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今回紹介いたしますのはこちら。

「僕が死ぬだけの百物語」第1巻 的野アンジ先生 

小学館さんのサンデーうぇぶり少年サンデーコミックスより刊行です。


的野先生は17年に小学館コミック大賞の少年部門で寡作を受賞し、18年に少年サンデーの増刊でデビューした漫画家さんです。
その後講談社さんのウェブ投稿サイトDAYSNEOで活動などを行い、20年にサンデーうぇぶりにて本作を
連載開始。この度めでたく単行本刊行となりました。

そんな的野先生初の単行本刊行作となる本作は、先生の得意とするホラー漫画です。
良くある一話完結型のオムニバスタイプの作品なのですが、それだけではないようで……?





ヒナちゃんは、教室の窓から身を乗り出しているユウマくんを止める為、とっさにこう話しかけました。
「百物語って知ってる……?」
ユウマくんはヒナちゃんの話を最後まで聞くと、お礼を言って帰っていきました。
そして次の日からも、ユウマくんは何事もなかったかのように学校にやってきて、何事もなかったかのように日常生活を過ごしていきます。
ヒナちゃんは、自分が話した話題なんてもうユウマくんは忘れているのだろう、ユウマくんが元気になったならそれでいい、とそう考え、その後は特に何もすることはなかったのです。

ユウマくんは、自分の部屋で何かに話しかけていました。
あのね、ヒナちゃんがこの前、百物語っていうのを教えてくれたの。
それはね、全部終わったときにね、本物の幽霊が、でるんだって。
そう言い終わるとユウマくんは机の電気スタンドを灯し、きょろきょろと周りの様子をうかがった後……何か、にささやくのでした。
それじゃあ一つ目を、話すよ!


まさひろは椅子に腰かけ、携帯をいじっていました。
そんな彼に、ユキは牛乳買って来てって言ったよね?と問いかけます。
あー、と気のない返事を返すまさひろ。
話にならないと思ったのか、ユキはため息をつきながら部屋を出ていきます。
彼女に視線すら移さず、どこ行くのと問いかけるまさひろ。
彼女もまた振り返りもせず、コンビニ、と言い残して扉を閉めるのでした。

どのくらい時間がたったでしょう。
遅いな、と時計を見るまさひろですが、立ち上がっても特に何をするでもなく、大きなあくびとともに伸びをすると、眠る準備をするために洗面台へと向かいました。
洗面台で歯を磨いていると、背後の浴室への扉がわずかに開き……
その隙間からユキがまさひろの様子をうかがっているではありませんか。
驚いたまさひろ、帰ってたなら言えよと戸惑いながら言うのですが、ユキはその言葉には答えず、マサヒロォ、来て!と隙間から体を半分のぞかせた状態のまままさひろを呼ぶのです。
浴場なので当たり前ではありますが、ユキは何も着ていない様子。
まさひろはそれを見ると……面倒になったのか、悪いけど俺もう寝るから、とユキの誘いを袖にして寝室に向かおうとするのです。
が、それでもユキはまさひろの名前を呼び続けます。
まさひろ!
来て。
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まさひろ!来て!
来て、まさひろ、ぎてぇ、まさひろあああああああ!!
人が変わったかのように叫ぶユキ!
まさひろがその豹変ぶりに戸惑っていると、今度はぴたりと動きを止め……
顔を扉の向こうに隠し、ユキはまた、まさひろ、来て、と呼びかけるのでした。
いくらなんでもこれは異常すぎます。
お前、誰だ?
まさひろから出てきたのはそんな言葉でした。
そして二人は立ち尽くしたまま無言の時間が続くのですが……
やがて玄関の扉が開き、ユキのただいまという声が聞こえてきたのです!
まさひろは慌てて洗面場から廊下に身を乗り出し、ユキ、来てくれ、変な女が!と助けを求めました!!
が。
玄関の扉をわずかに開けたユキは、その隙間からまさひろを見つめ……
あんたが牛乳なんか買い忘れなければ。
そう言ったのです。
と同時に、まさひろの携帯に着信が入ります。
とっさにその電話に出ると、その電話からこんな声が聞こえてくるではありませんか。
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下田ユキさんですが、駅近くのコンビニ前で交通事故に巻き込まれました。
緊急搬送されましたが、先ほど死亡が確認されまして……
……次々に起こる出来事にうろたえるまさひろ。
気が付けば電話は切れていました。
いたずらだよな。
自分に言い聞かせる様にそうつぶやき、玄関のドアを開けると……
そこにいたユキは
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左半身がぐちゃぐちゃにつぶれていて……!!
あまりの恐怖に、まさひろはドアを閉め、鍵をかけ、チェーンで施錠!!
家の中に駆け込むと、半開きになっていた扉を次々に閉めていき、窓という窓の鍵を閉め、家具をバリケードのようにして扉を開かないよう封印します!
これでいま、この部屋に続く扉はどこも開かなくなったはず。
まさひろはキッチンにへたり込んで、これでなんとか、どこからも……と漏らしながら、冷蔵庫に寄りかかるのです。
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……冷蔵庫の一番上の段の扉が開き、そこからユキが現れようとしていることにも気が付かず……!!




というわけで、ユウマくんが百物語をしてく本作。
毎日語られる恐怖の物語は、本作ならではの恐ろしさを持つ話から、どこかで聞いたことのあるような話まで様々。
種類やジャンルは違えど、どのお話も恐怖を掻きたてるものが揃っております!
親切な警察官と思っていた人物の恐ろしい執着を描くお話、たった一人の友達「ねんどマン」との絆を描くお話、欲しいものが入っている郵便受けのお話などなど、盛りだくさん。
それぞれのお話が、的野先生の陰鬱さ漂う力のこもった作画で、そのおどろおどろしさを増幅させているのです!

そんなそれぞれのお話を楽しむ単純なホラー漫画としての面白さも十二分にある本作なのですが、もう一つ忘れてはいけないのが「ユウマくんのお話」でしょう!
この作品はユウマくんが「何か」に百物語をすると言う形で進行しているのですが、お話の前後に描かれるその様子も何やら普通ではない空気が漂っているのです!
視点が「何か」からの視点に固定されたユウマくんの部屋で行われる百物語。
時折ユウマくんに声をかけてくるものがいるのですが、その姿は見えません。
それは一体何者で、ユウマくんとはどんな関係なのか?
ユウマくんはなぜ終わると本物の幽霊が現れると言う百物語の存在を聞き、元気を取り戻したのか?
「何か」はなんなのか……?
様々な謎が満ち満ちているユウマくんのお話、こちらこそが本作の本編と言ってもいいのかもしれません!
おそらくお話が増えていくにつれて進んでいくはずのユウマくんの物語……必見です!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!