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今回紹介いたしますのはこちら。

「裏バイト:逃亡禁止」第2巻 田口翔太郎先生 

小学館さんの裏少年サンデーコミックスより刊行です。


さて、命の保証と引き換えに、多額の報酬が与えられる裏バイトに挑み続けるユメと和美。
バイト先で毎回死の危険にさらされる二人ですが、持ち前のバイタリティと、和美の持つ「危険なものの匂いを感じ取る能力」で掻い潜って行くのです!
そして今回も二人は、金を手に入れるため、危険な裏バイトに挑むのでした!



年の瀬も迫るころ、二人はとある島の神社で働いていました。
巫女姿で神社の仕事のお手伝い、なのですが、今回このバイトに来ているのは二人だけではありません。
未帆と真琴と言う二人組の女性と一緒にこの仕事をすることになったのです。
未帆はちょっと天然気味ですが、慣れない巫女衣装で寒さに震えるユメたちにカイロを分けてくれるなど、優しいおっとりとした印象の女性。
真琴の方はそんな美帆のツッコミ役に回る、活発そうな女性です。
仕事仲間とも仲良くやっていけそうなこのバイト、幸先は悪くないようですが……
やはり裏バイトを募集するだけあり、奇妙な点も目に付くのです。
まずこの島、一本50万円もするようなとんでもない額の破魔矢などが当たり前に売られています。
しかもその恐ろしい値段の縁起物が、飛ぶように売れて行くではありませんか。
そしてそうやって買っていく参拝客は、
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御賽銭にも札どころか「札束」をポンポンと放り投げて行って……!!
あまりに浮世とかけ離れた金銭感覚に驚愕するばかりの一同。
一仕事終えた後、神主からその理由を聞かされました。
この島に住む人々は、大手企業の社長なんかをはじめとした大金持ちぞろい。
そして彼らは、今の自分たちがあるの「ここのご利益」のおかげだと言っているそうで、これくらいのお返しは当然だとお金をもりもり投資しているのだとか。
素直に信じると、それはつまり……この神社の御利益は本物だ、と言う事。
そう言えばこの神社、普通の神社にはあまり見ないものにみんなが群がっていました。
それは慶大のど真ん中にある、井戸、です。
なんでもその井戸には昔から「福ノ神」が住んでいると言われているのだそうで、参拝者たちは皆こぞって井戸の中を覗き込んでいくのです。
皆様も後で覗いてみてはいかがですか、と神主は言うのですが……

その後の事。
未帆が休憩中の皆にお茶とお菓子を持って来てくれました。
言ってくれれば手伝ったのに、と言う和美ですが、未帆は私が食べたかったんだからいいのよ、と言うのです。
さらに明日の分と言ってまたカイロも渡してくれる美帆、
気が利く美帆に感服しきりのユメ達なのですが、未帆の気配りはなおとどまることを知りません。
さらにそこに神社の人がやってきて、手の空いてる人がいたら買い出しに行ってくれないか、と声をかけてきたところに、すっと前に出て引き受けてくれまして……
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あのユメをして、すっごい良い子、と評してしまう未帆。
真琴はそんな美帆を心配そうに見送るのでした。

その夜、神社に大勢の島民が集まって新年会を催していました。
ユメたちのいる部屋まで聞こえてくるほどにぎやかなその新年会の声を耳にしながら、おもむろに真琴が二人にこんなことを訪ねてきました。
二人はどうしてこの仕事をしようと思ったの?
だってどう考えても怪しいでしょ、日給……「百万円」なんて。
そう、この仕事、今までそれらしいことがないにもかかわらず、とんでもない超高給。
ユメと和美は、「なにかある」とわかっていてやってきている、いわゆる訳ありなわけで、その事を素直に教えますと、真琴は自分たちもそうだと答えてくれました。
と言っても真琴自体はそうでもないのですが、問題は未帆の方なのです。
真琴によれば、先日何年も前に失踪していた未帆の父親が、大借金を抱えて帰ってきたのだとのこと。
家族だから協力して返していこう、と都合良いことを言ってきたらしい彼女の父親を、真琴はよっぽど殴ってやろうかと思ったのですが、未帆は協力すると答えたと言うのです。
何年も家を空けて帰ってくるのはすごく勇気がいることだから、と。
理由にもなっていない理由で、借金返済のために怪しいバイトに身を投入した未帆。
真琴はそんな未帆が心配でならないようで……
未帆は良い子だけどその分危なっかしくて、何か危険なことがあったら助けてやってください。
もちろん私も何かあったら二人の味方するし……お願いします。
そう言って深々と頭を下げてくる真琴。
そんなことを改めて頼まれなくても、あんな良い子をただ見捨てるなんてするはずがないでしょう。
……少なくとも、和美は。
ですがその未帆の姿が先ほどから見えないではありませんか。
真琴によれば、新年会の手伝いに駆り出された、とのこと。
アルバイトとは関係ないんだから断れ、と真琴は言ったそうなのですが……未帆はいつもの調子で、にっこりと受け入れたのでしょう。

そしてその新年会は、まさに盛り上がりのクライマックスを迎えていました。
ひときわ大きくなる談笑。
私ももう一杯!などと、その机の上で勧められるのは
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今年の巫女の……未帆の、血液でした。
惨殺され、吊るされ、滴り落ちた血を大きな器に溜められ……
島民たちは、その血を味わい、今年の巫女は絶品だ、これなら福ノ神もお喜びになろう、と笑いあっているのです!

……未帆を心配する二人。
盛り上がる新年会。
そんな様子とは正反対に、しんと静まり返った境内の井戸のあたりに、何かの影が見え始めます。
奇妙な音とともに現れるそれ。
それは、本坪鈴のような音とともに、
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不気味な笑顔を浮かべながら踊るように……!!



と言うわけで、巫女バイトでの恐怖を描くエピソードを収録した今巻。
魅力的な新キャラが登場したかと思いきや、早くも犠牲となってしまったわけですが……
やはり「良い子」ではこの裏バイトを生き残ることはできないと言う事なのでしょうか。
島民の邪なる欲望、「福ノ神」の真実、そして真琴。
今回のバイトではユメと和美はどちらかと言うと脇役で、その三者を中心に物語が描かれることになるのです!!
早くも犠牲の出てしまったこのバイト、どのような結末を迎えるのか?
人ならざる存在の得体のしれない恐ろしさを感じさせられるこのエピソード、見逃せませんよ!!

そしてこのエピソードの他にも様々なバイトに挑むことになる二人。
「普通じゃない人形としばらく暮らす」ことになる人形供養のバイト。
雪山で奇妙な存在に襲われる「自然保護監視員」。
そして、ブックヤードツアーと言う奇妙な企画を催す「水族館スタッフ」……
どれもが本作ならではの不気味さ、得体のしれない恐ろしさ、そしてシュールなギャグを兼ね備えた読み応え満天のエピソードになっております
特に「水族館スタッフ」は必見でして、ユメや和美をさらにぶっちぎるとんでもない個性の持ち主が裏バイトに参戦します!
その強烈な個性は、本作のホラー要素と並ぶ目玉と言える、ユーモア成分をさらに増強してくれるのです!!
ついでに彼女きっかけで本作の物語の軸となる要素も少し見えてきまして……
いろいろな意味で物語に広がりが見えてくるのです!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!