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今回紹介いたしますのはこちら。

「ミワさんなりすます」第1巻 青木U平先生 

小学館さんのビッグコミックススペシャルより刊行です。


青木先生は06年にヤングジャンプの漫画賞で準優秀賞を受賞し、デビューした漫画家さんです。
漫画関係の仕事自体は90年代から木多康昭先生のアシスタントなどをされておりまして、長く経験を積んでおられます。
連載デビューはドラマ化もされた「フリンジマン」。
その他にも食事漫画や、有名漫画のスピンオフ作品の原作、漫画家と編集者の関係にスポットライトを当てた漫画などなど、様々な媒体で、様々な作品を描かれていらっしゃいます。

そんな青木先生の最新作となる本作は、そのタイトル通り「なりすます」漫画です。
一体だれが、何のためになりすますのか?
気になるその内容はと言いますと……



久保田ミワ、29歳。
レンタルDVDショップでアルバイトをしている女性です。
大好きな映画に囲まれてするこの仕事は、彼女に幸せを感じさせてくれるのですが……
悩みも尽きないのです。
そろそろ彼女が休憩に入る時間。
同僚に一声かけて休憩に入ろうとするのですが、その出ばなをくじくようにその同僚から、これ他の戻しお願い、と仕事を頼まれてしまうのです。
仕事を頼んできた同僚は、何やら無駄話をして盛り上がっているだけの様子。
自分は休憩時間だからそれはできない、と断れればいいのですが……
何も言えず、その仕事をし始めてしまうミワさん。
楽しそうなおしゃべりを遮ってまで自分の休憩を主張することはできない。
ミワさんは今までの人生、そんな選択をし続けて生きてきたのです。
そして悪いことというのは重なるもので。
棚戻ししていると、お客さんが声をかけてきたのですが、その内容が「借りた映画がつまらなかったから金を返せ」というあまりにもな要求ではないですか。
クレーム処理が苦手なミワさん……どのへんがつまらなかったでしょうか、と突っ込んで尋ねてみます。
すると、パッケージに有名俳優がクレジットされているのに本編に出てこなかった、その俳優目当てに借りたのに詐欺だろう、というのです。
ミワさんはそれを聞くと、カメオ出演なので少しだけど出ている、と返します。
出てないだろうと食って掛かるそのお客さんに、彼女はさらに、きっぱりとこう返しました。
や、出てます。
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59分04秒あたりとか。
……実は彼女、相当な映画マニア。
お客さんがつまらないと切って捨てたこの映画も10回以上見ているそうで、カメオ出演の俳優がどのシーンに出ているかも完全に記憶しているのです!
そのお客さんに出演シーンを見せて実際に確認させると、だんだん調子が出てきたのか、お金は返せないけど代わりに映画をお勧めします、と映画紹介を始めるミワさん。
それが2~3作ならばまだよかったのでしょうが、勧め始めると止まらないようで、カウンターにDVDが堆く積み上げられてしまい……!
そんなことを求めていたわけではないお客さんは当然ブチギレ、二度とこないと吐き捨てて去っていきました。
これだけならば正直言って、クレーマー気質のお客さんを撃退したとプラスに捕らえることもできなくはないのでしょうが……問題はミワさんがこういうトラブルを何度も起こしている、ということで。
今回の件が決め手となり、ミワさんは首を言い渡されてしまうのでした……

