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今回紹介いたしますのはこちら。

「フランケン・ふらん Frantic」第3巻 木々津克久先生 

秋田書店さんのチャンピオンREDコミックスより刊行です。


さて、第2シーズンとなって早くも第3巻刊行となった本作。
メディカルホラー+コメディと言う独自の路線は、この第3巻も健在です。
今巻ではどんなお話が収録されているのかと言いますと……?



何かあったら戻ってくるのよ、とふらんに涙とともに送り出され、数名の元患者が屋敷から出て行きました。
退院とのことで、数名の元患者たちは一緒に外の世界で暮らすことにしたようですが……
その元患者たち、ほとんど全員、見た目が人間とかけ離れてしまっている、言い方は悪いですが、クリーチャーの様ないきものばかりです。
気のいい連中ばかりなのですが、何も知らない人が見れば怪物としか思われないでしょう。
そんな彼らが自立して生活していくのはかなり困難……なのですが、彼らには当てがあるようです。
通称「神隠しの湖」。
そのほとりに、隠れ住むのにぴったりの家がある、と言うのです。
噂を頼りにそこに行ってみますと、なるほどいいところ。
自然はユタカですし、人気はほとんどありませんし、湖のほとりに立っている家は少々古いですが少し補修すれば済むのに問題はなさそうでした。

一同は早速、持って来ていた飲み物でこれからの生活に乾杯します。
ここを俺達の楽園にしよう、俺は畑を作る、オレは見た目が人間っぽいから買い出しに行く……などと盛り上がっていたのですが、そこで気になるものを見つけました。
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湖の対岸に、微かな明かりが見えるのです。
キャンプ客かなにかでしょうか。
ここにも来る人間がいるのか、と特に何も警戒せずそれを眺めるのですが……

その向こう岸の人間たちも、対岸の……元患者たちの灯りに気付いていました。
彼らは日中にこの辺りを散策していたようで、あれは昼間見た廃墟のところだ、とつぶやきます。
ホームレスか何かが潜り込んでいるのか、ともかんがえたのですが、キャンプ客の一人はこんなことを言いだします。
この湖には伝説があるんだ。
この湖にはダムが作られたときに沈んだ村が眠っている、特殊な村だ。
その村には各戸に座敷牢があって、いつもうめき声がしていた。
その村は「神隠しの行き先」。
無用なもの、邪魔なもの、病人、問題のある人間、そんな連中が行きつく先だったらしい。
消えてもらいたい人間を連れ去って、この村に連れてきて鐘と引き換えに隔離してもらう。
そんな村がダムに沈められ、閉じ込められていた連中も一緒に沈められた。
今でもこの湖からは捕えられていたもののうめき声が聞こえるらしい。
そして、月夜には湖から上がってきて……!!

そんな怪談話に惹かれてしまったのか、一同は廃墟を見に行くことにしてしまいました。
その道中、元患者の一人に出くわしてしまいます!!
二人の男が融合したような姿で、四足歩行の獣の様に歩き回る元患者。
先ほどの怪談の話もあり、一同はそれを恐ろしい怪物だと思い込み
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全員で袋叩きにして殺してしまうではありませんか!!
その騒ぎを聞きつけ、建物から出てきた他の元患者たちも次々に彼らの手にかかってしまい……
元患者たちは一人残らず殺され、水の底に返してやる、という言葉とともに、湖の中に捨てられてしまうのでした……

しばらくたったころ、㌵の下にまた別の患者が退院求めてきました。
最近妙に退院を求める患者が多いことも気になり、ふらんは行く当てがあるのかと聞いてみます。
するとその患者、湖のほとりにいい物件があると誘われた、というのです。
そう言えば他の元患者もそんなことを言っていたような。
ふらんは、その湖のほとりの物件で、皆が助け合って共同生活をしているんだろうと言う結論に息つきました。
えらいわ、とにこにこ顔のふらんだったのですが、そんな時に先ほど退院していったばかりの元患者が忘れ物をして言ったことに気が付きます。
せっかくだから、とフランはその忘れ物を届けるついでに、館の皆でその物件に遊びに行ってみることにしたのですが……

現地につき、サプライズ!と例の物件の扉を開けるふらん。
するとそこには
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あのキャンプ客たちとその仲間と思しき人間が、元患者たちを惨殺している風景が広がっているではありませんか!!
復讐をしたいところですが、まずは話を聞かないわけにいかないでしょう。
彼らを捕えて話を聞いてみると……
彼らの大学でこの「モンスター狩り」が行事になっている、悪意はない、これはレジャーだ、怪物を殺すのは世の中のためだから私たちは正義の味方だ、などと口々に勝手なことを言うではありませんか。
どうやら彼ら、最初に手にかけた元患者から、寂しくなったらいつでも連絡を取れるようにとふらんが渡していた無料通話端末を使い、次々にふらんの館の面々を呼び出していたようで……
それを知ったふらん、もう怒りが抑えきれません。
元患者たちの亡骸を見つめ……依然俺たちはヒーローだ、俺たちが正義だ、とのたまう彼らの方に振り返ったかと思うと、ふらんはいいました。
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そうですね、多を救うのが正義ですもんね、正義の味方の皆さま。
そして、ふらんは術式を開始するのです。
……彼らによって奪われた多くの犠牲者たちを、彼ら自身の身をもって救わせるために……!!



というわけで、ザ・ホラー映画の舞台、とでも言うべき場所を舞台に、罪もないクリーチャーたちが人間によって殺められる、という逆の悪夢が繰り広げられるエピソードを収録した今巻。
ホラーとしては一捻り聞いたお話ですが、わがままな人間に報いを与え、ついでにフランの悪魔的な術式も描かれる、「ふらん」としては比較的スタンダードなお話と言う面白い印象を受けるお話となっているのではないでしょうか。
勿論この他にも様々な、「ふらん」らしいお話が収録されております!
山の中に誘われ、人々が惨殺される事件の意外なる犯人とその目的を描く「狩人の夜」。
移植用臓器の塊とでもいうべき生命体、アドレアが恋をしたがるちょっと変わった導入の「アドレアの恋の物語」。
本作最強のキャラ、ガブリールとふらんが戦うことになってしまう「ロングウェイ・ホーム」。
サイコホラーかクリーチャーパニックホラーか、そう思われた後に驚きのオチが待っている「パラダイス・ロスト」……
その他にも様々なお話が用意されております!!
今回のラインナップは心なしか人体改造、人体を変異させる何か、というお話が多いような気がしまして、それもまた本作らしいような……!
その極め付きが単行本描き下ろしの「希望の戦士」ではないでしょうか。
一体何がどうなるのか、思わずニヤリとしてしまう近衛がき下ろしエピソードも必見です!!
そんなこんなで描き下ろしを含めた全8エピソード……いずれも最高に悪趣味(褒め言葉)なメディカルホラー+コメディが今巻も楽しめますよ!




今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!