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今回紹介いたしますのはこちら。

「横須賀こずえ」第3巻 小田扉先生 

小学館さんのビッグコミックスより刊行です。


さて、小学4年生程度の知能を持つ犬、こずえと彼女を取り巻く人々の日常を描いていく本作。
こずえの棲む横須賀には、不思議な出来事がたくさん起こります。
果たして今巻で巻き起こる事とは……?



鬱蒼と生い茂ったたくさんの葉っぱ。
その中央で、1人の女性が何やら思い悩んでいます。
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落ち着け、とにかく全部むしって捨てて。
燃えるゴミでいいのかな、ゴミ袋たくさんいるわね。
コンビニに……
そう言って外に出て行こうとする女性。
ですがその時、彼女の足首にシュルルとその植物のものと思われるツタが絡んできて……!!

話は少し前に遡ります。
和泉先生は、上の空で授業を行っていました。
初心者でも簡単で、成長が早いって聞いてたのに、肥料が足りないのかな……?
気もそぞろのまま授業は終わり、向かったのは理科室。
そこでは自身が顧問を務めるバイオ部が活動をしていたのですが、彼女がここに来たのはバイオ部の活動を見に来たわけではないのです。
理科室に園芸の本があったことを思い出し、先人の知恵を借りることにしたのでした。
先生が園芸の本を探しに来たことを聞いた部員たち、園芸やるんですね、と尋ねてみます。
すると家のベランダでゴーヤを育ててるの、始めたばかりよ、と答えてくれる和泉先生。
少し前に流行った、緑のカーテンと言うやつをやってみようと思ったのですが、どうにもうまくいかないと言うことなのでした。

肥料を足し、今度こそ行けるはず。
夏も引きこもる生活かもしれないんだから頼むわよ、と声をかけ、床に就きました。
その日は嵐のような大雨。
稲光が閃き、轟音が轟きます。
あまりに大きな音に驚いた先生、もしかしたらこのマンションに落ちたのか、と外を見るのですが、幸い火の手などは上がっていなさそう。
……なのですが、実はその雷、ベランダのゴーヤに落ちていまして……

翌朝、ゴーヤはびっくりするほど伸びていました。
ですがなぜかそのツルは、ネットの貼っている方よりも、部屋側に伸びているような……
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ネットの貼り方の問題なのかな、と緑のカーテンの政策経験があると言う生徒にアドバイスを求めると、明日土曜日だから来てみてくれるとのこと。

そして先生が家に帰りますと、なぜか閉めたはずの窓が開いています。
閉め忘れかな、と呟いて窓際に行くと、ゴーヤの敦賀窓の隙間から入り込んでいて……!!
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まさかゴーヤが窓を開けて!?
驚きを隠せ無い先生ですが、いっぱい晩酌をすると良い気分になり、そんな馬鹿なと笑い飛ばしてしまいました。
とはいえ気にはなりますから、いったん処分してやり直そうかな、朝顔の方が良いかも、などと呟いて、ベッドに入るのです。

翌日。
例の生徒が出かける前に先生に電話を掛けるのですが、なぜか繋がりません。
そのころ先生は……冒頭のような目に遭っていたのでした。
大声を出しても分厚い緑のカーテンで届かず、携帯の電波もシャットアウトしているようです。
途方に暮れていた先生ですが、こんな時でもお腹は減ります。
お腹すいた、とつぶやくと……
するすると目の前にゴーヤが降りてきました。
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このまま食えっていうの?とこの不思議さは置いておいて、憎まれ口で抵抗を試みる先生。
するとゴーヤ、器用に包丁とフライパンを使い、ゴーヤ炒めを作って見せたのです。
これ、夢じゃないわよね?
そう呟くのも無理はありませんが、やがて目の前にゴーヤ炒めが出てきまして、それを食べるとおいしかったのですからもう現実と認めざるを得ません。
そのまましばらく時間が経っても、ゴーヤは特に何かしてくる様子はなく。
どうやら自分に危害を加える気はない様だ、月曜になれば、出勤してこない自分をだれか心配して身に来てくれるはず、二日の辛抱だ。
そう思いなおし、開き直ってくつろぎだす先生。
……とはいっても、周りにはもう葉っぱしかない状態です。
暇だな、と呟いてしまうのですが、その瞬間でした。
いきなり地面が蠢き、先生を跳ね上げたのです!!
……落下した先生はゴーヤの葉っぱに優しく受け止められ、またぼよんと宙を舞い……
どうやらゴーヤ、トランポリン的なアクティビティで先生を楽しませてくれるようです!
……当面の命の危険はなさそうですが……
このまま先生はこの状況を甘んじて受け入れるのでしょうか。
なにより、誰かが助けに来たとして、ゴーヤは素直に開放するのでしょうか……!!




と言うわけで、緑の迷宮(?)に囚われた先生のお話が前後編で繰り広げられるエピソードを収録した今巻。
ホラーなのかコメディ七日、その両方なのか微妙なお話となるこのお話、後編も見どころいっぱい!
ゴーヤと先生の奇妙な関係の結末、その目でご確認ください!

勿論この他にも様々なお話が用意されております。
こずえが夜家を抜け出し、お隣のゴメスと街を歩くお話。
人語をだいたい理解できると豪語するこずえが、お隣に忍び込んだ泥棒と出くわすお話。
ある少年がこずえを朝顔と信じ込んで、観察日記を描こうとするお話。
この世界が自分の世界ではなく、そこを超えれば自分の棲むべき世界に行ける「壁」を探す少年のお話……
さらに注目なのが、こずえの名前がつくきっかけを作ったある人物の様が描かれるお話でしょう!!
そのちょっと不思議な(?)由来、小田先生らしいファニーな魅力にあふれております!
今巻も少し不思議でたっぷり楽しい、横須賀の世界が堪能できますよ!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!