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今回紹介いたしますのはこちら。

「誰何Suika」第1巻 つばな先生 

徳間書店さんの竜コミックスより刊行です。


さて、「惑星クローゼット」で本格的なコズミックホラーを描いて見せたつばな先生。
待望の新作となる本作は、先生の古末あるコミックリュウで、学園を舞台にした作品となるようです。
ですがそこはつばな先生ですから、単純な学園モノになる訳もなく……?



福地の園高校でひときわ目立つ美少女、姫あやか。
見目麗しくスタイル抜群の彼女に、告白する男子は後を絶ちません。
その日も一人の男子が告白を試みるのですが、あやかは「ムリ」ときっぱりお断り。
するとどうしたことでしょう、ふられた男子体がゆがんだかと思った直後、
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こつ然とその姿を消してしまったのです!

告白してふられた思春期の若者は、どこへともなく消えてしまう。
それがこの世界の奇妙なルールです。
こうやってあやかは、入学以来16人もの男子を消し去ってしまっているのです。
勿論消えてしまうのはあやかとしても心が痛みますので、いろいろ策を講じてもみるのですが……
告白を無視して通り過ぎてみても結局そのショックのせいか消えてしまうので、もうどうしようもないようで。
何時しかあやかを死神と呼ぶものまで現れてしまう始末なのでした。

どうやら男子の中では、誰が最初にあやかを落とすのかという話なんかも出ているようで、まだまだあやかに告白しようと息巻く男子はたくさん潜んでいるようです。
あやかはそんな状況に頭を悩ませすぎたせいか、なんと
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右手が透けてきてしまいました!
これもどうやら、このまま放置しておくといずれ消えてしまう兆候のようで……
あやかは自分が消えれば告白を断って消えていく男子たちもいなくなるだろうし、その方がいいのかもしれないとまでいうのですが、本当にそうだとも言い切れません。
あやかが消えると、あやかに告白しようと思いを募らせていたものが、その熱の行き場を失って一斉に消えてしまう……という事もあり得るかもしれないではないですか!
何をどうしてもどうにもならないのか……
あやかはぐんにゃりとうなだれ、学校を早退するのでした。

あやかと仲の良い友達、海部あかりと、安納もみじの二人は何か方法がないか話し合っておりました。
そこで出てきたのは、「消えた」人は、「死んだ」のか、という事です。
実は同じようにして忽然と消えた若者の中には、少ないながらも戻ってきたという例もあるのだとか。
ある人は、気が付けば突然映画館の座席に座っていた。
またある人は、突然ライブハウスの客の中に交じっていた。
この二つの例に共通していたのは、どちらもとても楽しみにしていたイベントだった、という事です。
残念ながら消えていた時の記憶はないそうで、「消える」原因の解明にはつながらなかったのですが……
その人にとって最高のエンターテイメントが、消えた先から呼び戻す可能性を持っている、という事は言えそうです。
そんなことを話しているうちに、何やらもみじ達はあるアイディアが浮かんだようで……

翌日。
焦燥しきった顔で朝礼をボーっと来ていたあやかですが、そんな気持ちが一気に吹き飛んでしまう出来事が起こりました。
朝礼中だというのにもみじがあやかの手を引っ張り、強引に壇上に引き上げたのです。
戸惑う校長先生とあやかをよそに、壇上に立たされたあやか。
すると校長を押しのけてあかりがある発表を始めました。
このところ姫あやか三に告白して消えてしまう人たちが後を絶ちません。
こんなにかわいいのですからそれは仕方ないでしょう。
この中にもまだ次に告白して死ぬのは自分だと思ってる人がたくさんいると思います。
それも結構なことですが、姫あやかさんには今日からさらにどんどんかわいくなってもらうことにしました!
……まったく事態を飲み込めず、うろたえるばかりのあやか。
すると今度はもみじがマイクを手に取り、高らかにこう宣言したのです!
姫あやかちゃんは、
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今日からアイドルになりまーす!!

二人の作戦はこうでした。
あやかは学校のアイドルみたいなものだから、いっそ本物のアイドルにしてしまおう。
さっきの説が正しければ、ライブなんかをやれば戻ってくる人もいるかもしれないし、「アイドル」であるからには他のファンに気を遣わざるを得なくなって告白もしづらくなるはず。
そこまで持ち上げるにはこのままでは難しいし、ゆっくり計画している時間もない。
それならば……全校が集まる朝礼などで、大々的に宣言してしまうというのはどうだろうか!

壇上で自分がアイドルをやれば消えた人が戻ってくるという事を聞いたものの、それでももちろんうなずくことなんてできないあやか。
そうこうしている間に、この作戦を考えたのはもみじだ、いやあかりだともめはじめ、だんじょうはくちゃくちゃに。
校長先生もなにがなんだかわからないくせに、今日から姫あやかさんはアイドルになりました、応援してあげてくださいね、などと言い出します。
横では言い出しっぺの友達が喧嘩、体育館の中は生徒や先生方が流されるまま行う乾いた拍手の音が鳴り響き……
あまりのアレっぷりに、あやかはもうこの場から消えてしまいたいという考えでいっぱいになり、スーッと消え始めてしまうのです!
消えちゃだめだよともみじ達に引きずられながら、退場していくあやか。
校長先生は、何事もなかったかのように朝礼終了の挨拶を行いました。
いきなりずっこけてしまった感のあるあやかアイドル化作戦ですが……
一部の、あやかに思いを寄せていた男子たちは思いました。
自分たちが応援してあげないと、姫あやかが消えてしまうんじゃないか?
それはマズイ……!

こうしてめちゃくちゃながらも始まったあやかのアイドル活動、早くも一応のファン獲得に成功したようです……!!



というわけで、思いもよらない状況からアイドル活動を始めることになる本作。
学園もの+アイドルものと言いますと、すこし前に流行って一大ジャンルにまでなったジャンルなわけですが、つばな先生が描けば当然普通のアイドルものになるわけがありません!
つばな先生作品には普通の世界の中に少し超常的な要素が紛れ込む作品がよく見られるのですが、こちらの作品はまさにそれ。
失恋などの大きなショックを受けると、人が消えてしまうと言うとんでもないルールがあるわけです!
そんなルールから逃れつつ、あわよくば消えた人を取り戻そうと言う、ちょっと他のアイドルものにはない目的でアイドル活動を始めるあやか、本人はそれほど乗り気ではないだけにその道はなかなか困難そうですが……
この後一同は、学校内で堂々とアイドル活動をするために、部活を立ち上げることに。
その流れで新たな登場人物が登場し、学校公認の活動になり、そしてさらに知名度を上げる……という流れになっていくのですが、その中でもう後戻りできない展開になっていくわけです!!
あやかのアイドル活動は一体どうなってしまうのか?
あやかは消えずに済むのか、綾かが原因で消えた人たちは帰ってくるのか?
そんなストーリーラインとともに、そもそも消えた「先」は何なのかなど、大きな謎もちりばめられている作品なのです!
けっこうシリアスな背景を持ってはいるものの、つばな先生らしい可愛らしい絵柄で描かれるのんびりした雰囲気とコミカルな要素ももちろん健在!
先生の味をたっぷりと楽しめる作品なのです!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!