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今回紹介いたしますのはこちら。

「SAKAMOTO DAYS(サカモトデイズ)」第1巻 鈴木祐斗先生 

集英社さんのジャンプコミックスより刊行です。


鈴木先生は19年にジャンプ+に読み切りを発表してデビューした漫画家さんです。
同年に発表した読み切り「ロッカールーム」は、20年に「世にも奇妙な物語」内の1話としてドラマ化もされました。

そんな鈴木先生の初連載作となるのが本作。
とある町の商店の小太りの店主を主人公としたアクションものになるのですが、その店主はただの小太りおじさんではなく……!?



最強の殺し屋、坂本太郎。
彼は誰しもが認める「最強」の実力を持っていました。
全ての悪党から恐れられ、全ての殺し屋の憧れだった坂本。
そんな坂本に、ある日とんでもない出来事が巻き起こります。
何となく立ち寄った夜のコンビニ。
そこで働いていた女性店員に、一目ぼれしたのです!!
坂本はあっさり最強の殺し屋の立場を捨て、彼女にアプローチをかけます。
殺し屋を引退し、彼女と結婚し、子供も生まれ……
幸せの絶頂の日々がやってきて、坂本は
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見る影もなく太ったのでした!

そんなある日の事。
東京のはずれにある坂本商店では、いつも通りの日常が行われていました。
なんだかお店でやんちゃをしている近所の子供。
それを優しく注意しながら、にこにこと見守る葵と……椅子に座ったまま見るともなく見ているその夫にして店主、坂本太郎。
するとその子供、やんちゃするあまり、近くを通っていたこわもての男性のズボンに墨汁を引っ掛けてしまったのです!
キレてしまった男性、容赦なくその子供を殴りつけようとするのですが、そこに音もなく坂本が近づきます!!
そして男の振り上げた手をつかみ……懐から取り出したペンで喉を一突き!!
……する妄想をしました。
殺し屋を引退した坂本、さすがにもう殺しはしません。
腕をつかんだ所までが現実でして、こわもての男もそこでさすがにやり過ぎだと気づいたのでしょう、君の悪いデブだと言い残して立ち去っていってくれたのでした。
……とはいっても、気を抜けば本当にさしてしまっていたかもしれなかった坂本。
危ない、ぶち殺すところだった、と内心では安心しています。
するとそんな坂本に、こんな声をかけてくるものが現れるのです。
流石ですね、ボールペンでしたあごから頸動脈を一突き。
僕には「視え」ました……!
お久しぶりです坂本さん、エスパーのシンです。
坂本はそんなシンを掌底でぶん殴って首を折る……妄想をします。
エスパーのシンは人の考えていることがわかるようで、その妄想をすぐ察知。
なんですぐ想像で殺すんですか!と飛び退るのでした!

このシン、かつて坂本の部下だった男です。
坂本が殺し屋をやめて店をやっているという噂を聞いて尋ねてきたようで、坂本が殺し屋に戻るよう説得に来たのです。
ですが坂本、もちろん殺し屋に戻る気はありません。
いまや個人商店だけでなく、町の便利屋のようなことを、「最強」の力を使って行っている状態。
すっかり街に溶け込んでいるようで……自分が何を言っても聞かないだろうと言うことがシンにもわかりました。
僕から見ると今のあなたは、実に滑稽ですがね。
そんな捨て台詞を残し、立ち去っていくシン。
そうは言うものの、坂本に強いあこがれを抱いているシン、心の中ではやっぱりオーラが違う!かっこいい!とべた褒め状態なのです。
いざ帰ろうとするシン、そこで電話がかかってきました。
それは彼のボスからの電話。
ボスはシンに尋ねます。
坂本は説得できたのか?出来なかったなら、殺したか?と。
シンは、どうしても殺さないとだめなのか、坂本さんは今スゲー太ってて全然脅威じゃない、とあえて軽い口調でボスに報告するのですが……
ボスは言うのです。
組織を勝手に抜けたやつはブチ殺すのが決まり。
お前がやらなくても変わりはいくらでもいるんだ、ごちゃごちゃ言っているとオマエもまとめて殺す、と……!!

