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今回紹介いたしますのはこちら。

「マガマガヤマ」第2巻 小池ノクト先生 

幻冬舎さんのバーズコミックスより刊行です。


さて、山にまつわる怪を描いていく本作。
山に住まう「何か」が無慈悲な刃を振りかざし、また犠牲者が出る……そんなあまりにも恐ろしい物語を淡々と記すこの物語、第2巻ではどんな恐怖が待っているのでしょうか……?



男が二人、山を登っていました。
彼らがこの山にやってきたのは、3年前にここで亡くなった友人、吉田を弔うため。
仕事が忙しくて今までなかなかやってこれなかったのですが、山が好きだった吉田を偲んでここで語り合おう、とようやく二人は吉田の最後の地に足を踏み入れることができたのです。

この山、それほど標高も高くなく、一見するとハイキングコースの様な危険のない山に見えます。
ですがそんな油断が招くとでも言うのでしょうか、過去に何度も遭難者が出ているのです。
その証拠に、山道の傍らには
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慰霊のための木像がいくつも立てられております。
それにしても、以前来た時よりもかなり数が増えているような……
しかも近づいてよく見てみますと、その全ての像の目に一つ残らず釘が突きたてられているではありませんか!
悪戯なのでしょうか、最近のは登山者のモラルも下がっているんだな、とぼやく男。
するともう一人の男、青木が何やら屈みこんで木像に手を伸ばし始めました。
どうやら青木、この悪戯があまりにも可哀想だと見るに堪えず、釘を抜いてあげようとしているようです。
早速一体の木像から釘を抜いてあげるのですが、全部の木像から釘を抜くのは時間がかかりそう。
それに、そろそろ日が傾いてきております。
暗い山道を歩けば、この木像をまた増やすことになりかねないわけで……
男に促され、青木は一体だけの釘を抜いたところで断念し、ごめんね、明日下山設楽管理事務所の人に伝えておくから、と木像に言い残し、山登りを再開するのでした。

夕方から日が陰ったこともあり、山小屋にたどり着いた時はすっかり暗くなってしまっていました。
青木が寄り道するせいだ、明日は日の出とともに頂上を目指す、急いで飯の準備だ、などとこの後の段取りを確認しながら山小屋の扉を開くのです。
するとその瞬間、山小屋の中から絶叫が聞こえてきました!!
何事かと慌てて手にしていたライトをつけて小屋の中を照らしてみますと、そこには何かに怯えている様子の男性がいました。
青木たち二人の姿を見ると……男性は冷静さを取り戻したようで、失礼しました、と謝ってから、この山の管理をしている河合だ、と名乗ります。
すっかり暗くなったし、もう誰も来ないと思っていたところに二人がやって来たから驚いて悲鳴を上げてしまったと言う河合ですが、それにしては驚きすぎの様な……
とはいえ初めて会った人にそこを突っ込んで聞くのも不躾と言うもの。
その件はスルーしまして、青木達も自己紹介するのでした。

この小屋で一晩一緒に過ごすわけですから、何も話さないのも不自然です。
今回の登山の目的などを離していくうちに、話の流れはこの山で亡くなった吉田のことになって行きました。
死んだ吉田ってやつはバカがつくくらいの山好きで、山で死ねて喜んでいるかもしれない。
そんなことを言いますと、河合は奇妙なことを言い出すのです。
それはないでしょう。
やっぱり死んだら悲しいんじゃないかなあ。
死者って、我々生きてる人間の事、どう思ってると思います?
考えてみてくださいよ、もし自分が貧しくて食べるものがない状態でね、目の前でご馳走食べられたら恨めしいじゃないですか。
それと同じで、自分は死んでたら、生きてる人間は憎いんじゃないですかね。
……吉田は山に登るため、10回以上仕事をやめたような吉田が、大好きな山で死んでも本当に悲しいだけなんだろうか。
生きている人に、かつての友人に会っても、懐かしいなどと言う感情ではなく、恨めしいだけなのか?
何故か確信めいたものを感じる河合の話に、疑問が浮かばないではありません。
青木は、人は死んだら恨めしいとかそう言った世俗の感情から解放されるんじゃないかと思っている、と自分の意見を言ってみるのですが、なぜか河合は食い気味にそれを否定してきました。
絶対にないです、と……!
あまりにも強い語気で告げられたその言葉に、唖然としてしまう二人。
河合もさすがに言い方が悪かったかと感じたようで、すぐについ興奮してしまってすみませんと謝ったのですが……
その時でした。
山小屋の出入り口の扉が、ごとごとと音を立て始めたのは。
時間は20時半。
すっかり夜で、真っ暗な中この山小屋までよく辿り着いたな、と二人は扉を開けてやろうとしました。
すると河合、形相を変えて二人を止めるのです!
開けるな!
ドアから離れろ、外のやつを相手にするな!
ほっときゃそのうちいなくなるって、この山のやつらはヤバいんだって!
黙ってりゃ見えないんだから!
必死の形相で叫ぶ河合ですが……その瞬間、がらりと山小屋の扉が開きました。
そして、一人の男が入ってくるのです。
その男の顔を見ると、青木達の顔から血の気が引いて行きました。
何故ならその男は、
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ほかならぬ吉田だったのです!!
お前生きてたのか?今までどこにいたんだ!?
いるはずのない男の登場に、驚くほかない青木達。
河合は必死に、そいつに話しかけるな、と二人を止め……そして、見えてないくせになんでこの小屋がわかったんだ、と戸惑い始めます。
そして吉田の顔を見た河合は仰天し、こう叫びました。
バカ野郎、お前ら、像の目の釘抜きやがったのか!!
……その直後でした。
吉だが河合の下に駆け寄り、その頭を
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握りつぶしたのは!!
これはもうただ事ではありません。
慌てて山小屋から飛び出す二人ですが、そこには驚くべき光景が広がっていました。
地面に這いつくばり、何かを探しているかのような大勢の人々。
そしてその人々は、みな一様に
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両の目に釘が深々と突き立っていて……!?
そこで青木は全てを理解しました。
釘、目に刺さった、釘。
あの慰霊の木像は、慰霊のために作ったもの、ではなかったのです。
あれは「遭難者の像」。
遭難者の目を潰し、視えなくしていた。
そしてその目の釘を、青木が抜いてしまった……!!
青木の脳裏に河合の言葉がよみがえります。
もし自分が貧しくて、食べるものもない状態で、目の前でご馳走食べられたら恨めしいじゃないですか。
それと同じで、自分は死んでたら、生きてる人間は憎いんじゃないですかね。
……背後から忍び寄ってくる吉田。
そして吉田は青木の頭を鷲掴みにし……
ギリギリと、力を込めて行って……!!




というわけで、山の恐怖を描いていく本作。
クリーチャー系のホラーが多い気がする小池先生作品ですが、本作はかなりスタンダードな「怪談」的な、オカルティックなホラーとなっています。
とはいってもじわじわと迫って来る心霊的な恐怖だけではなく、小池先生らしいおぞましさ、グロテスクな描写がたっぷりと盛り込まれたものとなのです!

紹介したお話の他にも、様々な山にまつわる怪が収録。
ソロキャンプにやって来た男が奇妙な出来事に巻き込まれる「オートキャンプ」。
別人のように変身したおばさんの下での増された怪しげなスープの正体を描く「健康食品」。
人の足の踏み入れることの無い山奥にいた子供の恐怖、「山の子供」……
そんな様々恐怖を記している本作ですが、このほかには表紙にも採用されている「灯篭流し」が非常に読み応えあるお話となっています!
小池先生らしい味わいが、今巻もたっぷりと味わえますよ!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!