今回紹介いたしますのはこちら。
「往生際の意味を知れ!」第2巻 米代恭先生
小学館さんのビッグコミックスより刊行です。
さて、かつて突然別れを告げられた元カノ、日和から突然連絡を受けた市松。
その連絡は、なんと自分と性行為をせず、妊娠するのを手伝ってくれ、というあまりにもとんでもない要求だったのです。
ですが別れてからの7年間の間もずっと彼女に恋い焦がれていた市松は、そのとんでもないお願いを受け入れてしまい……!?
唯一今回の件を知っている友人、榊田と飲みながら、今回は何があったと言うようなことを報告していた市松。
市松は日和の様々な行動や反応に一喜一憂し、脈があるかも、いや実質的に付き合っていると言っても過言ではないと調子にのりまくっておりました。
が、そんなところに突然日和が現れたのです!!
妊娠の手伝いに悪影響を及ぼしかねない飲酒などをしていないかという監視も兼ねて尾行してきたと言う彼女に、流石に市松と榊田は面食らうのですが……
榊田はせっかくとばかりに、日和に様々な質問をぶつけます。
そして、最後に今回の件の確信ともいえる質問をするのです。
今回要求してきている、妊娠の手伝いだとか、その様子を撮影してくれだとか、いくらなんでも常識外れ過ぎるあれこれ。
一体何が目的で、日和はそんな要求をしてきているのか、と!
おそらく何も話さなくても、市松は協力を続けてくれるでしょう。
ですが今後協力を求めるかもしれない榊田もいますし、市松に対してもいつか話さなければならないとは思っていたようで。
日和はその目的を明かしてくれました。
私は、
お母さんの嘘を暴きたいの。何やら今回の件に対して、革新といえる内容になりそうな日和の言葉。
これは映画にするのならば要になりそうですし……市松は日和の許可を得てカメラを回し始めました。
そしてカメラの前で日和ははっきりと話し始めたのです。
まず彼女は、タブレットで電子書籍の漫画を表示して見せました。
「星の三姉妹」。
それは日下部由紀……日和の母親が描いている漫画です。
この作品は日下部由紀自身の家族をキャラクター化し、日常を描いていくエッセイ漫画で、累計発行部数2000万部を誇る大人気作品。
子供向けアニメ作品は現在に至るまで長期放映中、原作漫画も連載中という、日本で知らないものはいないと言っても過言ではない有名作なのです。
おおらかで明るい母、ネガティブながらやさしい父、いつもご機嫌な長女、ませている次女、甘えん坊の三女、そんな家族のほのぼのエッセイ……の筈だったのですが……
これがほとんど嘘、母の歪んだ認知と願望によって作られているの。
日和はそう言うのです。
……が、エッセイという体で描かれている作品が、実際は架空の物語だったと言うのはそれほど珍しい話ではないはず。
完全な妄想ではないにしろ、書き手の主観や漫画的な誇張は入るものですし、見せたい自分を見せようと言う気持ちが入ってしかるべきでしょう。
ですが、そう反論しようとする榊田を遮って、日和は「星の三姉妹」のページをめくりながら話を続けるのです。
漫画では父は仕事も家事もできない人物で、母が一人で家庭を支えているかのように描かれているけど、実際はまるで逆。
作中ではある日突然父がいなくなる、これは実際にそう。
父の入院が子供たちに告げられ、私達は幾度とな父を見舞う……こんな事実は一切ない。
私は父が行方不明になって以来、葬儀の日までその姿を見ていない。
最新刊、現実の私と次女の珠緒は7年前に家を出て、今日まで母とは一切口を聞いていない、なのに漫画には毎月「私達」が登場している。
……7年前といえば、市松が日和から別れを告げられたタイミングです。
やはりあの時何かがあったのか、と考える市松ですが、かまわず日和の話は続きます。
母の漫画は父の死という新展開を迎えてから、爆発的に売れてるの。
乳不在の悲しさを描き、三姉妹のリアルな心の動きを描き、そして明るく楽しく、父の喪失を家族の絆で乗り越えて行く。
私はこれを、母の過剰な演出だと思ってる。
母は漫画を売るために、父を殺している。……にわかには信じられない発言です。
証拠もないと言います。
ですが日和は間違いないと確信しているようで……
日和はこう言いました。
私は、
私の人生をかけて母に復讐したい。最終目的は、世間への告発と、私達の人生を狂わせた母を地獄へ落とす。
そしたらやっと、私の中の「ひよりん」が死ぬの。
……日和と別れた後、日和の日常を知るための唯一のよりどころだ、と市松が思っていた「星の三姉妹」。
それが嘘だった、というのは市松にとってショックそのものです。
とはいえ、これで彼女の目的はわかりました。
となると次に気になるのは、何故出産が必要なのか、というところです。
市松が反射的にその事を尋ねますと……日和は少しの沈黙の後、答えました。
あの人は常にネタを求めている。
だから、この出産を母に描いてもらう。
でなきゃ、次は三女が殺される。そうなる前に、先手を打つの。
市松はカメラのモニター越しに日和を見つめながら……こう感じていました。
俺が、自分の目で、日和を見極める。
見極めなければならない。
というわけで、ついに日和の目的が明かされた今巻。
目的が明かされたところで、市松は彼女の目的により深くかかわっていくことになって行きます。
この後登場するのは、日和の妹と叔母。
おそらく彼女達は、「星の三姉妹」……日下部由紀の犠牲者たちなのでしょう。
彼女達の登場から、市松のドキュメンタリー撮影はさらに熱を帯びて行くことになりそうです!
そしてさらに、今まで描かれてこなかった日和の気持ちの方も描かれていくことに。
彼女は何故市松を選んだのか?
そして市松にどんな感情を抱いているのか?
そんな本作の気になる要素がいくつか明かされることになるのです!!
物語が確信に近づいて行く第2巻ですが、紹介した部分の前にも興味深い内容がございます。
漫画作品ではなかなか見られることはない、「妊娠の手伝い」のシーンがまさかの描写……!!
今回その目的が明かされるまでは、何を考えているか一切わからない女性というように敢えて描かれていた感のある日和。
ですがそのシーンから、徐々に彼女が得体のしれない奇妙な女性……と言うだけではな人物であることがわかり始めるのです!
かなり変態チックで、インパクト重視のために差し込まれたかに見えたこのシーンですが、そう言った意味でも重要なシーンとなっているわけです!!
描かれ始める真相と、現れ始める日和の感情。
市松の行動も今まで以上に活発化していき……ここから先に大きな動きもくるであろう本作、ますます見逃せませんね!!
今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!
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