バイト仲間にも付き合いづらい人物だとして腫物に触れるように扱われてきたミワさんの退職を惜しむ者はいませんでした。
ミワさんもこう言った扱いには慣れているようで、つらくないといえばうそになるものの、それでも彼女なりに幸せに暮らしてはいるのです。
何故なら彼女には、映画があるから。
年間1500本を超える映画を見ているという彼女、その鑑賞もメモを取りながら映画を見るなど、映画を仕事にしている人よりも映画と密接にかかわりながら日常を送っています。
そしてさらに言うなら、その映画の中でもとりわけ彼女に生きる力を与えてくれるのが……ベテランの名優、八海崇の存在です!
推しているとかそういった言葉ももはや生易しい、ミワさんが彼に抱いている感情はもはや「恋」。
演技力はもとより、顔、声、プライベートな部分に至るまで、すべてを愛してしまっているのです!!
ミワさんがそんな八海の演技の中で一番印象深いのが、戦争映画でのワンシーン。
立てこもっている洞窟が敵に囲まれ、もはやどうにもならない、生きて帰れるはずがない。
そんな場面で、八海はただ一人立ち上がり、外に向かって歩き出すと……振り返ってこういうのです。
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でも、やるんだよ、と!
八海様がいれば、人生やっていける!
自分を奮い立たせ、とりあえず求人情報を見るミワさん。
そんな時、思いがけない求人を発見してしまうのです。
それはとあるお金持ちのおうちでの家政婦の募集なのですが……
その募集、八海崇の家が募集しているのです!
好きすぎるあまり本名は勿論、住所まで調べてしまっていたミワさん。
知っているからと言っていきなり押し掛けるような失礼極まりないことはしない分別を持ち合わせていたのですが、さすがにこんな大義名分をもって八海と同じ空気を吸えるチャンスを見逃すことはできません!!!
食い入るようにその家政婦の募集要項を見ると……
大卒以上、英語が堪能であること、栄養士やクリーニング、収納のアドバイザーなどの資格もち、そして……ファンNG、と小さく書いてありまして……
結局この仕事、取り付く島もないまま、始まりもせず終わってしまうのでした。

数日後。
ミワさんは八海邸の前でひそかに様子をうかがっていました!
家政婦になるのはもう無理だと諦めはしたものの、せめてどんな人が採用されるのか見たい、そう思って八海邸の前に張り込んでしまったのです。
やがて、おそらくそうであろう女性が姿を現しました。
見るからに能力の高そうな、スタイリッシュな女性。
あの人が八海様と同じ空気を吸うのか、いいなぁ。
そう思いながら、ミワさんは彼女の様子を伺い続けました。
するとその時、
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突如飛び出してきた車に、その女性がひかれてしまうではありませんか!!
ミワさんは慌てて彼女を介抱し、救急車を呼びました。
すぐに救急車は来てくれまして、運ばれていく彼女を呆然と見送ります。
と、そんなミワさんに声が欠けられました。
騒がしいわね、と八海邸から出てきた女性です。
彼女は今の騒ぎでたまたま門の前に立っていたミワさんを見て、あなたが家政婦の美羽(みわ)さくらさんね、と尋ねてきたのです。
……八海様の関係者らしいこの女性、どうやらミワさんを先ほどの美羽さんと間違えている……
瞬間、ミワさんの脳裏に様々な思いがよぎります。
今まで生きてきて29年間、嫌われないよう、目立たないよう、自己主張せず生きてきた。
心は部屋に閉じ込めてきた。
今こそ主張すべき時じゃないか?
ここで「はい」といえば、八海様の家政婦になれる。やりたい仕事ができる。
人生が、変わる……!
でも、本気でそんなことができると思っているのだろうか?
英語は、いろいろな資格は?
ただ映画が、俳優が好きってだけで家政婦になりすますなんて正気の沙汰ではない。
そもそもこれは犯罪だろう。
勝ち目なんてない負け戦、人生が終わるかもしれない……

でも、やるんだよ。

……最後に美羽さんの背中を押したのは、奇しくも八海のあのセリフでした。
こうしてミワさんは、
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八海崇の家政婦、美羽さくらになりすますことになったのでした!!!




というわけで、ミワさんがなりすます本作。
ですがいくらミワさんが八海崇を誰よりも愛していたとしても、様々な資格を持った家政婦になりすますことなどできるのでしょうか?
資格云々を抜きにして、お金をとれるレベルの掃除や料理もしなければならないわけですし……
それにそもそも仮に運よくバレなかったとしても、お給料の振り込みとかそのあたりでどうしても問題が出てしまうような!
そんなハイリスクすぎる問題を、ミワさん自身も判っているはず。
それでも、ほんのひと時でも八海と同じ空間に存在できるという幸福に浸ることを選んでしまったミワさん!
果たして彼女はこの後どうやって有能な家政婦になりすますのでしょうか!?
今巻のうちに、はやくもその問題に直面することになります!
ミワさんはどうするのか、バレてしまってどうなるのか?
第1巻のうちから思いがけない展開となり、予想外の出来事が巻き起こっていきます!!
早くも激動の予感漂う本作、これから先も目が離せませんよ!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!