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今回紹介いたしますのはこちら。

「闇異本」第1巻 原作・外薗昌也先生 漫画・高港基資先生 

日販アイ・ピー・エスさんのLINEコミックスより刊行です


さて、外薗先生と高港先生のタッグによる「異本」シリーズ最新作となる本作。
外薗先生による恐怖オムニバスに、恐怖譚を集める男による縦軸のお話を取り入れたこちら、本作でもその構成は健在です!
果たしてこのシリーズではどんなお話が繰り広げられていくのか?
気になるその内容はと言いますと……




ある電車内でのこと。
車内には、人身事故によって電車が停止している、というトラブルを告げるアナウンスが幾度となく流れていました。
電車が停車してからかれこれ30分。
車内には徐々に、この人身事故の原因となった女性に対する文句があふれ始めていました。
女がこの電車に飛び込んだって。
自殺なら山の中で首でもつれバカ女。
心ない言葉ばかりではありますが……やはり相手は縁もゆかりもない身も知らぬ女性。
ひとり窓際に座っていた男性も、誰に聞かせるともなく「同感」と呟いていました。
と、そんな時。
何やら足音が聞こえてきたのです。
男性はその音の方には振り向かず、そのまま視線を窓の方へ送ったままぼーっと何かを見るわけでもなく外を眺めていたのですが、その窓に女性が駆け抜けていく様子が映し出されたのです。
あまりに奇妙な格好で駆けていく女性が気になった男性は、車内の方へ視線を戻すものの、電車の中にその女性らしき人物の姿はないのです。
その時は気付かないうちに死角に行ってしまったのか、あるいは気のせいなのか……さほど気にも留めなかった男性。
いつしかそのまま、うとうとと船をこぎ始めてしまったのです。
……しばらくすると、また停車を伝えるアナウンスが流れました。
と同時に、あの足音が聞こえてきます。
またかよ、何走り回ってんだよ。
苛立った男性、今度はしっかり振り返ってその女性を探すのですが……そこにはそれらしき人影はありません。
寝ぼけたのか、と振り向きなおり、何となく視線を上にあげますと……
前の座席の上から、
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顔がぐしゃぐしゃに潰れた女性がこちらをのぞき込んでいたのでした……!!

というのが、ホラー雑誌「呪」に送られてきた読者投稿による実話怪談の一編です。
投稿者の名前は「黒い人」。
編集長の野中は、その「黒い人」に興味がわいていました。
なにせその黒い人は、外園が連載している実話怪談に多数の投稿を行っており、もはやその連載の大半が彼の作品と言っていい状況です。
実話怪談という体ではありますが、実際に確認する方法もないわけで……
おそらく作り話も多くまじっているのだろう、と編集者の多くはたかをくくっているのですが、野中だけは何かピンとくるものを感じているのだとか。
俺は仕事で何十年も関わっているからわかる、どれも本当の話だ、読んでいると首筋がぞくぞくする。
金の匂いがするぞ、こいつは。
そうにやりと笑う編集長の首筋に、何か奇妙なできもののようなモノが見えたような……?
それは一瞬で姿を消し、その時は見間違いかと思われたのですが……

野中は外園にお願いし、黒い人と会えないか尋ねました。
外園によれば黒い人はどうしても実際に会うことを避ける人物なのだそうですが、野中があってみたいと伝えてみると、意外やあっさりと受け入れてくれました。
落ち合う場所は彼の家で、そして……黒い人は、顔を見せない、という条件付きで。

実際にあってみると、黒い人は有名サスペンスの登場人物のような、白いマスクをして現れました。
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そして、投稿している話は全て自分か、知人の体験談だと明かします。
普通の怪談マニアは、自分から怖い話を探して回るもの。
ですがその話が本当だとすると、まるで怪談の方から黒い人によってきているかのようです。
黒い人はつぶやきます。
私には怖い話が必要ですからね。
人に話して聞かせるためには、どうしても。
その言葉の意味がよくわからない野中ですが、黒い人はそんな野中にこう持ち掛けました。
せっかく来ていただいたんですから、面白いものをお見せしましょう。
多分野中さんがお望みになってるものですよ、
そう言って黒い人が案内したのは、地下室でした。
地下に続く大きな穴を開いて見せると、黒い人はいきなり野中を蹴飛ばし、地下室に落としてしまったのです!!

