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今回紹介いたしますのはこちら。

「天国大魔境」第5巻 石黒正数先生 

講談社さんのアフタヌーンKCより刊行です。


さて、それぞれの目的のために旅を続けてきたマルとキルコ。
幾度もの危機を乗り越え、ようやく目的の一つである、キル光線に記されたマークと同じ印が掲げられた施設にたどり着いたのですが……



2F、高原学園。
雑居ビルのテナントを示す看板に、その名前とともに例のマークがしるされていました。
改めて確認してみても、キル光線のマークとそのマークはまったく同じ。
今まで求め続けてきた「天国」への手がかりですが……流石に目の前にすると、緊張が高まってきます。
とはいえこのままぼーっと立っているわけにもいきません。
キルコが一緒に入って来てくれることを確認し、中に入って行くのです!!

いざ中に入ってみますと……蛻の殻、と言うのがぴったりくる、閑散とした印象の内部でした。
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窓が割れていたり、何かをひっくり返したりされた後はあるものの、あれていると言うほどの印象ではなく。
いろいろと見て回っていると、程なくしてあのマークのついた段ボールを発見することができました。
ここが探していた場所である事は間違いありません。
ですが、ここが「天国」かと言われれば……ただのビルだとしか言えません。
大災害より後に誰かが寝泊まりしていた形跡がありますし、パソコンなどの機械もこじ開けられてますし、重要なものは全て持ち去られた後、と言う事なのでしょうか?
それでも探索を続けていますと、キルコは段ボールの隙間に奇妙な紙片を見つけます。
丸と棒だけで書かれた棒人間が数人と、試し書きの様なぐちゃぐちゃがいくつかしてある落書き、か何かでしょうか。
そのいたずら書きを裏返してみますと、
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学校法人高原学園、のパンフレットの様なものであることがわかります。
なんだかいろいろと書いてありますが……何と言いますか、親がいて家があっても時々来ることができる孤児院と、塾を合わせたようなモノ、であるような……?
災害前の感覚はキルコにはよくわからないものなのですが、そのパンフレットで特に引っかかったのは「人間が自然であることは我慢をしていない状態だ」と言う部分でした。
今の魔境の様な時代からすれば、天国の様な文明に彩られた時代。
その時代に、我慢なんてあったのだろうか?
そんな考えもよぎったものの、すぐにあったに決まっている、と思い直しました。
人が何人かいれば、我慢は絶対に生まれてしまうのですから。
その時キルコの脳裏によぎったのは、過去に自分が我慢を強いられたときの思い出。
それを思い出すと、自然とキルコの目から涙がこぼれてしまうのです。
と、その時、上の階を探索していたマルの、キルコを呼ぶ声が聞こえてきました。
上に行ってみますと、どうやら3階も高原学園だった様子。
3階の高原学園は、個室型のネットカフェの様な、簡易的な壁で区切られた多くの部屋が並んでいる感じの内装になっています。
マルに導かれるまま、その個室の内に一つに入って行きますと……
例のマークに似た鳥のマークが描かれています。
ですが似ているものの違うマークで、キルコはおそらく崩壊後にここに住みついた連中が、礼のマークをまねて描いた物だろう、と分析しました。
となると、この階にはもう気になるようなモノはない感じ。
マルは、何となくだけどここはオレの目的地ではない気がする、とつぶやきます。
銃についていたマークを追っているときにここを見つけたから興奮したものの、そもそも「天国」と「銃」に何の関係もない可能性だってある、と……
このままマークを折っていっても、銃の工場か何かにたどり着くだけじゃないか?とぼやくのですが、そんなマルにキルコは先ほどのパンフレットを差し出しました。
同時に、「塾」ってわかる?と丸に尋ねるキルコ。
その単語を聞くと、丸の脳裏に数人の同じ年のころの男女とともに、ちょっと大人のおねえさんに授業を受けていたものの、マルはそのおねえさん先生に見惚れていて怒られてしまう……と言う記憶がよみがえってきました。
その思い出に、思わずにやついてしまうマル。
それがマルの初恋の思い出なのだそうですが、キルコはそれを聞いてからかってきました。
そこで教えてくれてたのが年上のお姉さんなんだな?
「マルくん、ちゃんと聞いてた?もー、あとで先生の所に来なさぁい!」ってやってたんだろ!
小芝居付きでそう言うと、マルは真っ赤になって、なんdねしってんだ!と墓穴を掘るような声を上げてしまうのでした。
閑話休題、高原学園の話に戻ります。
大災害前のパンフレットで、高原学園は工場ではなく塾みたいなもので、その案内の中で世の中のことを「我慢地獄」と書いている。
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地獄の反対は……天国!
高原学園は場所的に「東京上野分室」と思われるここを含めた18の分室と、茨城と奈良にある2つの施設が存在していたようで。
その2つの施設を当たってみる価値はあるだろう、とキルコは考えるのです!

……東京は上野から、奈良か茨城……
茨城の方が大分近いですが、それにしても徒歩で向かうには遠すぎます。
こんなことならあの情報屋のジューイチの車を取っちまえばよかった、とぼやくキルコ。
そもそも運転できるのか、と聞いてみれば、電動カートの整備をやっていたから、すこし練習すれば運転できる、と自信をのぞかせるのですが……
問題は、動く車と走れる道が滅多にないってことだな、などと言いながら高原学園を後にする二人。
ですがその時、2人は気がついていなかったのです。
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そんな二人の様子をうかがうように、物陰からジューイチが見つめていることに……!!




と言うわけで、新たな旅の目的が定まった今巻。
外れかと思われた高原学園ですが、まだ外れだと決めつけるには早い様子。
二人の天国を目指す旅はまだ続くようです。
その道のりはあまりにも遠く、あまりに危険ですが……
そんな時に姿を現すジューイチ、彼の登場が二人にどんな影響をもたらすのか……?
この後物語は意外な方向へと進んでいくのです!
それだけでなく、石黒先生ならしれっと流されたパンフレットの裏の落書きなども伏線にしている可能性もありますし、大写しにしたパンフレットの表面にも何か隠されているかも……
様々な一つ一つのパーツにも注目したいところです!!!

そんなキルコとマルのパートとともに進行していくトキオたち施設のパートも見逃せません。
施設では青島と言う女性が副園長の座についたわけですが、それによって生まれた変化、そしてその目的などが明かされていきます。
さらに新キャラクターの登場などもあり、施設側の物語でも謎が明かされていく一方でまた新たな謎が追加され……

どちらのパートも見ごたえ満天!
徐々にクライマックスが近づいてくる気配も見え、今後ますます目が離せません!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!