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今回紹介いたしますのはこちら。

「星のさいごメシ」第1巻 おおひなたごう先生 

エンターブレインさんのビームコミックスより刊行です。



さて、「目玉焼きの黄身いつつぶす?」で新境地を開拓したおおひなた先生。
ドラマ化やアニメ化も果たしたおおひなた先生屈指のヒット作となった「目玉焼き~」ですが、完結後初連載となる本作はその流れを汲む食事漫画となっております。
ですが本作、「食べ方」を追求した「目玉焼き~」とはまた違うテーマのもとに描かれておりまして……?



豆腐を食べやすいサイズに切り、衣をつけ、油で揚げる。
そして、だしをかけて、薬味をかけて……
星乃は得意の揚げ出し豆腐を、婚約者の一平にふるまいます。
一平はそれを見るなり、やった!と喜びの声をあげました。
俺、揚げ出し豆腐が好きっていうかさ、星乃の揚げ出し豆腐が好きなんだよ。
何が他のと違うのか分かんないけど、星乃の揚げ出し豆腐は最高だ!
一平は星乃の揚げ出し豆腐をほおばりながら、絶賛するのです。
星乃からすれば、母親から教わったレシピを再現しただけ。
大したことしてないんだけど……と嬉しくも不思議な気持ちになってしまいます。
今日、食べられてよかった。
……その時一平がそう呟いたのを、星乃は聞き取ることはできません。
星乃はそのまま、二人の結婚式の会場についての話し合いを始めようとするのですが、いっぱいはそれを遮ってこう言うのです。
星乃!
この結婚、
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取りやめにして欲しい。
浮気してたんだよ。
二ヶ月前にうちの課に配属されてきた女性だ。
俺はその人を、妊娠させてしまった!

……いくら弁明を求めても、一平はもう結婚できないの一点張り。
結局星乃は一平を追いだし、彼とは音信不通になってしまいました。
そうなった星乃は、まるで抜け殻の様。
彼女が契約社員として働いている出版社でも、彼女は呆然と椅子に腰かけているだけです。
結婚直前で婚約者に浮気されて破断、というのは確かに同情せざるを得ない事情ですが……
仕事場に来ているからにはぼーっとしているだけでは流石に黙っていられません。
編集長は星乃を呼びつけ、やる気あるのか!と怒鳴りつけるのです!
すると星乃は、すみませんと謝った後……やる気、ないです!!とものすごく堂々と発言しました!!
勿論そんな発言をにっこり笑ってスルー出来るはずもなく。
編集長は改めて彼女を怒鳴りつけ、彼女の現在の状況をしっかりと伝えるのです!
本来星乃は結婚をするからと仕事をやめる予定でして、契約社員の契約が間もなく切れる状況になっています。
このままぼーっとしていれば当然、契約を続ける価値もなく……
ある程度の成果を出さなければ再契約は難しいはず。
編集長は、明日までにグルメ連載の新規格を考えてこい!と星乃を一喝するのでした。