どれだけ気絶していたでしょうか……?
野中が気付くと、薄暗い部屋の中で、椅子に縛り付けられています。
立ち上がろうとするものの、落下の衝撃なのか……野中の左すねのあたりが開放骨折してしまっていて、その痛みで満足に動くことができません。
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痛みに耐えながら周りを見回すと、血まみれの奇妙な包みや、手術道具のようなモノが置いてあるのが見えました。
それらが何なのか、想像するのも恐ろしいですが……
自分をこんな目に合わせた黒い人、その声がカーテン越しに聞こえてきます。
そのカーテンの向こうで、彼は誰かに話しかけているようです。
野中は黒い人にどういうつもりだと問いかけますと、黒い人はカーテンを開き、お目覚めですか、との中に話しかけてきました。
そのカーテンの向こうには……
無惨にあちこちを切り裂かれた、女が椅子に縛り付けられているではありませんか!!
黒い人は野中に大事なところだからちょっと待ってくれと言うと、その女をじっくりと見まわし、出た出た、と女の足を見つめながらつぶやきます。
女の足には、奇妙なこぶのようなモノができていました。
やれやれこんだけか、出が悪くなったなぁ。
そう言うと、黒い人は
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ナタで足先ごとそのこぶを切り取ったではありませんか!!
驚愕する野中に、黒い人はさも普通のことであるかのように言うのです。
収穫ですよ。
私が恐怖の種を蒔く、するとそれが聞いたものの体に実を成します。
私にはこれが不可欠なんです。
黒い人は切り取った足からこぶを千切り取り……自らの口に運びました。
そして、女性の頭をナタでたたき割ってしまったではありませんか!
この女はもう出が悪い。
次はあなただ。
怖い話をたくさんしてあげます。
たくさん実らせてくださいよ。
顔色一つ変えず、冷たい瞳での中を見つめながら語りかける黒い人……!
……こうして、野中の、恐怖と絶望の日が幕を開けたのです……




というわけで、異本シリーズ最新作もその恐ろしさをいきなり存分に発揮しながら始まりました。
この第一話は、恐怖オムニバス部分は手短に終わらせ、「黒い人」と野中の物語の始まりの方に注力しております。
今までの異本シリーズは、あくまでっ恐怖オムニバスの方が主体で、語るものに訪れる恐怖や変化がそれを彩っていく形でした。
ですが今回の作品は、その恐怖オムニバスと、野中と黒い人の物語のどちらも読み応えあるお話になっているのです!!
勿論基本的にメインは恐怖オムニバスです。
外薗先生によるおぞましい恐怖の物語を、高港先生の丁寧でありながらグロテスクな筆致で描く、今まで通りの抜群の相性で楽しめます!
因果応報と言える怨霊のたたり、目につく者を無差別に巻き込む無慈悲な邪霊、どんでん返しの待っている恐ろしい出来事。
様々な形の恐怖が、本作でも皆様に襲い掛かります!!
そこに黒い人と野中の物語がミックスされ、無慈悲さ、残酷さは倍増!!
今巻も目の離せない内容となっております!!









本作連載前に同じLINEマンガさんで高港先生の「新編恐之本」が打ち切りになり、紙の単行本が刊行されませんでした。
そんな中本作の刊行がされたことにひとまずほっとしましたが……
途中で単行本が出なくなることが多い気がするこのレーベルだけに、油断できません!
ファンの方はぜひとも単行本をご購入したいただき、野中の最期を見届けましょう……!!