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今回紹介いたしますのはこちら。

「夜嵐にわらう」第1巻 筒井いつき先生 

集英社さんのヤングジャンプコミックス・ウルトラより刊行です。

筒井先生は16年にちばてつや賞ヤング部門で優秀新人賞を受賞し、デビューした漫画家さんです。
その後講談社さん系のwebコミック誌で「少女支配」「この愛を終わらせてくれないか」を連載し、21年よりウルトラジャンプにて本作の連載を開始されました。

筒井先生と言えば、女性キャラ同士の愛憎入り混じるどす黒い関係を描く作品を多く描かれてきました。
本作もそんな流れの作品ではあるのですが、他の作品とは少しばかり毛色が違うようです!


本作の舞台となるのはとある学校。
2年C組の担任は、生物教師である荻野です。
ですが荻野は、クラスの生徒たちから「ヘドロ」と呼ばれ、まともに教師扱いされないどころか、ごみをぶちまけられたり、踏みつけられたりとまるでいじめられっ子の様な扱いをされてしまっているのです。
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荻野はその状況をどうにもできず、いじめを受け続け、生徒に相手にされないまま普通に授業を進めるのでした。

そんな荻野の心の支えは、生徒への手紙を書くことでした。
と言っても一般的な生徒に対してではなく、夜嵐絹という不登校の……それも、荻野自身顔すら知らない生徒に対しての手紙を、です。
しかもその手紙の内容は、このクラスはみんな優しく明るく、みんな夜嵐が来るのを待っている……というような、嘘にまみれたもので。
せめて手紙の中だけでも、理想のクラスを築いて逃避をしたかったのかもしれません。

生き地獄そのものと言ってもいい荻野の日常は、突然終わりを告げます。
何の予告もなく教室にやってきた、夜嵐。
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彼女は荒れ果てた教室を見ても、好き放題去れている荻野のざまを見ても、意に介さないかのようにふるまいます。
生徒たちも彼女が投稿してきたことで何が変わるでもなく、荻野へのいじめを続けるのです、が。
夜も深まり始めたころ、校内で仕事をしていた荻野は、夜嵐からのメモが隠すように渡されていたことに気が付きます。
そのメモには、夜八時に学校のプールに来てくれと書いてありました。
丁度そのくらいの時間になっていたため、荻野はプールに向かうのですが、まだ掃除されていないよどんだ水の湛えられたそこには
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いじめを積極的に行っていた女生徒が、簀巻きにされた状態で投げ込まれているではありませんか!!

慌てて救い出すと、彼女は言うのです。
突然襲われ、気が付くと黒づくめの人物捕えられた。
その人物は「汚いヘドロは洗浄」「汚れは水に落とさないと」と……自分たちが荻野に投げかけていたものと同じ言葉とともに、プールに投げ落とされた、と……!!
事情を聞いて彼女を家に送り届けると、何者かが荻野に語り掛けてきます。
……夜嵐でした。
今この場にいること、八時にいじめっ子がプールに投げ込まれていたことを知っていたこと。
となれば、この剣に彼女がかかわっていないはずもなく……
戸惑う荻野に、夜嵐は笑みを浮かべながらこう告げるのです。
私だよ。
私がそこに落とした。
ごめんね先生、私知ってたの、先生が手紙で言っていた素晴らしいクラスなんて存在しないってこと。
でもさあ、見てみたいと思ったんだよね。
先生が考える理想のクラス、みんなが先生のいう事を聞くいじめのないクラス。
ねえ先生、教えてあげる、私が学校に来た理由。
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先生を助けに来たんだよ。



というわけで、謎の生徒・夜嵐の登場により、荻野を取り巻く環境が激変していくさまを描いていく本作。
荻野は理想のクラスを築きたいと思ってはいたものの、まともに行動をすることができず、現実逃避をするだけの日々を過ごしていました。
生徒は勿論の事、教師にも頼れるものはいない……そんな中で現れた夜嵐は、下手をすれば命にかかわるようなとんでもないことをおこない、クラスを変えようとして行きます。
劇薬と言っても過言ではない夜嵐の行動、そして今までさんざん自分をいじめていた荻野に優しく助けられたことで起きるいじめっ子の中の変化は、クラスを確実に変えていく、はずなのですが……
荻野をいじめて喜ぶ生徒はまだいますし、教師の中にもこの状況を助長するようなものもいるようで。
夜嵐の目的も本当のところはどうなのかまだ未知数ですし、何よりも荻野自身の心の中にもまだまだ闇が潜んでいます。
そう簡単に終わるはずもない地獄。
果たして、この地獄はこれからどうなっていくのでしょうか。
単純に荻野の思い描いた素晴らしいクラスになって行くはずもないでしょう。
筒井先生の持ち味である、可愛らしい絵柄で描かれていく、どす黒い人間ドラマが今後も描かれていくことは間違いなさそうです!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!