とはいっても、こんな心理状況でグルメ企画なんて考えられるでしょうか。
星乃は半ばヤケになり、行きつけのお店「めし処ひでじ」へやってきました。
いつもの通り、店のご主人のひでさんと奥さんは優しく迎えてくれまして、常連さんも星乃を迎え入れるのですが……
常連さんたち、星乃の機嫌が良くない事をすぐ見破ります。
止む無く一連の話を説明する星乃。
突然の婚約破棄、SNSやメッセージアプリもアカウントが削除されて連絡はつかず、そのあげくグルメ企画を考えなけれぼほぼクビ……
教えて神様、私の何がいけなかったの?
ぐったりとカウンターに突っ伏す星乃。
その時、常連さんたちの他に一人だけいたあまり見かけないお客さんに、奥さんがお下だし豆腐を出している声が聞こえてきました。
ふとよぎる、一平の「星乃の揚げ出し豆腐が好きなんだよ」という言葉。
自然と瞳から涙が零れ落ち、一平と最後に食べたのも揚げ出し豆腐だったな、と悲しい思いが沸き上がって来てしまうのです。
すると今度は常連さんたちの会話が聞こえてきます。
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最期に何を食べるか。
今日会社の皆で盛り上がってね、もし明日死ぬとしたら、「さいごメシ」は何を食べる?
その会話は盛り上がって行きます。
男性の常連客、政吉は「A5ランクの霜降り和牛のしゃぶしゃぶ」と答えました。
薄切りにした肉を一気に掬い取って、しゃぶしゃぶして、ポン酢をたっぷり付けたやつを、あーんと一気食い!
たらふく食べられたら死んでもいいや、と笑いました。
一方女性の常連客、宇見は政吉とは逆のベクトルのものを出してきました。
それは……超メジャーなインスタントの袋ラーメン!!
インスタントの袋ラーメンはアレンジが簡単なのがいいところだそうで、宇見は味を濃くするためにお湯を少なめにして煮て、火を止めた後に溶き卵を流し込んで卵がふわふわになった状態で食べるとのこと。
スープが卵に絡みついて、そのおいしさと言ったら……と、彼女はご満悦です。
政吉は普段食べられない「贅沢系」、宇見はいつも食べ慣れているからこそおいしさが保証されている「安心系」……と言うわけです。
そんなやり取りを聞いていた星乃の中に、何かが閃き始めました。
人が死ぬ前に何を食べたいかなんて個人的な話だし、それを知っても自分には関係がないはず。
でもいざ聞いてみると、すごく興味が持てたし、食べてみたいと思った。
なんだろうこの感覚!
星乃は思いたち、ひでさんにも「さいごメシ」を聞いてみることにしました。
するとひでさん、「カミさんの作ったお茶漬け」だと言います。
ひでさんが最期に求めるのは「癒し」だとのことで、いつも仕事を終えた後に、晩酌の後に食べている鮭茶漬けを食べたいと言うのです。
ですが、ただ美味しいからそれを選ぶと言うわけでもないそうで。
ひでさんはまず鮭とお茶漬けのセットが出てくると、
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あまりに美味しそうなのでその酒でご飯をいっぱい食べてしまうんだと言います。
なにそれ、と思わず突っ込む星乃ですが、ひでさんの謎行動はまだ続きます。
なんでも「お椀にいっぱいのごはんで作ったお茶漬け」はひでさん的には「粋じゃない」そうで、なんと二杯目に持ってもらったごはんも、半分ほど鮭で食べてしまうとか!
お茶が出過ぎてしまうから早くお茶漬けにしろと言う奥さんのお叱りを受けながらも、最後の最後にようやく鮭茶漬けにして食べる……
そんな奥さんとのコミュニケーションを含めて、そのお茶漬けと向き合う時間。
それが大切な癒しの時間で……人生最後の食事もそうであったら幸せだ、とひでさんは言うのでした。

ひでさんのさいごメシ、ぜひ食べてみたい!とまた盛り上がる一同ですが、星乃は頭を悩ませてしまいます。
こうやって聞くと食べて見たくなり……人のさいごメシが自分のさいごメシになり得ることがわかり案した。
では自分のさいごメシが逆に人のさいごメシになりうるのだろうか?
いや、それ以前に自分のさいごメシは何なんだろうか、そんなこと今まで考えたこともなかった。
……揚げ出し豆腐?
それだけはイヤだ、あの忌まわしい記憶がよみがえる!!
頭を抱えて唸る星乃なのですが……そこで今まで黙っていた、初めて見る顔のお客さんが話し始めました。
今を健康に生きてるんだから考えたことなくて当たり前ですよ。
ずっと話を聞いていて、言おうか言うまいか迷っていたんですが……
実は私、
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ここへさいごメシを食べに来たんです。
……突然、あまりにもタイミングのいいカミングアウトをしてきたその男。
彼のカミングアウトは本当なのでしょうか。
彼の抱える事情とは……?




というわけで、たまに話題に上る、死ぬ前に最後に何を食べるか、という「さいごメシ」をテーマにする本作。
この後さいごメシを食べに来たと言う男性の事情が明かされ、そしてひでさんのさいごメシがみんなにふるまわれることになります。
その様子を見て、星乃の中に何かよぎるものがあったようで。
皆様の予想通り、星乃はグルメ企画として「さいごメシ」を提案。
そして彼女は、様々な人物の「さいごメシ」を取材していくことになるわけです!!
さいごメシは千差万別、年齢、性別、職業、そして背負ってきた人生……人間みんなそれぞれですから、当然さいごメシもそれぞれなわけです!
紹介させていただいた第1話の中で「安心系」「贅沢系」、そして「シチュエーション系」とでも言うべき3つのパターンが出てまいりましたが、まだまださいごメシの世界は広大です!
どんなさいごメシが出てくるのか、どんな人物が現れるのか?
さらに突然別れを告げた一平の方にも事情がありそうなことが見え始め……
さいごメシの数々、そして星野を取り巻く状況と、興味は尽きませんね!!

今回の作品は「目玉焼き~」の主人公の様なアレな性格の人物が(今のところ)登場せず、物語全体がぐっとリアルよりになっております。
その為ギャグ描写はやや控えめで、さいごメシやドラマの描写に力を入れられているのですが、そこはおおひなた先生、きっちりと決める所では決めてくださいます!!
シュールなシーンやずれた発言、もはや恒例の「ぬりえ」シーンもばっちりで、坦萎え右食事漫画に終わらないユーモアがあふれる作品となっているのです!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!