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今回紹介いたしますのはこちら。

「くにはちぶ」第12巻 各務浩章先生 

講談社さんのマガジンエッジコミックスより刊行です。




さて、たんぽぽの奮闘が実を結び、ついに稀代の悪法、くにはちぶが廃止されることとなった前巻。
つらく長かったたんぽぽの戦いもようやく幕を下ろす……かと思われたのですが……



たんぽぽをずっと支え続けてくれていたあざみ。
ですが彼女は、両親から虐待を受けていました。
たんぽぽを助けるために東奔西走していた間も、ずっと。

それはあざみが幼い子供だった時から日常的に行われていました。
幼いあざみが夜泣きをしていたころ、あざみの父はたまりかね、なんとあざみの首をギリギリと締め上げながらこう言ったのです。
うるさいんだよ、毎晩毎晩泣きわめいて。
殺すぞ。
死んでしまうからやめて、という母の静止も聞かず、締め上げ続けるあざみの父……!!
今こうしてあざみが生きているのは、あざみの父の気まぐれのようなものなのでしょうか。
現在でもあざみの父は、自分の気に入らないことはあれば、殺すぞ、とあざみやあざみの母にすごむのです。
ところが、たんぽぽはその言葉を浴びせられても全く動じることはありません。
「殺すぞ」ですか。
あざみちゃんもよく使いますよ、その言葉。
あなたがあざみちゃんによく使うからですか?
「殺すぞ」なんて言葉を、父親なのに!!
そう言って真っ向からあざみの父をにらみつけるたんぽぽ。
あざみの父はまるで虫か何かを見るような目でたんぽぽを見つめるのですが……
そこであざみの母が割って入りました。
辞めてください、自分が話をつけるから、すぐに帰しますから、そういって何とかあざみの父をなだめようとするあざみの母。
するとあざみの父は……
ゆっくりと振り返り、一同に背中を向け、テレビゲームをし始めるのでした。
そんなあざみの父にたんぽぽはたまりかねて食って掛かります。
また無視するの?あなたの話をしているのに。
お母さんに任せるなんて……
それを聞くと、あざみの母は再び血相を変え、たんぽぽの言葉を遮ろうとしました。
邪魔しないで、向こうで話しましょう、と割り込んでくるあざみの母。
たんぽぽはそんな彼女を見つめ、こういうのです。
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何を怖がってるんですか。
こんな人の「殺すぞ」なんて、全然怖くない。
あざみつあんもお母さんも、何も怖がることないのに。
……今まで無視され続けてきたたんぽぽには、あざみの父のその言葉の裏にある薄っぺらさが手に取るように分かります。
自分に干渉されないように無視をする、それが思い通りにならなければ、殺すという物騒な言葉をかけることで干渉されないよう予防線を張る……
あざみの父の「殺すぞ」は、本気で殺そうなんてしていない、自分に干渉してほしくないがために「ふり」に過ぎない、ということなのでしょう!

……ですが、あざみの母にはそれを受け入れることはできませんでした。
それは、あざみの父が恐ろしいからではありません。
あざみの父に殺されないように、自分がきちんとしつけないといけない。
そんな考えのもとに今まで自分がしてきた「しつけ」が、ただの言い訳をしながら行っていた「虐待」であることを認めてしまうことになるから……