翌日。
誰かに殺されるくらいなら自分が、という思いを秘め、再び坂本商店にやってきたシン。
店に入ると、別れの挨拶をする……と見せかけて、素早く銃を抜いて坂本を撃ちます!!
普通の人ならば、反応すらできないであろうスムーズで素早いその銃撃。
ですが坂本は、反応して避けるどころか、口内で転がしていた飴玉を吹き出し、弾丸に当てて弾道をそらしたではありませんか!
と同時に、アイスキャンディがシンに向けて投げつけられていました!
すかさずそれをかわすシンなのですが、一瞬アイスに気を取られた隙に坂本は姿を消していました。
本来なら心が読めるシン、姿を格下相手を見つけることなど朝飯前。
ですが坂本相手だと話は別でした。
最強の名を冠したことのある男だけあって、その思考を読むことができないのです!!
坂本は陳列棚の陰に隠れ、商品と商品の隙間からシンに飴玉を発射!
命中すれば無傷では済まない速度で雨あられのように放たれる飴を避けるシン、そのまま坂本は隠れている列に駆け込み、銃を構えました!
が、そこに待っていたのはシュークリーム。
シンの顔面に坂本が投げたであろうシュークリームが直撃したのです!
既にその列には坂本の姿はありません。
態勢を立て直そうと考えたシンですが、既にその時には背後に音もなく坂本が忍び寄ってきていて……

気づいたときには、強烈なキックでシンの体は宙に舞っていたのでした……

目が覚めるとシンは布団の中で、坂本の奥さんと娘さんに介抱されていました。
坂本に敗れた以上、自分の命を奪われることも覚悟していたはずのシン。
ですが待っていたのは、坂本家と一緒に食卓を囲んでの夕食でした。
勧められるままに食事を口に運ぶと、なぜかシンの目からは自然と涙があふれてしまいます。
しばらく感じたことのない、「あたたかさ」。
奥さんはそれを見て、昔の坂本と同じ反応をしていると笑うのですが……
そこでシンは理解するのです。
坂本は殺し屋稼業では味わうことのできない、この「なんてことない日常」を守るために殺し屋をやめたのだ、と。
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口には出さないまでも、また来いと促されながら見送られたシン。
組織に戻り、まずすることは、ボスへの報告……ではありませんでした。
坂本を見逃してくれないか、と土下座で懇願することだったのです。
坂本を見逃してくれるなら、責任を取って自分が死ぬ。
自らの首筋に銃を押し当てながら頼み込むと、ボスはそこまでするならお前が死ねば坂本はやらないでやる、と約束してくれました。
が、エスパーであるシンには手に取るようにボスの考えがわかってしまいます。
下らねえ、そんなわけねえだろバカが、さっさと死ね。
……裏切られた、とはいえ、非道な組織のボスがこういう行動をとるのも織り込み済みです。
心が読めるとはいえ、相手は十数名。
絶対的に不利な状況ですが、シンは抵抗を試みるのでした!!

ヒット&アウェイの戦法で健闘するものの、やはり不利を覆すことはできませんでした。
とうとう足に銃弾を受けてしまい、組織の男たちに包囲されてしまいます。
もはや交渉の余地はありません。
目前に迫る死を覚悟した、その時でした。
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坂本が現れ、包囲している男たちをスタンガンで一気に蹴散らしたのは!!
実は坂本、別れる前にシンに盗聴器を仕掛けていて、一連の流れを聞いてすぐさま助けに駆けつけてくれたのです!!
組織の面々は坂本を始末しようと躍起になるのですが、坂本の実力は並大抵のものではありません。
目にも止まらぬ、という言葉でも間に合わないすさまじい速度で組織の面々を打ち倒していき、瞬く間に全滅させてしまうのでした!!

坂本に救われたとはいえ、一度は殺そうとした身。
シンは今度こそこの街を立ち去ることに決め、それを坂本に告げるのですが……
坂本は返事の代わりに、シンの名札のついたエプロンを渡してきました。
時給800……850円。
残業手当、無……アリ。
そう言って、親指でこっちに来いというサインを出して……?

こうして、
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シンは坂本商店のアルバイトをすることになりました。
思っていたのとは違いますが、これも「坂本と一緒に仕事をする」ことには間違いありません。
シンの夢は一応叶い、坂本との仕事の毎日が始まるのでした!




というわけで、坂本とシンの日常が描かれていく今巻。
この後物語は、坂本の周りで巻き起こる様々な事件を、坂本の超人的な身体能力とシンの超能力によって解決していくお話になっていきます。
……が、家族を得て平和な生活を始めた坂本ではあるものの、やはり最強の殺し屋だった男が勝手に仕事をやめると言い出せば波風が立たないはずもなく。
坂本を狙う殺し屋たちとの戦いも繰り広げられていくのです!

本作の見どころは、坂本やシンといった規格外の力を持つ者たちの活躍とどこかずれた毎日を描くコメディ部分と、その力を本来の方向に生かしたアクションシーンでしょう。
コミカルな要素ももちろん楽しいのですが、やはり鈴木先生のセンスが光る構図が目を引くアクションシーンは見逃せません!!
けれんみ溢れる戦闘の数々、見るものを驚かせてくれること必死ですよ!
笑いあり感動あり、もちろん激しいバトルありの見どころたっぷりの本作、今後のアクションにも日常にも注目ですね!!


……個人的には3話に出てくるナカセ巡査が好きなんですが……もう出ないんですかね……?




今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!