く長い廊下に変貌しています!
どうしようと抱き合って震える二人ですが、下の方から明かりが上ってくるのが見えました。
それは
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ちょうちんを持った和服の女性。
なにやら異様な気配を発しているのですが、このままここで震えているわけにも行かないわけで、直美がその女性にお風呂はこの先でいいのかと問いかけます。
女性は何も言わず、こくりとうなずいてそのまま上の階へと消えていきました。
上の階へと消えていく女性を見送り、下へと視界を戻すと今度はいつのまにか下の階の廊下がすぐそこに見えるではないですか。
奇妙にも程がありますが、とにかくお風呂についたんだから入ることにする二人。
脱衣所で浴衣を脱ぎ、浴室へと足を踏み入れると
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大勢の人が入浴しているようです。
和子は何か違和感を感じているようですが、眼鏡をはずしている直美はいまひとつピンとこない様子。
妙におびえている和子を置いて直美は先に湯船につかるのですが、入るなり和子は早く出ようと言い出すではないですか!
浴衣を着て脱衣所から飛び出すと、先ほどアレだけ遠かった上階がすぐそこに見えています。
不思議がる間もなく、和子はとにかく急いで直美を引っ張るようにダッシュで部屋に戻りました。
どうしてここまで和子がおびえているのかわからない直美は、素直にどうしたのかと質問。
すると和子は先ほどの浴場に広がっていた常軌を逸した異様さを語りだしたのです……!!
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というわけで、活字、漫画、両面で恐ろしさを味わわせてくれる本作。
ホラー漫画、ホラー文章界ではこの人ありと言われるようなお二方の競演ということもあり、「聞いたことある!」というようなお話がないのはさすがです!
それも単なる恐ろしい話だけではなく、わけのわからない不思議な話、傍から見るとちょっといい話だけど当事者だったら相当おっかないお話などなど、様々な風味が楽しめます!
表紙なんかも一見地味に見えますが、穴が開いていてカバー下本体に描かれたロゴが見とれるような一工夫がされており、本文も含めて気合の入ったデザインとなっているのです!

強力タッグがつづる恐怖絵物語&漫画、「怪、刺す」は好評発売中です!
実際のところどうなのかは知る由もありませんが、全て実際にあったお話を元にしているらしい本作。
ひときわ熱い今夏、このスタンダードでありつつオリジナリティあふれるホラーストーリーで涼しくなるのも宜しいのではないでしょうか!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!


怪、刺す (少年サンデーコミックススペシャル)
小学館
2010-08-12
木原 浩勝

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本日紹介いたしますのはこちら、「闇の声」です。
朝日ソノラマさんの眠れぬ夜の奇妙な話コミックスにて刊行されました。

作者は伊藤潤二先生。
伊藤先生の他作品は「伊藤潤二」のテーマにて紹介しておりますのでよろしければそちらもご参照くださいませ。

さて、こちらの作品は伊藤先生と言うことでやはりホラー漫画です。
ネムキにて連載されていたホラー短編を一堂に集めたホラー好きと伊藤先生好きにはたまらない作品となっています。

伊藤先生作品と言えばやはりトラウマになりかねないおぞましい描写。
この作品でも勿論その芸風は健在で、恐怖や嫌悪感でぞっとさせてくれるものが満載です。
特にこの「闇の声」内でとりわけおぞましい作品と言えば「グリセリド」という一編では無いでしょうか。
主人公は焼肉屋を営んでいる父子家庭の娘。
彼女はその商売や家庭環境のためか家が常に油でギトギトになっており、その上乱暴な兄にいじめられるという憂鬱な毎日を送っていました。
その兄は奇妙な嗜好を持っており、何よりも油を好んでまるで水か何かのようにぐびぐびと飲み干すのです。
そんな生活ですから、成長するにつれ顔中ににきびなどができ、脂ぎった体のせいでいじめられだします。
それによって不登校となり、毎日家でひきこもって油を飲み続けていました。
ある日その体から出る油分が主人公の体にかかり、おもわず「気持ち悪い」と声に出してしまいます。
激昂した兄はならばもっと浴びせてやる、と彼女に馬乗りになって顔中のにきびから油を搾り出し……
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うひいい!!きめええええ!!
怒りに我を忘れた兄は主人公の首を絞めて殺そうとするのですが、すんでのところで父に助けられます。
ですが助ける為に頭部を殴打した際、兄は死んでしまったのです。

そのころから自宅の焼肉屋が最近油ののった美味い肉を出す、と評判に鳴り出しました。
時を同じくして主人公の顔にもにきびができ始め、兄のことがあったり悪夢をみたりと心労も重なり、彼女は憂鬱になって自宅に引き篭もり始めます
何もする気が無くなり眠っていた彼女ですが、大量の油に押し流されると言う悪夢にうなされて目を覚ますとそこには父の姿が。
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なんと眠っている彼女にムリヤリ油を飲ませていたのです!!
自分を「兄のように」しようとしていると感じた主人公はそれから警戒に警戒を重ねて毎日を過ごします。
その間に父は今まで異常に酷い脂性になり、焼肉屋は閉店。
家中に充満する油分はますます増えていきました。
そんなある日、トントンという奇妙な音が聞こえ、出所を確かめようと主人公が台所に行くとそこには……!


と言うようなトラウマ満載のおぞましさがぎっしりと詰め込まれています。
勿論こういったキモい系の話だけでなく、理由の不明な突然の死とこの世のものとも思えない極上の美味が隣り合わせになる恐怖を描いた「潰談」、
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呪いを得意とする小学生、双一シリーズの新作も収録。
しかも夢落ちなので本当にそうなるのか、と言うことは定かではありませんが成長した双一が結婚し、一子をもうけて恐怖のオバケ屋敷を経営すると言う衝撃の作品も入ってます!
気になるお嫁さんはなんと
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淵さんです!!

相変わらずのナンセンスでキモくてグロい恐怖短編集、「闇の声」は第2巻に当たる「闇の声 潰談」とあわせて全2巻で発売中です!!
その絵を堪能する為に大判で読むことをオススメしたいところですが、出版社がお亡くなりになったこともあり絶版。
現在はこの2冊が1冊にまとまった入手しやすい文庫版、「闇の声 全」が発売中です!
ジメジメムシムシした梅雨も伊藤先生作品を読んで骨の髄から涼しくすごしましょう!!
さぁ、本屋さんに急ぎますか!


闇の声<全> (ソノラマコミック文庫 い 64-11)
朝日新聞出版
伊藤 潤二

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