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今回紹介いたしますのはこちら。

「竜女戦記」第3巻 都留泰作先生 

平凡社さんより刊行です。


さて、無衣の行者こと勘兵衛より、「天下を取る力」を受け取ったたか。
その力とは、人の心の中に潜り込み、その人を思い通りに動かすと言う者でした。
この力で天下を取らなければ、人形のようになってしまったかわいい子供たちが元に戻ることはありません。
頼りなさすぎる夫、与一郎を支えながら、たかは何とかその力を使いこなそうとするのですが……




ある日、与一郎の前から勘兵衛が姿を消しました。
勘兵衛が自分に天下を取る力を与えてくれた、と思い込んでいる与一郎はショックを受けるのですが、それよりも大きなショックを受けてしまう報せが届いてしまいます。
それは、
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与一郎にずっと与えられ続けるはずだった、年五千石の恩賜が今月で取りやめになる、と言うもの!!
ようするに与一郎はこれで無職、無収入になってしまうわけで。
そうなると300人いる家中を養うこともできません。
どうすればいいのかと上使に問いかけると……「自力で何とかしろ」とのこと。
上使は小判30両を置いて、さっさと帰ってしまうのです。

こうなればもうどうにもなりません。
家中たちは皆暇を出し、落ち着いたら与一郎たちは菩提寺の無人の支寺に移り住むことになりました。
300人いた家中は誰もいなくなり、二人の面倒は寺男の嘉吉と言う男1人が見ることに。
与一郎はガッカリなどと言う言葉では足りないほど落ち込んでしまうのですが、たかの方はそれほど落ち込んでおらず、こんな環境で暮らすのが夢だったと笑顔すら浮かべるのです。
それは与一郎を少しでも励ますためのから元気だったのでしょうか。
ともかく与一郎、お前が機嫌よしなのは何よりだ、とつぶやくのでした。

落ち着いたところで、二人は「天下を取る」ことについて話し合いをします。
結堂の当主になればなんとかなると思っていた、大名ですらない野に天下を取るというのはどういうことなのか。
そう言う与一郎に、たかは真っ当な意見で返します。
やがて起こるぬたうなぎ討伐軍の先鋒を申し受けて手柄を立て、所領回復を認めてもらう。
その為の兵は帝室から借りて、役目をもらえば支度金をもらえるはずだから、そうすれば家臣も戻って来る。
一歩一歩進むしかない。
そう言うたかなのですが、与一郎はこうなる前までは、勘兵衛が口を聞いてなんとかしてくれるんじゃないかと楽観的に考えていたようで。
今やその伝手もない以上、口をきいてもらえる誰かを探さなければならないでしょう。
まず思い浮かぶのはご老公。
大大名として都と氷向を何度も行き来して、城中の武家とも親交があるはず。
十分目のある伝手でしょうが……
ご老公は家臣たちの前で与一郎は息子ではないなどと言い放ったうえ、最後に会った際には二度と現れるなと強く言った相手です。
今更頭を下げてどうにかしてくださいとは流石に言えません。
となると残るは……安藤吉備守。
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安藤に対しては、与一郎だけではなく、正直を言えばたかも憤懣やるかたない思いを抱いている相手。
頭など絶対に下げたくない相手ですが、今や幕奉行吟味役。
確かな「力」があるわけです。

頭では自分一人でどうにかならないとはわかっていても、割り切れない与一郎。
すっかり気分が落ち込み、まともに食事もとらずにしおれきってしまいました。
たかは一人、自分の能力で操れるようになった人間、デクを使って道を開いてあげなければならないと考えるのですが、そのデクになった女、お慶は今城中の洗濯物をひたすらするだけの洗濯女に配置換えされてしまっています。
これでは城内で何かをすることもできません。
頭を悩ませておりますと、そこにふらりと勘兵衛が現れました。
姿を消したはずの勘兵衛、忘れ物を届けに来た、と言って
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たかにいきなり口づけ!!
驚き慌てるたかですが、口を離した勘兵衛はこう告げるのです。
木偶の口からターゲットの口に息を吹き込む。
これでデクののりかえが完了だ、と!

