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今回紹介いたしますのはこちら。

「MY LITTLE PLANET」 岩泉舞先生 

小学館さんより刊行です。


岩泉先生は89年にジャンプの新人賞を受賞してデビューした漫画家さんです。
その後読み切り作品を何作か発表し、好評を博しました。
ですが94年を最後に作品の発表はなく、いわゆる「消えた漫画家」となっておりました。
そしてそれから二十数年たった21年、突然単行本未収録作品と、描き下ろしの新作を収録した本作の発売が発表されたのです!!

そんな待望の一冊となっている本作。
今回はファンの皆様が一番気になっているであろう、新作である表題作である「MY LITTLE PLANET」を少し紹介させていただきたいと思います!!




グレイスはマーニーに問いかけました。
神様っていると思う?
もしいるとしたらどんなお姿をしてると思う?
時々ね、考えるの。
模試も神様がいたとしたら、私達はどんな風に見えてるのかなって。
マーニーはグレイスのうなじにある「紋章」を見るともなく見ながら、こう答えました。
相変わらず夢見がちねグレイス。
「もしも」も何も、あたしたちの神はアレでしょ。
そう言って、マーニーはこの町、魔法都市リーヴスラシルの中央に鎮座するドーム状の施設、「魔法炉」魔法炉を指すのでした。

リーヴスラシルは、魔法炉が生み出す多量のエネルギーによって、住民は皆豊かな暮らしを楽しんでおりました。
ですがみんなが幸せな日常を過ごす一方で、実は大きな不安も抱えています。
それは……ここ十数年、子供が生まれていない、ということです。
その日、グレイスとマーニーは「検査」を行うために街を駆けていました。
すこしのんびりしすぎてしまったのか、検査の時間に遅れそう。
そこでマーニーは、豊富な魔力を利用し、文字通り「飛んで」検査場へ向かうのです。
その後を走って追うグレイスに、あんたも早く飛行術位使えるようになりなさいよ、と言い残してどんどん先に逝ってしまうマーニー。
猛スピードで低空を跳ぶマーニーに、街の人々はぶつかりそうになって慌てて避けて行きます。
そう言った危険性もある為、基本的に街中は飛行してはいけない区域に指定されているのですが……
それをマーニーに注意する者はおりません。
生後12年と3時間のマーニーと、生後12年と2時間のグレイス。
この二人は、
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「最後の子」と呼ばれ、この国で最大の宝として扱われているのですから。

検査は無事終わりました。
二人に健康上の問題が全く見られないと言う検査結果を受け、ほっと胸をなでおろすのは検査をする医師達側。
二人からすればそれほど大事なこととは思えないようです。
そんな宝の二人ですから、当然勉強などの機会もしっかりと与えられております。
検査の後はお勉強の時間、となっておりまして、マーニーは次から次へと予定が入れられていて忙しいったらない、と不満の声をあげるのです。
いざお勉強の時間が始まっても、マーニーは不満ばかり。
豊富なエネルギーを生み出す魔法炉さえあれば、人間が労働に従事する必要などありません。
だから勉強だって必要ないじゃないか、とマーニーはグレイスに同意を求めるのです。
話を振られたグレイスですが、彼女の考えは違うようです。
もっと魔法の勉強をして、マーニーのように上手に魔法が使えるようになりたい、とグレイスとは違う考えを明かすのです。
真面目ねぇアンタ、とマーニーが感心……と言うより、あきれていますと、そこに一人の老人が現れました。
この街の長のような存在、大賢者です。
大賢者は二人のもとにやってきますと、勉強の成果を見定め始めます。
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マーニーが咲かせたのは、艶やかに花開いた立派なバラ。
見るも見事なバラに、大賢者も絶賛、マーニーもしたり顔です。
一方のグレイスが咲かせたのは、何の変哲もない野に咲くような、控えめで小さな花でした。
なるほどいかにもそなたらしい花じゃのう、と大賢者。
グレイスは少し恥ずかしそうにその評価を聞くのです。
……そして大賢者は、今日ここにやってきた本題を切り出します。
ふたりに「特別なモノ」を持ってきたと言うのです。
それは、1人ひとつずつの水晶玉のような球体、「ゲームオーブ」でした。
一般的なゲームオーブは、魔法を学ぶための知育玩具。
その球体の中にゲームを映し出し、楽しく魔法を学ぶための道具のようです。
が、このゲームオーブは大賢者が開発した新製品なのだとのこと。
大賢者に促され、スタートのボタンを押しますと……なんだか豪華な感じのオープニングムービーが流れ始めます。
指示に従い、精神を集中してゲームオーブの中に集中し、意識を深く潜り込ませる二人。
するとオーブの中に、宇宙……その中に浮かぶ、ひとつの惑星が見えてきました。
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これは「星を育てる」ゲーム、自分が住みたくなるような星を育てなさい、と大賢者は言うのです。
ですがマーニーは早速、ヤダ!と拒否しちゃいました!
結局だたのシミュレーションゲームじゃないか、自分は得意だからすぐクリアしてしまう、とやりもせずに文句を言うマーニー。
マーニーが思っているより星の存続は大変だ、ちょっとバランスが崩れただけでも生態系に狂いが生じるし……と簡単ではないことを教える大賢者なのですが、マーニーはそれでもこう言うゲームは他でも見たことある気がするし、と文句が止まりません。
しびれを切らした大賢者は、つべこべ言わずにやりなさい!と一喝し、立ち去っていってしまうのでした。

