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今回紹介いたしますのはこちら。

「16bitセンセーション」第1巻 原案・みつみ美里先生・甘露樹先生 漫画・若木民喜先生 

KADOKAWAさんより刊行です。


さて、美少女ゲーム業界の超ビッグネーム、甘露樹先生とみつみ美里先生原案による、自伝的、回顧録的な作品となっている本作。
作画を行っているのは、93年に小学館の漫画賞を受賞し、04年にデビュー、その後「神のみぞ知るセカイ」で大ヒットを飛ばした若木民喜先生。
そんな思いがけないトリオで描かれるのは、90年代を舞台にした、美少女ゲームの隆盛を振り返って行く作品なのです!!


1992年、平成4年。
バブル経済がはじけたものの、まだその影響がまだ大きく表面化しておらず、国民はバブルの余韻に浸っていました。
そんな時に大学に入学したのが上原メイ子。
受験勉強から解放され、大学生活に夢を見ます。
いっぱい遊んで勉強して、もしかして彼氏とかも作ったりして。
そうそう、一番欲しかったもの、車の免許をまず取ろう!!
そう思い立ったものの、免許を取るにはそれなりのお金が必要です。
そこでメイ子は、アルバイトを始めることにしました。
場所は大学の近くにある「パソコンショップR」です。
仕事は楽だし、パソコンの知識が無くても(一応)つとまるありがたい仕事……でしたが、芽衣子にはどうしても不思議なことがあるのです。
当時のパソコンは、8ビットから16ビット機が周流になりつつありました。
「最高峰」であるPC9801にも、一般人が何とか手が届くようになっていたのですが、普通の人がそれを手に入れたところで何をしていいのかもよくわかりません。
間違いなくできることと言えば、ゲーム位のもの。
当時のゲーム機は1万5000円から2万5000円と言ったところ。
だと言うのに、何十万円も出して何故ゲームをやるのか、メイ子には理解できないのです。

そんなる日、今までは気が付かなかったものの……お店の片隅にエロスなゲームが並んでいる棚があることを知ったメイ子!
もうあの棚には近づかないでおこう、と誓うメイ子ですが……彼女の中の疑問はまた膨らみます。
あのエロスなゲームは、パソコンのゲーム。
何十万円も払って、どうしてエロスなゲームをやるのか?
何かはわからないけど、もっと安いものがあるだろうに。
頭の中に?がいっぱい浮かびながら、メイ子はアルバイトを続けるのでした。

ちなみにメイ子、パソコンの知識はありませんが、イラストを得意にしていました。
店長の六田さんは、そんなメイ子の特技に目をつけたようです。
メイ子ちゃんに手伝ってもらいたいことがあるんだ。
突然六田さんにそう誘われたメイ子、わけもわからないまま彼の後をついて行き、初めてお店の二階に足を踏み入れたのです。
実はこのパソコンショップ、この二階こそが「本体」。
なんとそこは、
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パソコンゲーム開発メーカー「アルコールソフト」があったのです!!
このカクテ……いや、アルコールソフトがつくっているのは、
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エロスなゲームソフト!!
最初はパソコンから絵や音が出たことに驚くメイ子ですが。やがてそれが例の棚に並んでいるエロスなソフトだと気が付いて二度仰天!
表向きは健全なパソコンショップ、裏では闇の仕事を!?とおびえるのです!
……確かに堂々と誇れるゲームではないかもしれませんが、真っ当に流通している表の仕事なのは間違いありません。
そこのところを突っ込んだ後、六田さんは本題に入りました。
急に一人辞めちゃって大変なんだ、1日でいいから手伝ってくれないかな?
そう懇願されると、メイ子は……
手伝ったら無事に解放してもらえますか?と、まだ闇の仕事ネタを引きずった応対をするのでした……

