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今回紹介いたしますのはこちら。

「24区の花子さん」第1巻 吉富昭仁先生 

秋田書店さんのチャンピオンREDコミックスより刊行です。


さて、様々なジャンルに挑戦し続ける吉富先生。
最近は「スクール人魚」「今日から未来」「リリィシステム」といった、女子高生がお話の中心に据えられた作品を良く描かれている印象ですが、本作もそんな作品の一つ……なのですが、やはりいぷうかわった味付けがされているようでして……?



大島幸介はあくびをしながら廊下を歩いています。
いつも眠たげで、体調もあまりよくなさそうに見える彼、それには理由があるのですが……
そんな時、曲がり角で一人の女子とぶつかってしまいました。
目が隠れてしまうほど前髪の長いおかっぱ頭の少女。
彼女は花村花子。幸介と同じクラスの女子です。
ぶつかった衝撃で運んでいたプリントをばらまいてしまった花子。
幸介はそれを拾うのを手伝いながら、こんなことを尋ねるのです。
花村、お前さ、放課後「24区」に入ってないか?
花村は……「24区」は立ち入り禁止だよ、入るわけないじゃん!と、慌てながら答えました。
ちょうどプリントを拾い終わった花子は、プリントを拾うのを手伝ってくれてありがとう、と言い残し、小走りで去って行くのでした。

「24区」。
それは、7年前に起きた事件で制定された区画です。
杉並区の一部で起きたその事件は、なんと空間が歪んで人が浮き、浮いた人々はそのままどこかに消え去ってしまう、というとんでもないもの。
幸介の弟、優介もその異変に巻き込まれ、行方不明になってしまっているのです。
同じように行方不明になった人たちは、なんと数千人以上。
そしてこの区画は政府によって立ち入り禁止と決まり、24番目の区である「24区」になったのでした。

幸介は立ち入り禁止の「24区」に足しげく通っています。
実は昨日も幸介、ここにやってきていたのですが……そこで花村花子の姿を見かけたのです。
まさかあれは気のせいだったとでも言うのでしょうか。
それとも、立ち入り禁止区域に入ったのを知られたくないから黙っていた……?
幸介は昨日と同じように、物陰から花子がいた場所を覗いてみました。
今日はいない……かと思われたのですが、よくよく見ると彼女のものであろう靴が脱いで置いてありました。
いや、いる。
そう思った瞬間、幸介の頭上から、にゅっと女性の足がのびてきました!
キミか、昨日も見てたよね、私のこと。
そう言って、肩車のような形で幸介の頭上で浮いているその女性は
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どう見ても花村花子なのです。
まあ、学校で会う花子とはちょっと印象が違うような気はするのですが……
うあっパリ24区に来てんじゃん、お前、花村花子だよな?
そう尋ねる幸介なのですが、彼女は微笑むだけで何も応えません。
と、その瞬間、花子らしき彼女は幸介につかまって、と指示してきました。
幸介が戸惑っていますと、花子はその足を幸介の体にからめ、そのまま空高く浮き上がったではありませんか!!
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と同時に、幸介が立っていた足元から、蛇の様なミミズのような、気味の悪い怪物が飛び出してきて……!!

幸介の手を取って宙を舞う花子らしき彼女、
彼女は幸介にささやきます。
花村花子、いいよ、キミがそう思うんなら私は花村花子だ。
……なんだか引っかかる言い方です。
彼女が花村花子出ないなら、何者だと言うのでしょうか。
その事をズバリ尋ねてみても、彼女は答えることなく、逆に幸介の名前を訪ねてきます。
大島幸介。
幸介の名前を聞いた彼女は、なんとこんなことを言うではありませんか。
それじゃ、キミが優介くんのお兄さん?
……ずっと幸介が24区に忍び込んでは探し続けていた優介。
全く手がかりすら見つからなかったにもかかわらず……彼女は優介を知っていると言うのでしょうか!?
なんで知ってんだ!?弟は、優介はどこにいる!?
その問いかけには、花村花子は答えてくれました。
ただ、その答えは求めていたものではありません。
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そうだな、私がキミのことを好きになったら教えてあげる。
そう言うと彼女は幸介をつかんでいた手を離しました。
幸介は真っ逆さまに落下し……下にあった水たまりへ。
直後、24区の立ち入り禁止区域ギリギリの場所の水たまりから吐き出されたのです。
なんだよそれ、一体どうなってんだ?
つーか、なんで花村が優介のこと知ってんだ?
考えても答えが出るはずもなく……

翌日、幸介は花子本人に聞いてみることにしました。
相変わらず学校の花子は、幸介に話しかけられただけで驚いているようですが……
幸介の、昨日のこと覚えてるかという問いかけにはしっかりと答えてくれました。
プリント拾ってくれてありがとう。
今日はぶつからなかったね!
にっこりと笑ってそう答えると、そのまま立ち去って行く花子。
やはりあの24区の花村花子と、学校の花子は別人なのでしょうか。
そんな考えもよぎった幸介ですが……見つけたのです。
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あの花村花子にも確かにあった首筋のほくろを!!
幸介は確信します。
間違いない、やっぱりあれは……!




というわけで、24区の中を闊歩する花子さんと、彼女に翻弄される幸介の様子を描いていく本作。
この後、二人の花子さんは何者なのか、24区は何なのか、優介はどこに行ったのか……それらをはじめとした、様々な謎に迫っていくことになるのです!!
話が進んでいくにつれ、謎はどんどんと増加。
断片的に見えてくる事実の様なものもあるのですが、まだまだこの第1巻の時点では物語の全体像はつかめません。
ですが、だからと言って物語の展開が遅いかと言えばそんなことはないのです!
徐々にあかさ荒れて行く24区のルール。
姿を現す驚きの人物。
花村花子の不可思議な行動……!
それらがどんどんと描かれていき、着実に物語は進んでいくのです!!

吉富先生の人気作「地球の放課後」めいた荒廃した世界観と深まっていく謎。
つかみどころがないながら、それも魅力的な花村花子と言うキャラクター。
吉富先生の気合が感じられる描き込まれた作画と、ちょっとだけ挿入されるサービスシーン……
そんなたくさんの要素が詰め込まれた本作、今後が楽しみでなりませんよ!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!