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今回紹介いたしますのはこちら。

「忘却のサチコ」第16巻 阿部潤先生 

小学館さんのビッグコミックスより刊行です。


さて、突然配属になった副編集長、椿に振り回されるサチコさん。
一見ちゃらんぽらんで不真面目に見える椿ですが、ただならない人物でもあるようで……?



椿の人となりも見え始めたある日のこと。
サチコさんは吉祥寺の駅前で、ある人物と落ち合っていました。
物静かで真面目そうな印象の女性……花園マドカです。
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彼女は18歳で新人賞候補に選ばれるなど、若くして才能を発揮している新進気鋭の女性作家。
その候補作「硝子の毎日」は、タイトル通りガラスのように繊細な、すこし寂しさを感じさせる描写が魅力的で、花園先生にしか書けない作品だ、とサチコさんは絶賛するのです。
そんなサチコさんの花園先生に対する勝算が止まらない中、実は密かにずっとサチコさんと一緒にいた男性がおずおずと声をかけてきました。
実はサチコさんと花園先生がここで落ち合ったのは、そもそも彼に「案内」してもらうためだったのです。
彼は不動産屋の村田さん。
花園先生が広島の実家を出て上京することになったので、東京で住む物件を紹介してほしいと言うことで、村田さんにお願いしたわけです。
村田さん、事前にかなりの物件を用意してくれた様子。
ところで、物静かで表情の変わらない、感情の動かない印象を受ける花園先生ですが、決して冷たい人間ではありません。
物件を見に行く道すがら、東京はすごい、カフェによったらかわいい子がたくさんいて、楽しくて癒された、となんだかよくわからないながらも東京を褒めてくれております。
その時になると村田さんが急にくしゃみをしだしまして、そのカフェについての詳しいことは聞けずじまいでしたが……

そうこうしているうちに最初の物件につきました。
最初の物件は、創作に集中しやすくするための広い部屋と、高層階からの絶景の見晴らしが魅力的なお部屋でした。
一軒目から言うことなしの部屋だったような気もしますが……花園先生、こんな高いところから落ちたら、と呟いてしゃがみ込んでしまうのです。
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花園先生は高所恐怖症だった……というわけではありません。
自分で「猿並み」に高いところが好きだと言う花園先生、気になるところがあってこの部屋はダメだと言うのです。
サチコさんはハッとします。
やはりあれだけ繊細な文章を書かれるお方だけあって、創作をする場所にはかなりの独自のこだわりがあるのではないか?
だがそのこだわりが作家と言うもの!
気持ちよく仕事をしてもらうために、なんとしてもぴったりの物件を見つけよう……!
そう密かに決意し、次なる物件への案内をお願いするのです!

が、物件探しは難航します。
防音のしっかりした、今風のコンクリート打ちっぱなしの部屋を見れば、「固そうな壁、こんなところにぶつけたら……」とうなだれます。
別の部屋では「水回りが気になる」、また別の部屋では「車との衝突が少し気になる」、そしてその次には「下の会の居酒屋の匂いが気になる」と、NG連発。
花園先生は、難癖ばかりつけてしまって申し訳ないと謝っては来るのですが、どうにもそのこだわりを折ることはできないようなのです。
村田さんもめぼしい物件を出し尽くしてしまい、今日はいったんホテルに戻ると言う花園先生。
また改めて物件を探そうと言うことになりました。

花園先生と別れ、村田さんと今度について話しながら帰るサチコさん。
その道中で村田さんとの会話していると……サチコさんはとうとう花園先生がなににこだわっているのかがわかりました!!
あの高層階のベランダ、固そうだと言うコンクリートの壁、水回りへの注意、車の危険、居酒屋さんの料理の匂い。
そして別れ際に気が付いた花園先生の袖のほつれと、物件探しの前によったと言うカフェ。
そこからサチコさんは、ある結論に達したのです!
気が付けばあとはもう彼女が求めている条件に合致する物件を探してもらうだけ!
サチコさんは早速村田さんにお願いしするのです!

村田さんに探してもらったのは、なんと築35年の木造平屋。
大凡若い人には向いているとは思えない物件、村田さんもこの物件でいいのかと半信半疑です。
おまけに家のすぐ裏にはお墓があるなど、マイナスポイントも多い物件ですし……
ですが花園先生、お墓は気にならないし、部屋も広くて仕事をするにはいい、と大きな不満はなさそう。
そこでサチコさん、花園先生にこの物件をお勧めする最大のセールスポイント、庭と縁側を紹介するのです!
その中庭には
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近所の野良猫がたくさんたむろしていたのです!!
なんでもお墓のお供え物を狙って集会場にしているのだとか。
村田さんはくしゃみをしながらそう解説してくれました。
……昨日の物件探しの時も、村田さんはくしゃみをしていました。
実はこれ、村田さんが猫アレルギーで、そのせいでくしゃみが出てしまっているのです。
そう、花園先生がよって来たカフェと言うのはネコカフェ!
どうりで「かわいい子がたくさんいて癒された」わけです!
今までの花園先生の心配も、全て猫が危なくないか、という心配で……

花園先生は、実家で猫を飼っていたものの、老猫ナタメ連れてくることはできなかったそうで。
それはわかっていても、どうしても一緒に暮らしている姿を想像してしまい、うなだれた利してしまったようなのです。
彼女は猫がたくさんいるこの環境なら、愛猫のいない寂しさを補えそうだと今まで見たことのない笑顔で応えてくれました。
そしてサチコさんの洞察力にも感嘆し……二人は今後いい関係を気付くことができそうな予感を漂わせながら、物件探しは終わるのでした!

その帰り道、近くの公園の中にある猫の入店可能なお店に入るサチコさん。
今回注文したのは、
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チーズドライカレーのセット。
たっぷりかかったチーズをかき分けると、中から出てきたのは半熟卵。
そしてその下にドライカレーが入っていまして、その三つを一度に口に運ぶサチコさん!
チーズの香りが口いっぱいに広がり、そのほのかな甘みがカレーをまろやかにして優しい口当たりを楽しめます!
ドライカレー単品で食べれば、ピリッとした辛みにナスや玉ねぎの野菜のうまみが加わってなんともさっぱりしたお味が堪能できます。
半熟卵の黄身を絡めれば、何とも贅沢な味わいで……
公園の森を眺めながら食べられるシチュエーションも抜群で、サチコさんは花園先生にも教え枝あげたい、と……

猫とともに一緒にくつろぐ姿を想像するのでした。



というわけで、新キャラクターの登場する今巻。
花園先生、猫が大好きという特徴以外、問題児的な要素がないため、今後の出番が少なそうな気がしますが……
今までにいないタイプの、真面目な若い女性作家と言うキャラクターだけに、是非とも再登場していただきたいものです!

その他の個性豊かな先生方は今回も登場。
アリサやジーニアス(お母さん付き)、美酒乱といつもの面々も活躍してくれるのですが、美酒乱の活躍するお話は必見!
今までの女たらしのだらしない男、という印象をちょっとだけ覆すいいところを見せてくれます!
それぞれのお話には相変わらず食欲をそそられる料理も登場するのですが、サチコさんが俊吾さんのことを大分考えずにいられるようなので……食事と「忘却」に関しては比較的あっさり目になっている印象。
その分キャラクターの描写に力がこもった一冊になっているわけです!
それを象徴するように、今巻の前半には前巻から引き続きの椿に関してのお話が描かれておりまして。
椿の様々な面が明らかになるこちらのお話も今巻の目玉と言えましょう!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!