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今回紹介いたしますのはこちら。

「悪役令嬢転生おじさん」第1巻 上山道郎先生 

少年画報社さんのYKコミックスより刊行です。


上山先生は90年に小学館さんの漫画賞を受賞し、デビューした漫画家さんです。
デビュー後はコロコロコミックを主戦場とされておりまして、ホビー原作の「機獣新世紀ZOIDS」などを連載。
その後06年ごろから少年画報社さんに主戦場を移しまして、先生の代表作となる「ツマヌダ格闘街」などの作品を発表されました。
弟さんの上山徹郎先生も漫画家でして、兄弟で同時に同じ雑誌に連載したこともございます!

そんな上山先生の最新作となる本作は、大ベテランの漫画家さんとしては珍しい、最近はやりの「Webデバズった作品が連載化」した作品です。
そしてそのタイトル通り、同じく最近はやっている異世界転生もの、その異世界転生ものの中でもさらに最近はやっている気がする悪役令嬢モノ!!
ですが、悪役令嬢モノの王道であるバッドエンドを回避するためにアレコレすると言う展開ではないようで……?



グレイス・オーヴェルヌは、おーヴェルヌ侯爵家の令嬢です。
馬から落ちたはずみで、彼女はある事に気が付きました。
彼女の住むこの世界は、「乙女ゲーム」の中の世界である、と。
何故それに気付けたかと言うと……この落馬の際に思いだしたある事実のおかげなのです。
それは……トラックに轢かれそうになった子供を助けようとした自分、そしてその目前に迫って来るトラック、と言う記憶。
そこから記憶がぶっつりと切れ、気がついたら子の姿になっていた、と言う事実です。
これはいわゆる、「異世界転生」と言うやつだな!
グレイスこと、52歳公務員・屯田林憲三郎は、そう確信したのです!

異世界転生というものがあったこと、それに自分が巻き込まれてしまったことは、まあいいとしまして。
憲三郎、いやグレイスがどうしても気になるのが、頭髪も薄くなってきた伯父さんの自分が何故乙女ゲーム世界の公爵令嬢という、あまりにミスマッチな転生を果たしてしまったのかと言う事。
憲三郎はそれなりのオタクだった為、異世界転生云々はわかるものの、流石に乙女ゲームに関しては詳しくありません。
自分は公爵令嬢としてどう生きるべきなのか?
そんなことを考えながら日々を過ごしていたのですが……その時、年若いメイド見習の少女、ジョゼットがグレイスの部屋にやってきまして、着替えを持って来てくれました。
ありがとう、そこに置いておいて、と彼女にお礼を言いますと、ジョゼットは大層驚いて去って行きました。
それもそのはず、グレイスとして生きてきた記憶をたどりますと、相当きつい性格だったようなのです。
使用人に対して叱ることはあっても、礼を言ったことなど一度もないほどに!
そんな彼女の性格から考えると……このグレイスと言うキャラクターは、この乙女ゲームの世界に置いての「悪役令嬢」と言うわけです!

思い起こせば、権三郎が事故に巻き込まれるひと月ほど前、この世界が舞台となっていると思しき乙女ゲーム、「マジカル学園ラブ&ビースト」をたまたま目撃していたことがありました。
それは、ひときわいいテレビのあるリビングで権三郎の娘がこぼゲームをプレイしていたと言うしーんです。
その記憶をたどれば、確かにこのグレイスらしきキャラもいて、娘もいろいろと邪魔してくるキャラだと言っていたような。
そしてそうすると、ゲームのメイン舞台となる「王立魔法学園」で、絶対に遭わなければならない人物と出会うことになるはずです。
校庭でそれとなく待っていますと、やがてその人物はやってきました。
希望に満ちた表情で校門をくぐり、次の瞬間盛大に転ぶ……
ユーザーに感情移入させるドジっ子であり、このゲームの世界の「主人公」である、アンナ・ドールが!
ゲームの中では、学園の初日を迎えるアンナとグレイスが出会います。
そして、貴族が通うこの学園に、平民の身分で入学したアンナに対し、グレイスは身分の違いについての罵倒をならべ、さらに家族のことまで侮辱。
アンナは悔し涙を流し、魔法の勉強を頑張って見返してやろうと決意する、と言うイベントが発生するのです。
権三郎としては……とりあえず、自分がグレイスになっている以上、その世界の役割を果たすべきだと考えました。
そこで、早速アンナの元に足を運び、話しかけるのです。
あなた、平民の身分でありながら個々の入試を首席で合格なさったそうですわね?
この学園は本来、貴族の生まれでなければ入れない場所、と言うのはご存知なのかしら?
分かっていてここにいると言うことは、貴女さぞかし……
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見識のある親御さんに大切に育てられたのでしょうね……!
本来ここで侮辱しなければならない所なのですが、思わずここで頑張っている子に対する親の様な目線が出てしまいました。
その言葉を聞いたアンナは、貴族の方にそんなことを言っていただけるなんて、と感涙!
遠巻きにその様子を見ていた生徒たちには、グレイスがよほどきついことを言って泣かせたんだろう、平民めいい気味だ、などと囁き合っております。
なんだかいたたまれなくなった権三郎、慌ててアンナの手を引き、人目の少ない場所へ連れて行くのでした。

