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今回紹介いたしますのはこちら。

「ミワさんなりすます」第2巻 青木U平先生 

小学館さんのビッグコミックススペシャルより刊行です。


さて、思いがけない偶然が重なり、敬愛を超えて恋慕の情すら抱いてしまっている大物俳優・八海崇の家の家政婦として働くことになったミワさん。
ですがその偶然の結果、ミワさんは全く別人の「美羽さん」になりすます羽目になってしまっているのです。
なりすましをしている罪悪感に苛まれ、早く打ち明けなければと悩みながら、それでも大好きすぎる八海のそばにいられる幸福感がそれに勝ってしまっているミワさんは、苦悩しながらも家政婦を続けるのでした……!




結局なりすましを告白できないまま、今日も家政婦の仕事をすましてきてしまったミワさん。
自分の八海に対する愛、というより、色欲に抗えなかったことに苦悩しつつ、家路についたのですが……
そこで、思わぬ人物と遭遇してしまいました。
浅黒い肌の優男、紀土です。
この紀土という男、何を隠そうミワさんの元カレ。
かつて付き合っていた男にばったりと出会い、誘われてしまってはよっぽどのことがない限り断れるミワさんではありません。
ミワさんは流されるまま、二人で居酒屋に行くことになってしまうのでした。

この紀土という男、なかなかの曲者です。
なにせ彼、お通しを必ず出すという居酒屋でも、
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法律で決まっているわけではないんだからお通しをカットしてくれ、と臆面もなく言い放つ強心臓。
そして付き合っていたころも今も変わらず、お会計は別々、という……よく言えば現代らしい「男女分け隔てなし」のポリシーを持つ男なのです。
そんな紀土、ミワさんに対しても遠慮なく好き放題言ってきます。
別れた後もフリーターで、映画ばかり見ているという近況を聞くと、ヤベ、さすがミワちゃん、とあざけり交じりに笑い、そして決め顔で映画なんていい加減に卒業しなって、などとのたまうのです。
確かに紀土の言う、そろそろ地に足をつけて将来のことを考えないといけない、という言葉は正論です。
「正論」を重んじる彼は、学生時代こそ役者を目指したりもしたものの、「生産性がないから」といって卒業後は一般企業に就職するほどのリアリストなのです。
彼の言うことは、間違いなく「正論」です。
誰にも文句を言わせない正当性を持っている……だからこそ、ミワさんは紀土が怖くてならないのです。
そもそもミワさんが彼と付き合ったのも、紀土の強い論調に押し切られたようなもの。
こうして恐の身についてきてしまったのも、そんな彼の存在にふれ、逆らうことができなかったという部分も多分にあるのです。

で、紀土が先ほどまで何をしていたのかというと、SNSで知り合った連中と飲んできた帰りなのだとか。
ミワちゃんも映画ばっか見てないで、いろんな人と交流していかないと、寂しい老後を送ることになっちゃうぞ、と笑う紀土……
言いたいことはもちろんあります。
ありますが、それを口に出すエネルギーがミワさんにはないのです。
何故なら、紀土はうまく行っていて、ミワさんはうまく行っていないから。
下手に反論して波風を立てるのも怖く……ミワさんは押し黙ることしかできないのでした。

やがて話は昔の思い出話に移行していきます。
昔一度だけ一緒に映画を見に行ったけど、その時見た映画はいかにも大衆映画という感じでパッとしなかった、という紀土に、あの超名作を捕まえてパッとしない呼ばわりとは、と苛立ちをためるミワさん。
そこまでならば、ミワさんの黙ってお茶を濁して終わっていたでしょう。
ですが、その後続けた彼の言葉を聞いて、ミワさんは自分でも驚くほど完おじゅが揺さぶられてしまったのです。
ミワちゃんって、八海崇とかさぁ、大好きだったじゃん。
全然見なくなったよなぁ、八海崇。
皆動画ばっか見てて、映画とか2時間も見て蘭ねーって感じだし。
うちの会社の若い子、知らねーもん、八海崇。
なんつーか、
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オワコンっしょ、あーゆー人って。
ミワさんは……
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切れました。
財布から数千円と、ありったけの小銭を机の上にぶちまけ、帰る、と冷たくつぶやくミワさん。
今まで見たことのない彼女の態度に紀土も驚いたのか、まだ好きだったのか、待てって、まだいいだろ、8時だぜ?とミワさんを引き留めようとするのですが……
ミワさんは思いのたけをぶちまけます。
そういえば引っかかってたんだけど、まだ8時だよね。
SNSの仲間との飲み会、終わるには早くない?
あなたの話がつまんなくて、みんな帰っちゃったんじゃないの?
……思い当たるところが、あったのでしょう。
紀土は固まってしまいました。
そこにさらに、紀土がしたり顔で語っていたくせに、映画俳優の名前を間違えていたことを指摘し、そのまま立ち去るのでした!

夜の街をかけていくミワさん。
しばらく走ると、その歩調は弱まり、やがて立ち止まり、電柱に頭をつけるようにしてうなだれるミワさん。
その瞳からは、次から次へと涙だが零れ落ちています。
言いたいことを言った。
だからと言って、すっきりと気分よくなれるわけではないのです。
ミワさんはあふれ出した感情と、自分を苛んでいるあのことを思い、抗えない悲しさに打ちひしがれてしまうのでした……



というわけで、ミワさんの元カレ、紀土の登場する今巻。
紀土は今後も登場する重要人物……というわけではなさそうですが、ミワさんの心を揺り動かす重要な役割を持って現れました。
正論、現実の象徴のような紀土。
彼の言うとおり、夢ばかり見ては生きていけない……
ミワさんは改めて、なりすましを続けるわけにはいかない、と痛感するのです。
しかし物語がそう簡単に進むはずもありません!
この後なかなか言い出せないまま家政婦を続けるわけですが、そこでまた心を揺さぶるある人物と出会うことに。
そしてその人物との出会いが一つのきっかけとなり、八海の方にも何らかの心の動きが!?
まさかの展開の匂いも漂い始めたところで、今巻のラストではさらに驚くべき展開が待ち受けているのです!!
ミワさんの運命がどうなるのか、一層読めなくなっていく本作。
コメディなのかサスペンスなのか、ラブロマンスなのか。
様々な要素のまじりあう本作、今後の展開も楽しみでなりませんね!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!