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今回紹介いたしますのはこちら。

「夏目アラタの結婚」第5巻 乃木坂太郎先生 

小学館さんのビッグコミックスより刊行です。




さて、今まで黙秘をしていた真珠が、突然裁判で驚きの新証言を始めた前巻。
様々な人物を魅了する魔性の見え欲を持つ彼女ですが、これも彼女の作戦の様なものなのか、それとも……?



久しぶりに真珠と面会をするアラタ。
面会早々真珠はアラタに、ポーズを指定して動かないように指示、じっくりとアラタの顔を観察すると言う不可解な行動をとり始めました。
どんな顔をしてたかなと思ってさ、最近あんまり会ってなかったから。
そう言う真珠に、法定じゃ顔つき合わせてってわけにもいかねーしな、使忘れんなよ!と返し……そして、彼女が送ってきた離婚届の切れ端を取り出すアラタ。
二度とこんなもん送ってくんなよ、と告げると、真珠は何だか神妙な面持ちで言うのです。
取っておけばいいのに、ボクが嫌になった時にいつでもでしてよかったんだよ?
終わる時は、知らない所でプツッと終わる方がよくない?
そう言う真珠の言葉……新たにも理解できてしまいます。
今までアラタが付き合ってきた数々の女性は、別れる前にアラタに「なぜ怒ってるかわかるか?」「変われないんならもうダメかもね」など、アラタに様々なことを求めてきていました。
その度アラタは、面倒だ、「別れよう」の一言でいいじゃないか、とぼやいていたのですから。
お互いしっかり話し合って理解してから、続けるか別れるか決める、そんなことは必要ないと思っていたアラタでしたが……自分も真珠もそう思ってしまう理由も見当がついています。
自分達は結局、誰も本当には愛していないから、だと。
アラタは真珠が会いたがった手紙の送り主、彼女が待っていた「誰か」ではない。
お互いよろこんでみせたり、ほんの少し素顔を見せたりしても、この面会は堂々巡りの茶番劇、本当に欲しいものはあげられない。
アラタはこのやり取りに溜まらない虚しさの様なものを感じているのです。
と、そこで、真珠はいきなりズバッとこんなことを尋ねてきました。
ボクの証言、アラタはどう思った?信じてくれた?
法廷で見せていた儚げで消え入りそうな印象とは全く違う、怪物めいた視線を投げかけてくる真珠。
そんな彼女の視線に注意を払いながら……アラタは大げさにおどけてみせつつ、新しい「事実」がいっぱいでさぁ、ちょっとまだ混乱してんだ、整理がつかないっつーか!と彼女が求めているはずがない返答を返します。
不満げな顔をする真珠ですが、これでアラタの返答が終わったわけではありません。
けど、
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真珠の親父については丸ごと信じるぜ、俺。
……これはアラタの本音です。
アラタは本来の相談所の仕事で、こう言う類の「相談」があった場合、とにかく頭から信じることに決めています。
それは、おそらく間違いなく連続殺人犯である彼女が相手でも変わりません!
駆け引きなどなく、とにかく思いの丈をぶちまけるアラタ。
もし俺がそこにいたら、ぶち殺してやったのにな……!!
その言葉は嘘などではない、本当にしでかすかもしれない本気に満ちています。
真珠もその言葉に偽りがないことを察するのですが、やはり彼女の瞳は輝かないのです。
それもおそらくアラタが真珠の待っている「誰か」ではないからなのでしょう。
なぜ自分が「誰か」になれないのか。
顔、声、キャラ……?考えたところでわかるはずがありません。
アラタがそんなことを考えていますと、今度は真珠からアラタの父はどんな人だったのかと尋ねてきます。
アラタが本当に聞きたいのは遺体の隠し場所なわけで、そこからはどんどん遠ざかってしまっている気がするのですが、それでもここで嫌がってへそを曲げられて困ります。
そこでアラタは、父の話を始めました。
いわゆるトラックの運ちゃんでね、ジンちゃんも運ちゃんでそれに憧れてなったらしいよ。
母ちゃんにゾッコンでね、若い、綺麗だ、っていっつも持ち上げてたよ。
俺がいつか婆になるだろって言ったら一発食らわされてさ、「アラタよ、母ちゃんが永遠に若いままでいるのは簡単なんだぞ、死ぬかどうかして永遠に姿を消せば若いまんまだ」……ってさ。
何言ってんだこのおっさんって思ったけど、小3の時事故で死んだ親父は、俺ん中でマジで若いまんまなんだな。
そんな話をしているうちに、子供の頃父と過ごした楽しかったときの思い出がフラッシュバックします。
なんだかノスタルジックな気分になり、気持ちが高揚してきたせいでしょうか。
もう一つ、父の離していたある言葉を思い出し、話し始めました。
顔に似合わずロマンチストでね、親父。
女房ってのは皆もともと天女で、本当は止まった時間の中で永遠に若くいられるんだってさ。
それが結婚する時時間を動かして、旦那と一緒に歳を取ってくれるんだって。
……ありがとうな。
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真珠も、俺と一緒に歳をとってくれるんだろ?
止まった時間を、動かして……さ。
その言葉を聞いた真珠は、明らかに今までとは表情を浮かべました。
まさか、クサかったけど、父直伝の口説き文句が上手く刺さったのか?
そんな軽い気持ちで真珠の顔を見つめるアラタ。
ところがその言葉は、想像以上に真珠の心を大きく動かしていたのです。
……した?
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時間を動かすって……いつアラタに話した?
いや、今のは俺の親父の話だから、と少し戸惑ってそう返すアラタ。
予想外の反応を、予想外の部分に対して示したことに驚いたわけですが、どうやら真珠はそれ以上にアラタのその言葉に驚いていたようなのです。
先ほどまでとは違う色のこもったまなざしで、アラタを見つめ……
そして、こう言ったのです。
ボクが、待ってたのは……
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アラタだ。


というわけで、真珠の待っていた「誰か」が、アラタだったと突然言い出した今巻。
今まではアラタにある程度は心を許していたものの、根本の部分では決して踏み込んでこなかった真珠。
おそらく彼女が求めている何かを手に入れるための手段の一つとして見ていたのでしょうが……今回のこの反応から、真珠の新たに対する考えが変わっていくとみていいでしょう!
実際物語はここから違った展開を迎えていくことになります。
アラタに対する見方を変えた彼女から告げられる新たな証言。
その証言をきっかけに、アラタのもとに尋ねてくることになる新たな人物。
そこからアラタの周囲の人物の位置も変わっていって……!?
そしてアラタと真珠の奇妙な駆け引きと結婚生活とともに、裁判も進んでいきます。
底知れない真珠の魔性は、その裁判も利用し、一層事態を混迷させていき……!!
新たな展開を迎え、物語はさらに予測不可能に!
真珠の言葉はどれだけ真実を含んでいるのか、その殺人も本当にすべて彼女の仕業なのか、なぜ彼女を凶行に走らせたのか?
そんな謎に迫りつつある本作、今後もまたまだ予測不可能な展開が続きそう!
これからも目が離せませんね!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!