hg0
今回紹介いたしますのはこちら。

「はぐれアイドル地獄変」第13巻 高遠るい先生 

日本文芸社さんのニチブンコミックスより刊行です。




さて、いよいよクライマックスを迎えたヴァルキリーオペラ。
数々の激戦を潜り抜け、とうとう決勝戦を迎えます。
それぞれ倒してきたものの思いを背負い、辿り着いた決勝のリング。
果たして優勝賜杯を手にするのは誰なのでしょうか!?



南風原海空VSアレフティナ・グゼバ。
どちらも本大会の中でトップクラスのフィジカルを持つ闘士です。
そう言った意味ではある程度下馬評通りと言える二人なのかもしれませんが、今までの戦いを見てきたものならば簡単にそうは言えないでしょう。
お互い、数々の強敵を苦戦の末倒し、ここまで登ってきたのです。
お互い体格に恵まれた者同士とはいえ、この二人が並んだ時の体格差はばかげていると言ってもいいほどのもの。
それでも会場の誰もが、そんな部分でどちらかが有利であるとは考えていません。
それぞれが海空に、あるいはグゼバに自分の思い描く最強を重ね合わせ、固唾を飲んで見守るのです。

そしてゴングは打ち鳴らされました。
二人はゆっくりと歩き始めます。
まっすぐ、早くもなく、遅くもなく、小細工もなく。
そして二人が1メートルほどの距離まで近づくと、拳をそっと合わせました。
広いオクタゴンの中を、回ったり曲がったりせずに。
それは自分にできる事と出来ないこと、やるべきこととそうではないことが全部見えている者同士だからこそそうなったのだそうです。
だからこそ……その後、海空は驚愕することになるのです。
両腕を前に突き出したグゼバ。
いくら彼女が巨体で、リーチも凄まじいものだとしても、その距離はせいぜいが2メートルと言った所でしょう。
ですが彼女の持つ凄まじい圧が、その間合いを5メートルにも10メートルにも感じられてしまうのです!
グゼバと戦ってきた何人かのストライカーは、この間合いを潜り抜けて攻撃を当てたのか。
そう考えると、海空はなぜか笑みがこぼれてしまうのでした。

そして二人は……
hg1
リングの中央で、ピタリと動きを止めてしまいました。
自分が何ができるか、何をすればいいかわかっているはずの二人同士が、です。
ですがそれは、お互いがそうであるからこそ起きている現象なのです。
動くに動けない、膠着状態。
……いや、そうではありません。
一見止まっている二人ですが、時折……いや、常にと言ってもいいほどに。
指、肘、肩、胴、つまさき。
眉毛、視線……
数センチ、数ミリの予備動作で、お互いの「次」を察知し、反応する。
全く動いていないように見えたその間にも、二人の間では打撃や掴み、投げ、膨大な攻撃のシミュレーションが行われていたのです!
ですが、そのシミュレーションの応酬は、思いもよらない形で崩れることになったのです!
動きのない中でも、徐々に押され始めていた海空。
グゼバの右足がすっと持ち上がったことに反応したものの、体勢が崩れ、そのまま尻もちをついてしまったのです!
すかさず間合いを詰めて追撃しようとするグゼバ!
マットに倒れながらもすかさず構えを取る海空!!
直後、なんと
hg2
グゼバも膝をついたではありませんか!
しかも二人ともが苦悶の表情を浮かべていて……?

ほとんどの観客が理解できないその状況。
彼女達に引けを取らない実力を持つユニは、その攻防をこう解説しました。
まずグゼバはジャブでけん制しつつ、隙あらば掴もうとしていました。
海空としてはそのジャブを受けつつ、顔面がボディに攻撃をくらわすのが狙いです。
そこに足技の応酬も入ってくるわけですが、打撃の速度と制度では海空が上。
しかも下手に威力ののった打撃を打てば、空手の受け技で逆にダメージを受けてしまいません。
海空の攻撃も何度かあたり相にはなったのですが……やはりリーチの差は大きかったようです。
踏み込まなければ決定打を手にできない海空に対し、踏み込まなくても掴んで引っ張り込めるグゼバでは、やはりグゼバの方が有利と言わざるを得ません。
追い詰められ、不用意に手を出した海空。
その一打をキャッチしたグゼバは、すかさず足払いで海空を倒しにかかります!
とっさに足払いの足を受け技で叩こうとする海空ですが、グゼバはその足を巻き込み、ダウンを奪ったのです!
すかさず寝技に行こうとしたグゼバですが、海空は即反撃!
顔面に一発もらってしまてしまったものの、グゼバもとっさに海空の脇腹に蹴りを叩き込み、痛み分けに終わった……
ということの様なのです。

海空とグゼバほどの達人同士ならば、「当てずに倒れる」こともある。
マリアやるいもそう頷きました。
海空はアバラを、グゼバは顎を。
戦っているお互いもまた、今の攻防でそれを砕かれたと確信していました。
……二人は立ち上がり、仕切り直します。
今までと同じように動きのない戦い……にはなりませんでした。
海空は
hg3
両手を下に垂らし、構えずに間合いを詰め始めたのです!!
一見すると無謀にも見えるこの動きですが、構えを取らないことによって、そこから繰り出される攻撃技のバリエーションは一気に増えることになります。
もともと受け技にも攻撃力のある海空ですから、自由に技が繰り出せると言うことは受け技も自在に出せると言うことで、守りが手薄になる事もないわけです!
うかつに手が出せないグゼバ。
そこで海空は……
hg4
マリアを撃破した、あの技を繰り出したのです!!



というわけで、ヴァルキリーオペラが決着する今巻。
海空が決勝に進むことを予想した読者の方は少なくないでしょうが、グゼバが決勝まで登ってくることを予想できた方はほとんどいないのではないでしょうか!
なんにせよ、ルナやマリア、ジークルーネにミカ、シャオミンと言った一癖も二癖もある、他の漫画ならば決勝に残ってもおかしくない者達をなぎ倒してきた二人の戦いが、生半可なものであるはずがないのです!
静かに始まった二人の戦いですが、最初のシミュレーションでのコンタクトはあくまでそのすさまじい嵐の前の凪にしかすぎません!
ここから本格的に始まる二人の戦い。
並ではない者同士の並ではない激突は、二転三転する熱戦になっていくのです!!

いよいよ長かったヴァルキリーオペラ編が完結する本作ですが、この後あの謎の男と父の因縁が明らかにされ、最終章に一気に突入……と言う事にはならなさそう。
このシリーズ終了とともに物語が終わりかもしれない、と思われていた方は一安心でしょうか?
高遠先生も思う存分試合が掛けたことでしょうし、しばらくは大会以前のいい意味で埒もない、肩の力を抜いて読めるお話が続く……でしょう、多分!
とはいえ本作の最終章もおぼろげながら見えてきましたし、一層目が離せなくなってきましたね!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!