あざみの母は、たんぽぽに告げます。
こわいなんてことがあるわけないでしょ、あなたは私たちが虐待でもしてると思ってるようだけど、あざみはいい子に育ってるでしょう。
正しく育てたという証拠よ。
渡井たちを否定するならあざみも否定することになるわよ、あなたはあざみに助けられたというのに。
感謝は去れど、悪く言われる筋合いはないわ。
私たちのしつけは何も間違ってない!
そう言い切った直後、たんぽぽはきっぱりと言いました。
間違ってるよ、と。
あざみは今、押し入れの中で全裸でうずくまっています。
そんな状態を彼女は「普通」だといいました。
ですがこれが「普通」だ、と、他人に見せられるでしょうか?
それを指摘されてなお、あざみの母は家ごとに普通があるものだから、口出ししないのが常識だ、と突っぱねるのですが……
押し入れの中で話を聞いていたあざみの心の中には、沸き上がるものがあったようです。
自分の「普通」が始まったきっかけ。
それは、あの父に首を絞められたこと、ではなく……そのあと一度も父が自分の方を見なかったことに気づいたことだった。
あの日から父の「無視」が始まった。
あざみの一番古い記憶……そこからあざみの「普通」、この狭く暗い押し入れに閉じ込められたり、日常的に母親に叩かれる「普通」が。
あざみはふすま越しにたんぽぽに語りかけました。
これが私の「普通」なんだ、今こうしているのは、無視法違反の危険を貸してたんぽぽに近づいてしまった罰で、今日一日こうして反省していれば終わること、明日になれば「普通」に話せる、お祝いもできる。
待ってて、たんぽぽ。
たんぽぽに自分なんかのことを心配させてはいけない。
あざみはそう考え、努めて平静にそう語ったのです。
が、たんぽぽ言うのです。
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あざみちゃんの「普通」をこんな風にしてしまったあなた達から、私はあざみちゃんをたすけます。
いいね?あざみちゃん。
……そんなことを言われて、もちろん黙っていられないあざみの母。
ですが怒りとともに浴びせられるその言葉を半ば無視し、たんぽぽはあざみに話しかけます。
私はずっと甘えてて、あざみ端ちゃんがこんな風になってることすら知らないで、助けてもらってばかりいた。
あざみちゃん、私に、助けてって言って!
……助けなんて必要ない。
そう心の中で応えるあざみなのですが、その脳裏には自分を無視し続ける父の姿が、お誕生日のケーキを母と囲んでいる時もゲームをプレイしていたものの、ケーキを持っていくと一口食べ、あざみを抱えて一緒にゲームをしてくれた父の姿が思い浮かび……あざみを苛みます。
そんな彼女の気持ちも知らず、あざみの父はテレビゲームを続けながら言うのです。
まったくうるさいな。
いらないよあざみなんて。
勝手に助けなよ。
……その言葉は、さらにあざみの心を揺さぶります。
声を出すな、そんなことをたんぽぽに負わせるな。
口から飛び出しそうになるその言葉を、自らの首を絞めてこらえていると……
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押し入れが開き、たんぽぽが姿を見せました!
ごめんねあざみちゃん、
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あざみちゃんの「普通」、私が壊すよ!
たんぽぽはそう言って、あざみの手を取り……あざみの「普通」、押し入れの中から、彼女を連れ出すのです!!




というわけで、クライマックスを迎える本作。
くにはちぶを、様々な人物の協力の末打ち破ることができたたんぽぽでしたが、その戦いはあざみの存在あってこその物でした。
ですが最後の最後に待っていたのは、たんぽぽが知らないところでずっと続いていた、あざみの「普通」だったのです!!
これから先、たんぽぽはおそらくくにはちぶ以前と同じように、いや、それ以上に幸せな日々を送ることができるでしょう。
ですがその生活には、彼女の親友であるあざみの存在が欠かせません。
そしてそのあざみが本当に幸せでなければ、たんぽぽも心から幸せになることはできないのです!!
予想外のクライマックスとなった本作、このあとたんぽぽとあざみの最後の戦いが描かれ、フィナーレへ!
果たしてたんぽぽはあざみを救うことができるのでしょうか。
あざみは自ら閉じこもってしまっていた「普通」の殻を破ることができるのでしょうか。
そして、二人の関係は……?
本作の最終章は、たんぽぽとあざみ、親友の物語で締めくくられることとなるのです……!

大団円を迎える本作、今までつらい思いばかりをしてきた本作だけに、このエンディングを待っていたんだよ、と喜ぶ方も多いはずの内容です!
もろもろの謎なども判明し、すっきりと読み終えられる作品に仕上がってくれました!
さらに巻末のおまけでは、今まで巻末で頑張ってくれていたあの人の救済まで行われておりまして……各務先生のサービス精神には頭が上がりません!!
今までとは違い、色のついた表紙イラストも印象的な最終巻。
読み続けてきた方々もきっと満足な結末、是非ともご覧ください!!




今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!