こうしてデクから違うデクに乗り移る方法を知ったたか、お慶の行動をうかがい、より国を動かしやすい相手に乗り移ろうと考えます。
その途中で、お慶がなんと隠密である事を知ることになりました。
とはいってもお慶が使えている黒姫の敵側の隠密ではなく、護衛か監視か……ともかく黒姫の国、黒蛇側の隠密であるようです。
そんな隠密の動きで、お慶は近々黒姫のおつきの立場に戻してもらえるようです。
もう少しお慶をデクにしたままにして、より良い乗り移り先が来るチャンスをうかがうことにしたのでした。

そしてその日はやってきました。
黒姫のおつきの一人に戻ったお慶、重要な式典に出席しようと本丸に向かう黒姫の行列の中に交じっております。
黒姫とお慶の距離、20メートル弱。
勘兵衛はその状況をたかから聞くと、この次女が黒姫にこれだけ近づけるのはいつになるかわからない、最後のチャンスかもしれない、と言い……
隙を見て黒姫に飛びついて黒姫をデクにしろ、と続けるのです!
距離が距離だけに、乗り移りが成功する可能性は高いでしょう。
ですがその後、お慶は乱心ものと指摘られてしまうのは間違いありません。
勘兵衛は、それがどうした、そのデクはもはや使い道に乏しい、と冷酷に言い切り、たかに飛びつく段取りを教え始めます。
何気なく列から外れ、列の右側を通り過ぎる。
城のものは曲者が入りこんでいるなど夢にも思っていないはずだから、何か用事で走り回っているとしか思わないはず。
そこで黒姫の斜め前に跪いて、大きな声で黒姫の名前を呼ぶ。
すると黒姫はもちろん、おともも虚をつかれ、何か重大な言上があるのかと動きを止めるから、そこで一気に駆け寄って抱き着き、引きはがされるまでの数瞬のうちに息を吹き込む!!
その通りにすれば、おそらく作戦は成功するでしょう。
ですがお慶はどうなってしまうのか?
迷うたかに、勘兵衛は囁きます。
すでにしてこれは戦ぞ、はらをくくれたか!
今こそ三人の子を思え、行け、やってみよ!!
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高鳴る胸の鼓動……
行け、という勘兵衛の声……
そして、たかは……!!




というわけで、追い詰められていってしまう与一郎とたか。
与一郎は自分に天下取りの力があると信じていて、勘兵衛によってその第一歩が踏み出せると考えていただけに、どんどんと苦しくなっていく現状は耐え難いものでしょう。
与一郎の最大の弱点は精神の弱さであるだけに、ここからまた精神が打ちのめされてしまうことも考えられるでしょう。
そうなると、とにかくどんな手を使っても何らかの光明を見出さなければなりません。
そこでカギになるのがたかの力ですが……
たかが天下を取るためには、より高い身分の人間をデクにすること。
ですがそうするには、お慶のような犠牲を払わなければならないのです。
芯の強い女性であるたかですが、その為にどんな犠牲を払ってもかまわない、と割り切れるほど冷酷ではありません。
果たしてたかはお慶を踏み台にすることができるのでしょうか。
それとも……

そして竜に守られる三つの国の情勢もどんどんと変わって行きます。
それぞれ強大な力を持っている竜がいるからこそ均衡が保たれていた今の状況。
その状況が、今にも崩れ落ちかねない事実が明らかになっていき……!!
さらに権力を持つ者達の間にも問題が山積している様子が描かれ、これから物語がどうなっていくのかますます予想不可能に!
この混迷の状況の中で、たかは天下を取り、子供たちを救うことができるのか……本作から目が離せませんね!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!