落ち着いたところで、アンナに話を聞きます。
自分の家は裕福ではないものの、自分に魔法の素質がある事を知ると、両親が頑張ってお金を貯めてくれて学ぶ機会を作ってくれた、そんな両親を褒めてくれたのが本当にうれしかった、と言うアンナ。
そして一生懸命勉強していいお仕事について、家族にもっと裕福な暮らしをして欲しい、と夢を語るのです。
話を聞いた権三郎はすっかり親目線になってしまい、アンナが自分の素質を伸ばし、アンナ自身が幸福な人生を送る事こそが、両親が本当に望んでいることだ、と諭しますと……
アンナは再び感極まって泣いてしまうのでした。
と、そこに一人の男がやってきます。
そこに言うのはグレイスかい、まさか入学式の日にもうだれかを泣かせているのかい?
そう語りかけてきたその男は……このゲームの効力大将の一人であり、この段階ではグレイスの婚約者である第一王子。
名前は……
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出てきません。
どうしても名前が思い出せず、とりあえずいやですわ殿下、この方とは今お友達になったばかりですのよ、とお茶を濁しておりますと、アンナが率先して自己紹介を始めてくれました。
彼女の名前を聞くと、王子もアンナが平民のみで主席合格したことを知っておりまして、おめでとう、と祝福なんかを始めて……
名乗れよ王子!と突っ込みたいところをぐっとこらえ、頭を働かせました。
グレイスの知識によれば、身分の高いものは自分から名乗らないのが社交界の暗黙のマナーとのこと。
ですがこの流れで自分があんなに応じを紹介しないのは不自然なわけで……
考えた結果、権三郎は名前を名乗っていなかった、とまず自分で名乗り、そして
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こちらの方だけど、当ててごらんなさい、ヒントはこの国の第一王子、とクイズ形式を取ることにより、アンナからヴィルジール王太子殿下、と言う名前を引き出すことに成功したのでした!
とりあえずの窮地を乗り越えた権三郎、そう言えばとこの状況にも覚えがある事に気が付きます。
グレイスに侮辱されて、中庭で一人鳴いていたアンナが、ヴィルジール王子に慰められる……と言う、
王子ルートの最初のフラグが立つイベント……に、近いものだったことに!
一応アンナにヴィルジールの印象を聞きますと、素敵な方でしたね、と言う返答が返ってきます。
どうやらフラグはたったようだ、と安堵する権三郎。
なのですが、アンナはむしろ、
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殿下に対して私のことをお友達と紹介していただいて、とっても嬉しかったです!これから、グレイス様とお呼びしてもよろしいでしょうか……?とグレイスにフラグを立てているような……!?
乙女ゲームってこういうので良かったっけ?と不安になりながらも、好きにお呼びあそばせ、と返す権三郎。
ともかくこうして、権三郎の悪役令嬢としての人生が始まるのでした……!



と言うわけで、悪役令嬢に転生したおじさんの奮闘を描く本作。
悪役令嬢転生系の作品としては珍しく、悪役令嬢にありがちな破滅を避けるために行動する……と言うわけではなく、悪役令嬢としての務めを果たそうとしながらも、もともとの穏やかな性格が災い(功を奏)して、なんだか平和な感じになってしまう、と言う流れのお話になっております。
権三郎は公務員生活30年超の経験を活かして悪役令嬢生活を送って行くわけですが、目下の権三郎の目的は、主人公であるアンナのフラグを管理し、きちんとしたエンディングに向かわせると言うもの。
その為には攻略対象の男子たちの動向や、誰のルートに入りそうかなどの見極めを行わなければならないのですが、その中で権三郎の根のやさしさがいろいろとお話の本筋からそれる作用をもたらしてしまうわけです!
ちなみに権三郎のグレイスとしての立ち回りは、異世界転生者の持つ特殊能力的なアレで、普段通りの自分の行動をしようとすると、自動的に伯爵令嬢にふさわしい動きに変換される仕組みになっておりまして……
権三郎が自力でですわよ口調や雅な動きをしているわけではないのでご安心(?)下さい!!

出落ちになりかねない本作ですが、きちんと進行していく物語や、個性豊かなキャラクターたち、上山先生らしいどこかのどかな雰囲気などなど、様々な要素が盛り込まれて飽きさせない構造になっております!
今後のグレイスやアンナの動向に加え、転生生活の行く末なども含め、注目必至ですよ!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!