古い和室にぎゅうぎゅう詰めの人とパソコン。
それがメイ子の見た初めてのゲーム作りの現場でした。
そんなところで見せられたのは、今作っているゲームの原画です。
その非常に上手な絵を描いたのは……
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猫耳帽子をかぶった美女、下田かおり、だと言うからまた驚きです!
かおりさんは、パソコンを知らないんですけど、と戸惑うメイ子を半ば強引にお阿曽紺の前に座らせ、マウスを握らせ、あっと言う間に政策に引きずり込んでしまいました。
メイ子に任されたのは、サブのグラフィック。
まずはあるキャラクターの色塗りを手伝ってくれ、というものでした。
当時の作画と言えば、「マウスでポチポチ描いていく」という、気の遠くなる作業です!
ある程度以上の年齢の方ならば、マウスで絵を描いたこともあるでしょう。
その大変さは、やってみればわかるはず……!!
ちなみにスキャナーはこの頃からありましたが、当時のモニタは640×400。
スーパーファミコンや、初代プレイステーションくらいの解像度なのです。
そんな解像度で線画を取り込みますと、当然戦はガタガタのボケボケになってしまうわけで。
まずはその主線を引き直すことから始めなければならないわけで、なかなか簡単ではないのです……
さらに大変なのは、「色」です。
この頃のゲームは、同時に使える色が16色!
しかもそれは画面上全てのものを含めて16色なので、表示されたCGを囲む「枠」の色も含めてなので、それはもう大変!!
いくら何もわからないメイ子と言えど、女の子の色を塗るのに16色ではちっとも足りない、ということはわかります。
たまらず助けを求めるのですが、かおりさんはこともなげにこう答えるのです。
「やりくり」するのよ、と。
例えば顔の一部の肌色を薄くしたかったら、オレンジと白を「混ぜる」。
白とオレンジを交互に並べる「タイリング」という作業をすることで、色を薄く見せるわけです!!
原画をもらって、スキャンして、フロッピーディスクで仕事用のパソコンに異動。
手作業で主線を起こし、色塗りをしていく……
1日だけ手伝うはずの子の仕事でしたが、最初に手伝うことになった1枚の絵は、5日たっても終わらなかったのでした……

シナリオとスクリプトを手掛けるキョンシーさん、メイングラフィックのかおりさん、ゲームシステムを作る六田さんの息子さんであるマモルくん。
そんな彼らの仕事がそれぞれ作り上げていき、それを組み合わせてゲームは完成!
なのですが……ここからまだデバッグ作業が待っています。
ゲームがきちんと動くか確かめるデバッグは、終わりが見えない過酷極まりない作業……
まだ経験の少ないメイ子は、会社で泊まり込みで行うデバッグもキャンプのようで楽しく感じられました。
……少なくとも、今は、ですが……
そして長い長いデバッグを終え、ようやくゲームが完成したその時、季節は夏になってしまっていました。
闇の仕事に手を染めてしまった、とまだ言っているメイ子ですが、パソコンを使えるようになったし、いい思い出になったかもしれない、と充実感も感じています。
ついでに店頭での宣伝用にPOPなんかも描いたりしまして、これで闇の仕事とはおさらばです。
お疲れさまでした。とアルコールソフトから出て行くメイ子なのですが……
そんな彼女を、香織さんが呼び止めてこう言うのです。
メイ子ちゃん!!
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次もよろしくね。
……そう。
これは、メイ子の長い長いクリエイター人生の、始まりでしかなかったのです!!




というわけで、みつみ先生や甘露先生の実体験を混ぜこみつつ、しっかりモデルの臭いを感じさせる架空のメーカーを舞台にしたクリエイターの物語を描いていく本作。
この後も、各年代の美少女ゲームの歴史を振り返りつつ、メイ子がクリエイターとして成長、ステップアップしていく様が描かれていくのです!

本作の目玉となるのは大きく3つ。
メイ子のクリエイターとしての成長、美少女ゲーム界の様々な動き、そして当時のパソコンのあるあるなどのノスタルジック系ネタです。
もともと絵が達者だったメイ子ですが、当初は(この第1巻の時点では)エロスが大の苦手!
物語の軸としまして、そんな彼女がかおりさんをはじめとした様々な人物によってグラフィッカーとして一人前になって行く様がアルコールソフトの盛衰とともに描かれていくのです!
そしてそんな中で、美少女ゲーム業界の動きも解説されていきます。
子の90年代と言うのは美少女ゲーム界に大きな変化が起きた年代と言えまして……あの超有名美少女ゲームの登場が、社会現象ともいえるあの家庭用ゲーム機向け恋愛シミュレーションの登場が、業界に与えた変化などもわかります!
ちなみにかなり多くのメーカーさんにしっかり許諾を取って掲載しているのも凄いところです!
そして小ネタの部類になる当時のPCの様々なネタ。
先ほどのマウスで絵を描く大変さ、の様なパソコンあるあるの他にも、パソコンの周辺機器の変化や、今からは考えられない不便だったこと、そして美少女ゲーム界の変化に伴う日常の変化などの様々な要素が収録!
そんな3つの要素のいずれも楽しめるのです!!
さらにおまけとして各種コラムや、老舗美少女ゲームメーカーの超大物クリエイターと若木先生の対談なども収録。
まさにボリューム満点で、美少女ゲームと当時ともに歩いてきた方も、過去の歴史に興味がある方も、そんなに興味がない方でも楽しめる作品になっているのです!!




今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!