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今回紹介いたしますのはこちら。

「また来てね シタミさん」第1巻 原作・青木潤太朗先生 漫画・隆原ヒロタ先生 

小学館さんのマガジンKCより刊行です。


隆原先生は15年にデビューした漫画家さんです。
16年よりそのデビュー作を連載化した「スーパーアルバイター伝説ムラサメ」を連載し、単行本が2巻まで刊行されました。

そんな田柏原先生が、「℃りけい」などの原作で知られる青木先生とタッグを組んで描くのが本作。
本作はとある二つのジャンルを合体させた、新しいジャンルの作品となっております!
気になるその内容はと言いますと……?




呼び出し時間はきっちり三分。
その後ようやく受話器はあげられ、「旅立ちのお手伝い、ミミミ観光」は電話に出てくれました。
受付のカザミが早速ご相談内容をうかがいます。
お客さんが相談してきたのは、「旅立ちパックプラン」。
ちょっと特別なプランとなるこちら、カザミはこの電話を紹介してくれた人が誰かを確認した後、出発希望日と旅行エリアの確認を行います。
そして審査後に連絡すると伝え、電話を切りますと……カザミは隣でカップラーメンをすすっていたシタミさんに声を掛けました。
やったねシタミさん、行ったことない場所だよ、次のターゲットは、島根県!!
その言葉を聞くと……シタミさんはきょとんとしながら、それどこ、と言おうとしました。
ですがそうはさせじと、カザミは食い気味に「それどこ?」入っちゃダメ、島根の皆さんが傷つくからね、と生死!
シジミにお蕎麦、松江城にあご野焼き蒲鉾、同県の衆度数も日本一だし、出雲大社もあるんだよ!と必死に魅力的なポイントを羅列するのです!
シタミさんは麺食いだから出雲そばがお勧めだよ、と言いながらクローゼットを開けるカザミ。
そのシタミさんは、魅力うんぬんよりまず「数」を確認します。
「4人」と手早く答えるカザミは、クローゼットから島根県の高校の制服を何着か取り出しまして……
その中から比較的目立たないであろう蜆女学院のセーラー服を手渡すのでした。

シタミさんは渡されたセーラー服に身を包み、現地にやってきました。
松江駅についた、とカザミに報告しますと、彼女から渡された周辺の地図を開きます。
ですがその地図、観光情報ばかりが乗っていまして、地図本来としての用途は今一つ……
眉をハの字にして地図とにらめっこをしていますと、そんな彼女に地元のお巡りさんが声をかけてきました。
そっちは学生さんがいかん方が良いよ、駅の北の方はちょっと、少し前からよくない連中がたむろしとるけん。
……最近酷い事件もあったよ、ちょうどあんたくらいの……可愛そうに……
気をつけます、ありがとうございます、と頭を下げるシタミさん。
お買い物?と言うおまわりさんの問いかけに、こう答えてその場を立ち去ります。
はい、ちょっと、下見……

カザミのマップを活用し、ひとしきり観光を楽しむシタミさん。
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しばらくすると、カザミから連絡が入り、島根県はどうか、と尋ねられました。
シタミさんは答えます。
シジミ。
ここの土地の人のシジミへの執着は異常、全てのシーンでシジミを推してくる、肝臓に良い街。
シジミを美味しく食べた後の殻はどこでも手に入る。
あとは橋が多い、酔っぱらって歩くと端から落ちたりして危ないかもしれない。
食べ物もおいしい、安いしお店の人が気前良くておまけしてくれるのがうれしい。
歩くと景色が面白い、古い歴史が今の暮らしに馴染んでて、素敵な街。
……そう答えたシタミさんですが、ちょうどその時そんな素敵な街の景観には合わない、悪そうな連中が「4人」たむろしているのを見かけます。
冷たい瞳で彼らを見つめるシタミさん。
そしてタイミングを計ったかのように、カザミも言いました。
こっちも裏がとれたよ。
殺された女の子は当時15歳、正義感の強い子で、ごみを散らかした四人に「お店の人が迷惑しています」って注意したのが原因。
遺体には乱暴された後もあったみたい。
4人は「国の偉い人の家族」ってやつで、警察も強く動けてない。
せっかく綺麗で素敵な街なのに、コントラストが凄いよねえ。
ちなみに今回の依頼主、その子の親友一同だよ。
今は全員が進学して、蜆女学院の生徒さん。
殺された子も本当なら、その制服着てたのかもね。
……シタミさんの眼光は、ひときわ鋭く、鈍く光ります。
そして二人は、声を合わせて言いました。
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旅行者心得。
帰る時は、来た時よりも美しく……

