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今回紹介いたしますのはこちら。

「やったね たえちゃん!」第4巻 カワディMAX先生 

メディアファクトリーさんのMFコミックスフラッパーシリーズより刊行です。

さて、凶悪非道な一郎に狙われてしまったたえ子とたえない子。
窮地に追い込まれはしたものの、なんとか撃退することに成功したのですが……



久しぶりの平穏な日々を謳歌するたえ子たち。
ですがたえ子は、自分の中のもう一人の自分が園長先生を傷つけてしまっていたことに気づいていまして。
もう一人の自分がやったこととはいえ、自分であることには変わりはありません。
たえ子は園長先生たちに気を遣わせないため、何も知らないふりをしてはいるのですが、どうしても心の中の靄は晴れないのです。
……たえ子の中の晴れない靄はもう一つあります。
待っていて、と言い残して消えたママのことです。
ママはどこにいるのか。
ママはいつ迎えに来てくれるのか。
ママならば、自分の中のもう一人の自分について何か知っているのではないか……?
そんな考えから、とうとうたえ子は本格的にママを探すことにするのでした!

ある手段を使い、意外なほどあっさりとたえ子のママ、小野ちえ子の消息が明らかになりました。
なんとちえ子が住んでいるのは、たえ子たちのクラス施設のある街の、隣りの市だというのです。
にわかには信じがたい事実ですが、確かな筋の情報の様で住所までしっかりと判明しています。
すぐ近くに住んでいたのに、どうして今まで迎えに来てくれなかったのか?
たえ子の中の靄は晴れるどころか、一層深くなってしまいました。
たえ子が頭を悩ませていますと、キッカが声を上げます。
よし、今から行こーぜ、と!
あまりに急な提案ですが、確かにモヤモヤを抱えたまま悩み続けるよりはあってしまった方が話は早いでしょう。
たえ子とキッカはさっそくその住所へ向かうのでした。

ちえ子は今、とある安アパートに一人で暮らしているようです。
そのアパートの前につきますと、キッカはたえ子の背中を押してくれました。
会って来いよ、あたしはいねー方がいいだろ、ぶらぶらしてっから帰るとき読んでくれ、迎えに来るから。
そう言って、その場を立ち去ろうとするのです。
……たえ子はそんなキッカを呼び止めました。
キッカちゃん、もしあたしがこれからここで……なんていうか、その……
たえ子が何を言いたいのか、言い出せないのか。
それはキッカにもわかっています。
キッカは振り返り、笑顔のままたえ子にこう言いました。
どうなろうとお前の選んだ道を応援するぜ。
家族だからよ。

たえ子は一人、ちえ子の、ママの住む部屋の前に立っています。
外は降りしきる雨。
そういえばママがいなくなったあの日もこんな雨だったなぁ。
そんなことを思い出すと、どんどんと良くない思いが頭の中から湧いてきてしまうのです。
なんて話せばいいんだろう、いきなり来て嫌がられたらどうしよう、あたしのことわかるかな。
渦巻く不安を少しでも和らげようと、僕が付いてるから大丈夫、とコロちゃんがたえ子を励ましてくれました。
幾分緊張がほぐれてきたたえ子。
するとその時でした。
たえ子の前を一人の女性が通り過ぎ、たえ子が待つ部屋の玄関のかぎを開けたのは!!
そこで彼女は、たえ子は自分を見ていることに気が付きました。
なんだいあんた、なんか用かい。
そう尋ねられ、たえ子は……
小野ちえ子さん、ですか?
そう問いかけます。
するとちえ子は、少し考えた後、こういうのでした。
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たえ子か……と。

意外というべきなのか当然というべきなのか。
ちえ子はたえ子を迎え入れ、ゆっくりしていってね、とお茶を出してくれました。
ちえ子は、もう中学生?大きくなったわね、と当たり障りのない会話をしてきます。
たえ子はといいますと、10年ぶりにあった母親に言いたいこと、効きたいことはたくさんあるはずなのですが、変なことを尋ねてしまって機嫌を損ねられたら、と思うとどうしても何も聞くことができないのです。
ですが、ちえ子がたえ子の頭をなでる手は、あの記憶の中のお母さんのしろくてやわらかい手、求め続けてきた手そのもので……この人が自分のままだ、という感情は強まっていく一方。
ちえ子はそのまま夕飯を作り、たえ子にふるまってくれました。
味はどうかとにこやかに訪ねてくるちえ子。
その顔に、子供の頃の思い出の中のままの笑顔が重なって映り……急に泣いたら変に思われるかも、と我慢していた涙が、たえ子の瞳から堰を切ったかのようにあふれ出してしまい……!
どうしたのかと尋ねてくるちえ子に、たえ子は答えます。
今いる施設はすごくいいとこで、みんなと食べるご飯は楽しくて、おいしくて。
でもやっぱり、ちえ子さんと食べるご飯は特別だなぁって……
涙をこらえながらそう漏らすたえ子に、ちえ子は言いました。
なによさっきから、ちえ子さんだなんて他人みたいに。
ちゃんとママって呼んでよ。
次の瞬間、たえ子はママの胸に飛び込んでいました。
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ママ、ママ、ママァ。
今まで呼べなかった分を取り戻すかのように、涙と一緒に精一杯ママという言葉をこぼすのでした。

その日、たえ子はちえ子の家に泊まっていくことになりました。
10年間の沢山の楽しい思い出を、ママの膝枕でお話する、幸せいっぱいの中で眠りにつくたえ子。
ママのおひざ、柔らかくて、あったかくて、幸せ。
幸せに包まれながら眠りにつくたえ子……でしたが……
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たえ子が眠りについたかと思うと、ちえ子は何やら今までの「ママ」の顔とは打って変わった、鬼のような形相を浮かべ、タバコをふかしながら誰かに電話をし始めました。
ちえ子が電話をしている相手。
それは……!!




というわけで、クライマックスを迎える本作。
本作のラスボス(?)はやはり、たえ子のママのようです。
一見優しく穏やかな母親であるちえ子ですが、となり町に住んでおきながらたえ子を迎えに来なかったことからも判るように、「いい母親」なわけもなく。
この後人の親としてあるまじき、そして本作らしいとんでもないことが巻き起こってしまうのです!!
そんな母親との邂逅とともに、幼い日のたえ子とたえない子の物語も描かれ、何故絶えない子があのようなとんでもない力を持っているのかという事実も明らかに!
たえ子や一郎に刻まれていたナンバーなどから、他のナンバーの持ち主とのバトル展開になったりするのか!?という期待(?)もあった本作。
残念ながらそちらのルートは描かれませんでした。
今巻で完結となるわけですが、カワディ先生によればまだこの物語は始まったばかりとのことで。
何かの機会があれば、本格能力バトル漫画として続編が描かれたり描かれなかったりするのかも!?
そんな今後の展開も期待しつつ、とりあえず今はカワディ先生節満天の本作の決着を楽しみましょう!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!