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今回紹介いたしますのはこちら。

「不安の種*(アスタリスク)」第3巻 中山昌亮先生 

秋田書店さんのチャンピオンREDコミックスより刊行です。




さて、世にひそかに息づく不安の種を描いていく本作。
果たして今巻ではどんな恐怖が描かれるのでしょうか……?



子供たちが、ある人物のことについて話していました。
それは、朝、子供たちが通る通学路の横断歩道に立っているおじいさんの話です。
交通安全のおじいさん、として子供たちの間では当たり前のように周知されているその人、いつもニコニコとして優しそうな印象を与えます。
ですが子供たちの一人が、こんな疑問を投げかけるのです。
あのおじいさんって、何してる人かな?と。
何をしている、とは、仕事が何かと言うことでしょうか。
それなりの年齢に見えるおじいさん、もう仕事は引退していてもおかしくはない気がしますが、その子供が疑問に思ったのはそこではないのです。
仕事というか、あの人は本当に交通安全の人なのか?
だってあの人、立ってるだけじゃないか。
「おはよう」も「気を付けて」も言うわけでもなく、ただにこにこしながらあの横断歩道のところに立っているだけだ。
……確かにそういわれてみれば、おじいさんの声を聞いたことがありません。
子供たちの間で勝手に「交通安全のおじいさん」と呼んでいるだけで、実際に交通安全の人ではないのではないか?
そんな疑問が、子供たちの間に広がり始めました。
するとその時、また別の子供がこんなことを言い出しました。
あたしその話知ってる。
あのおじいさんって、見える人と見えない人がいるらしいの。
……あまりにもステレオタイプな「怖いうわさ」、流石に素直には信じられないでしょう。
驚かせようとしてるんだろう、やめろよ、と笑う子供たちなのですが、その噂を教えてくれた子は、嘘だと思うならクラスのみんなに聞いてみればいい、と返してきます。
その自信から、少なくとも彼女が本当にささやかれている噂を教えてくれた、ということは間違いなさそう……
背筋に寒気を感じ始める子供達なのですが、とどめとばかりにその子はこう続けたのです。
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あのおじいさん、横顔とか後ろ姿って見たことある?
あのおじいさんって、正面顔しか見えないんだよ。
どんな角度から見ても、真正面の姿しか見せないんだよ。

聞いたその時は、「何言ってんだ?」という程度にしか思わなかったその言葉。
ですが翌朝、彼らは思い知ることになるのです。
おじいさんは確かに、正面の姿しか見せませんでした。
どんな角度から見ても、自分たちを常に正面から見据えている……!
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そのことに気が付くと、今までは何とも思っていなかった、むしろ優しそうだと好印象すら覚えていたおじいさんが……恐ろしく感じられて仕方がなくなってしまいます。
遠くからその姿を見ても、こちらを真正面から見ているおじいさん。
歩くにつれ徐々に距離が近づき、おじいさんの前を通り過ぎるときも、真正面から見ています。
いつものように、ですがいつにない不安を掻き立てながら、おじいさんの目の前を通り過ぎ……
そして、恐る恐る、おじいさんの方を振り返ります。
そこには
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すぐ目の前で、真正面から少年を見つめているおじいさんがいて……!!
もはやその笑顔に、優しげな雰囲気を感じることはできません。
その子は、次の日から通学路を変えることにしたのでした……




というわけで、あまりにも不気味な「優しそうなおじいさん」の恐ろしさを描いたお話が収録された今巻。

というわけで、今巻でもにじみ出る恐怖の枝葉を描いていく本作。
この他にも様々な不安の種が町中にばらまかれています。
最初は笑い話かと思っていた、「E.T」に追いかけられたという体験談の本当かもしれない真相。
臨死体験をしたとある男が語ったという、死後の世界の途方もない恐ろしさ。
街中を歩いていたはずが、突然見知らぬ場所に立っていた怪現象。
ある廃マンションにまつわるいくつかの奇妙な出来事。
少年しか見えていない不可思議な存在「ゴロゴロ」。
どんどんと増加していく恐怖がこれでもかと詰め込まれているのです!!
今巻でも「不安の種」シリーズには欠かせない、生理的嫌悪感を催すクリーチャー、得体のしれない「何か」は今回もばっちり健在!
様々な角度から芽生える不安の種、今巻もたっぷりと楽しめます!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!