その夜。あの四人組の一人が、橋の上から立小便をしようとしていました。
すると肩をトントンと叩かれます。
振り返るとそこにいたのはシタミさん。
蜆女学院の制服であることに気付いた男、可愛いじゃんとにやつくのですが……
瞬間、シタミさんは男の服の背中側をつかみ、そのまま端から飛び降りるようにジャンプ!!
男はそのままエビぞりのような体勢になり、橋の擬宝珠に思い切りうなじのあたりを叩きつけられ……!!
何も知らない他の男たちは、何か変な声がしたかな、あいつがネコでも蹴飛ばしたんじゃないか、といやらしい笑いを浮かべていました。
そのうち1人が様子を見てくると外に出て行きまして、ほどなく彼らの集まっている部屋のドアが開くのですが……
戻ってきたのは、首元をシジミの殻で切り裂かれて絶命した先ほどの男と、シタミさんの二人でした!!
異常事態に気が付いた残り二人の男。
そのうち1人が立ち上がった瞬間、シタミさんは素早い動きで背後に回り……
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再びシジミの殻で首を切り裂きました!!
瞬く間に三人が殺されてしまった男たち。
生き残った最後の男は、どこからか銃を取り出してシタミさんを狙います!
ですが慌てて発砲したために命中はせず、そのままシタミさんは外に出て行ったしまいます。
仲間を殺された怒りに燃える男はあとを追いかけるものの、やがて見失います。
そこは……橋の上。
橋の外側にぶら下がるようにして身を隠していたシタミさんは、どこに行きやがったときょろきょろする男の背後から足をのばし……
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フランケンシュタイナーのように、川底へ思い切り男を叩きつけたのでした……!!
美しい景色を乱す汚れを片付けたシタミさん。
その目には、月明かりに照らされる松江城がうつります。
シタミさんは懐から、お昼に食べたお城もなかの包み紙を取り出し……
これ、ここからの景色なんだ、とその風景を目に焼き付けるのでした。

翌日、事件は明るみになり、警察が出動しました。
ですが4人の死体からはアルコールや薬物が検出されたこともあり、橋からの転落死や、喧嘩がエスカレートしての事故、ということに落ち着いてしまいそうです。
一応事件として捜査はされるようですが、なにせ凶器が出てこないのですからなかなか殺人事件にはなり得ません。
そこに残されているのは、この町ならどこで見つかってもそれほど不思議ではないシジミの殻だけ、なのです。

そのころすでに、シタミさんは帰りの新幹線に乗っていました。
さっそくホームで買った駅弁を開け、舌鼓を打とうとしていたところ……
ホームに蜆女学院の生徒数名が立っていて、泣きながら「ありがとうございました!」と書いたプラカードを掲げているのが見えたのです。
親友の遺影を胸に抱いて、シタミさんを見送る彼女達。
その光景を見て、シタミさんの胸にはある日の思い出がよみがえってきます。
それは、彼女とカザミがとある場所に閉じ込められて一時の思い出です。
カザミがシタミさんの手を取り、こう言ったのでした。
いつか旅行しようよ、いろんなところに遊びに行って、いろんなもの食べよう!
「女の子は食べ歩きをしてはしゃいだり景色を見るだけで笑ったりするもの」なんだって!
食べ歩きしたり、大きなお風呂入ったり、ネコ見たり、お土産買ったり。
きっとそういうこと、女の子はしていいんだよ!
旅行していいんだよ!
殺し屋の女の子でも!!





というわけで、シタミさんが全国各地を旅しながら、依頼を受けてターゲットを始末していく、旅行モノ×仕事人モノという新ジャンルを開拓していく本作。
シタミさんはお仕事の前にしっかりと下見をして、旅行を楽しむわけですが、それにはきちんと理由があるわけです。
これは今回の事件で使ったシジミの殻や橋からの落下に見せかけた殺し、そう言った殺し方の前準備!
殺人を事故死や病死にみせかけるために重要なのは殺意の物証である凶器が出ない事です。
そこで、その事件が起きた場所であってもおかしくない事、あってもおかしくないものを利用し、ついでに現地住民の皆さんに迷惑がかからない(名産品の食中毒で死んだ、など悪い噂になってしまうもの)事を考慮して始末するために必要なことなのです!
その名もご当地殺法……!!
今回の件でも、酔っ払いが橋から落ちるのはおかしくない事ですし、わざわざシジミの殻で首を掻っ切るなんてことなんて想像できませんから、しっかりこのご当地殺法がさく裂していたのです!
ちなみにもう一つ、シタミさんが下見をしっかりする理由があるのですが……
こちらは本作のストーリー上でのキモとなる要素!
だんだんと明かされていくカザミとシタミさんの過去と、その関係で現れる新キャラなどとともに本作のストーリーラインを作るものになっております!
全国各地を巡る旅行モノとして、シタミさんやカザミのキュートなアレコレを楽しむ漫画として、そして殺し屋家業ものとして、それぞれの味わいが楽しめる作品になっているわけです!!

ちなみにこの第1巻で登場する観光地は、島根、群馬、北海道、徳島、福岡。
メジャーどころから渋めの観光地までしっかり網羅し、次はどこかな?というお楽しみも用意されております!!
地方勢の皆様は、自分たちの地元に来る日をお楽しみに……!!




今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!