結局面倒な宿題を押し付けられちゃった、と不満が止まらないマーニーですが、グレイスはそうでもないようです。
凄い速さで時間が経過して、もう人類が誕生しているわ、とオーブを観察していました。
マーニーもそこでようやく自分のオーブを見るのですが、ここでも不満ばかり。
豆粒みたいのがうじゃうじゃで気持ち悪い、原始的な暮らしね、服すらろくに来てないなんて信じられない。
同じような状況を見ているグレイスからは、拡大すれば個人の顔まで判別できるみたい、木や草で住居を作って暮らしているみたいね、たくましいわ、と肯定的な言葉が出てくるのです。
グレイスはそんなオーブの中の星を見て、かわいい、とつぶやきます。
マーニーは、みすぼらしい、と眉間にしわをよせました。
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グレイスは星の人々の幸せを望み……マーニーは、不幸を望みます。
……そんな二人の望みの違いは、その後の二人の二人の運命すらも帰ることになるとは、この日の二人は夢にも思わないのでした……



というわけで、岩泉先生待望の新作が楽しめる本作。
この後物語は徐々に様相を変えて行き、クライマックスへ向かうこととなります。
そして最後に待っているのは……!
岩泉先生作品の特徴と言えば、単なるハッピーエンドでは終わらないながら、心に響くものを残す独特の読後感の残るストーリーでしょう。
二十数年ぶりの新作となる本作でも、その持ち味が存分に発揮されたラストシーンとなっているのです!!
一方で絵柄の方は完全に今風にブラッシュアップされておりまして、長いブランクがあるとはとても思えない美しい作画になっています!!
絵柄は美しく変わり、岩泉先生の優しさと厳しさの同居した作風は変わらない、そんな作品に仕上がっているのです!

本作は表紙からも何となくお分かりいただけるように、92年に発売された岩泉先生唯一の単行本、「七つの海」の収録内容をそのまま収録しております。
「七つの海」の収録作を美麗な印刷で再収録しているわけですが、それだけではなく、単行本未収録だった「COM COP~夢見る佳人~」「KING」「クリスマスプレゼント」を収録!
こちらは原稿が見つからなかったのでしょうか、印刷物からの転載になっているためちょっと印刷が荒いと言う難点があるものの、今まで古い雑誌を探すしかなかった作品を単行本で読めると言うのは、その難点を補って余りある嬉しさを感じさせてくれるはずです!
「七つの海」に収録されていた数々の作品も、言うまでもなく名作ぞろい。
表紙カバーの裏面は、今の岩泉先生による新表紙カバーともいえるイラストが描かれておりまして、こちらも嬉しいポイントですね!!
そんなこんなでファンの方ならば迷うことなくマストバイな本作ですが、岩泉先生を知らなかった皆様にも是非読んでいただきたい一冊となっております!!




今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!