ze0
今回紹介いたしますのはこちら。

「前科者」第7巻 原作・香川まさひと先生 作画・月島冬二先生 

小学館さんのビッグコミックスより刊行です。


さて、みどりの秘めたる思いが明かされた前巻。
良き友人である阿川とみどりですが、みどりは今の関係を崩しかねないと、自らの気持ちを抑え込もうと葛藤するのです。



ある日のこと。
小田のおばあさんの家にスーツ姿の眼鏡の男が尋ねてきました。
なんでもおばあさんの持っているクレジットカードが不正利用されたとのことで、この男が確認にやってきたとのこと。
よくある詐欺の手口なのですが、おばあさんは疑いもせず、言われるままクレジットカードを手渡し、暗証番号まで教えてしまいます。
男はまた警察から連絡が来ると思う、協会に戻って確認した後、警察にカードを返すので、と言い残して立ち去ろうとするのですが……
そこでたまたまおばあさんの知り合いがやってきて、男と鉢合わせ。
すぐに詐欺だと察知した知り合いに、男は取り押さえられてしまうのでした。

男は岩元静太、20歳。
詐欺の受け子として逮捕され、1年6か月の実刑判決を受けました。
現在特殊詐欺は厳罰な為、執行猶予はつかなかったそうです。
岩元は母親と近年死別し、父親は幼少期に亡くなっているのですが、4歳上の姉がいる為、そちらが身元引受人になってくれるとのこと。
生活環境に関しては問題がなさそうです。
彼の担当を阿川がすることになったわけです。
生活環境に問題がない、とはいえできる事はしておきたいもの。
阿川は早速、身元引受人だと言う彼の姉に会いに行くことにしたのでした。

岩元の姉は、阿川をにこやかに迎え入れてくれました。
彼女は身ごもっておりまして、出産ももう間もなくとのこと。
そんな彼女は、岩元が出所した後ここで一緒に暮らすつもりだと言います。
なんでも彼女はシングルマザーとのことで。
急に弟が転がり込んでくる、と煙たがられる心配はないようです。
彼女が暮らしているこのアパートは2DKと広め。
岩元が一緒に住んでも狭くて困ると言うことはないでしょう。
ですがそれだけに、彼女にはこんな後悔もあるのです。
刑務所に行くことになって、静太が住んでいたアパートは解約したんですよ。
だけど最初から一緒に住めばよかったなって。
その方が金銭的にも楽だったし、悪い事にも手を出さなかったかもって。
あの子、運がないんですよ。
頭良かったから高校は神学校受けたんですけど落ちちゃって。
すべり止めで入った高校は合わなかったで友達出来なくて。
大学も生きたかったのにやっぱり落ちちゃって。
お金がなかったから浪人できなくて。
就職したんですけど、その会社がいわゆるブラック企業で、そのころからだんだんは気がなくなって。
会社も辞めてしまって、結果バイト先で知り合った人に詐欺に誘われてしまったんです。
どうしてなんだろう。
頭がいい子なのに、どうしてあの子、あんなことを……
二人の間には、何とも云えば五空気が漂ってしまうのです。

その夜、阿川はみどりとファミレスで読書をしていました。
そこでみどりは突然、こんなことを言いだすのです。
佳代ちゃんは明日、アリに転生します。
アリになった佳代ちゃんは、人間の知恵でどんどん活躍すんだよ。
だけど、アリの佳代ちゃんは人間の記憶がどんどんなくなっていくんだ。
最初はそれが怖かった、でもだんだん別の気持ちになって来る。
佳代ちゃんは思う、アリには人間の知恵じゃなく、アリの知恵でいいんだと。
そして佳代ちゃんは、人間だったことを忘れてしまう。
ze1
だけどそれは不幸なことじゃなく、幸せなことでしたとさ。
……その話を聞いた阿川は、なんですかそれ、と単純に質問してきます。
みどりはというと、自分でもわかんねえ、とのこと。
実際はもちろん思うところあって生まれた話なのでしょうが……阿川はみどりの複雑な思いも知らず、こんな感想を言うのです。
変なの、でも面白いです、その女王アリってみどりさんっぽいし。
もちろんそれはみどりが高飛車だと偉そうだとか言うわけではなく、姉御肌といいますか……自分にとって気持ちのいい存在だと言う意味での発言のようです。
自分にとって女王アリのような存在が気持ちいい、ということは、依存なんじゃないかと言うみどり。
阿川はそれを聞くと、意図もあっさり依存ですよ、と返しました。
群れ社会の関係はいいかえれば全部依存、依存して依存されて、が当たり前だと言うわけです。
自分でそう言っておいて、阿川はこれはみどりに聞いた話泣がする、と言いだしました。
阿川は、自分の考えなのか、読んだ本の考えなのかわからなくなることが多いそうで、最近では緑の言葉も自分の考えのようになってしまっている、とか。
その言葉に対し、それは嬉しい、自分も結構あ側が入ってきている、とほほを染めて返すみどり。
そして阿川も、うれしい、と無邪気に笑うのです。
ですが笑ったあとピタリと動きを止め、なんでうれしいんだろ、と疑問に思う阿川。
みどりはそんな阿川の自問に、声に出さずこう呟くのです。
ze2
いいんだよ、疑問になんて思わなくて。

しばらくの時が流れました。
阿川はあの家で、牛丼を作っています。
ということは……そう、新しい保護相手がここに尋ねてくると言うことです。
ほどなくして、こんにちはと声が掛けられました。
岩元です。
大人しい印象を受ける岩元ですが、挨拶をかわす際に彼の眼鏡の蔓が折れていて、テープで補修していることに気が付きました。
格安で修理してくれるメガネ屋さんを紹介しましょうかと尋ねる阿川ですが、岩元は言いました。
別にいいです、金もないし。
もう俺、
ze3
終わってるんで。
自暴自棄になってるわけじゃないです、また犯罪に走るとか、自殺するとかありませんから。
そう言うのは面倒だし。
そこまで行って、自分が余計なことを言ってしまったと思ったのでしょう、岩元はすぐにそこで方向転換。
変なことを言ってしまった、いたって普通だから心配しないで、と誤魔化そうとするのですが……
阿川は、手にしていた布巾をhぐっと握りしめ、言うのです。
ze4
ものすごく心配です!と。



というわけで、新たな保護相手が登場する今巻。
今までの人物も全員一癖も二癖もある人物で、阿川は毎回違う難しさに直面してきました。
今回の岩元も、癖があると言う面では一緒なのですが、今までとは違う方向のむずかしさがあるようです。
気難しかったり、取り付く島が無かったり、嘘をついたり……そんな難しさとは違い、岩元は「諦めている」と言う難しさを持っているのです。
自分はもうどうしようもない、どうしようもない自分がさせてもらえることでそのままどうしようもないなりに生きていくしかない。
阿川がいつものように保護相手の心に触れようとしても、そんな態度ですかされてしまい……
そんな岩元との関係の鍵を握るのは、今回もやはりみどりのようです。
ですがそんなみどりの行動も、今までとは違う様子。
果たして岩元と阿川、そしてみどりはどんな関係性を築いていくのか?
岩元は「更生」できるのでしょうか……?

今回も淡々と前科者の物語を描いていく本作ですが、主人公である阿川はもちろんの事、みどりの存在感がどんどんと大きくなっていきます。
今巻ではみどりの方がお話の主人公と言える動きを見せて行くのですが、それは岩元との関係だけではなく、彼女の揺れ動く気持ちも描かれていきます。
みどりは、その秘めた思いに一つの決着をつける決意をするのですが……
彼女のそんな行動と、心の動きにも注目です!




今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!