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今回紹介いたしますのはこちら。

「ときめきのいけにえ」第1巻 うぐいす祥子先生 

講談社さんのKCDXより刊行です。


さて、コミカルとグロテスクを織り交ぜたホラー漫画を描き続けていらっしゃるうぐいす先生。
本作は当然といいますかやはりといいますか、ホラー漫画なのですが……
うぐいす先生初めてとなる、一話から数話でワンエピソードが終わる読み切り型の作品ではない、一本のお話が続いていくストーリー漫画の連載作品となるのです!!



女子に大人気のさわやかイケメン、花水木くん。
ある日突然、自称「地味で目立たない石ころ」の様な女子である、神業寺マリは彼に告白されてしまいました。
学校中の様々な人々を驚愕させたこの事件……事の発端は、少し前に起きたこんな出来事だったのです。

溶質の片隅でひときわ陰鬱なオーラを纏った三人組。
それは、マリと彼女と趣味のあう友人二人の、クラスでも特別目立たないグループです。
彼女達が集まって何をしているかと言いますと、彼女たちの敬愛する蛤ハム子先生の描く漫画に関してのあーだーこーだのとりとめもない話です。
それに加えてこの三人組の話題に取り上げられることが多いのは、マリが自分で描いている漫画の講評です!!
いかにもと言った少女漫画らしい絵柄で描かれるその漫画。
その日もかきあげた新作の講評を行うことになりまして……友人二人が読み終わるのを、固唾をのんで見守るマリ。
また投稿してみようかと思うんだけどどうかな、と二人が読み終わったころに尋ねてみますと……
二人の感触は、ハッキリ言って微妙でした。
大分読みやすくなったとは思うけど、恋愛漫画なのに挿入される唐突なバイオレンスは必要なのか?
……マリは刺激があった方がいいと思って入れたのですが、確かに恋愛漫画にバイオレンスは必要ないかもしれません。
そこはそれとしまして、次に気になってくるのはヒロインの相手役。
どことなく……花水木に似ているのです。
漫画の話をしている間も、ちらちらと花水木に視線を飛ばしていたことからも、マリが花水木を気にしているのは疑いようもありません。
ですが花水木……ルックスは抜群なのですが、ニューヨークやロサンゼルスが国だと思っていたほどアレな頭脳の持ち主でして。
それだけならまだしも(?)、そのルックスゆえに花水木は女子たちに常に追いかけ回されているほどの人気者!
クラスの面々に「トリオ・ザ・ダークネス」などと呼ばれているマリたち三人組からすれば、とてもとても手の届く存在ではないのです。
本当にそう言うのじゃないから、ワタシみたいなミジンコが相手にされるわけないし、うちは親がそう言うの厳しいから……と、アレコレ理由を並べるマリ。
とりあえずこのトリオ・ザ・ダークネスには、漫画さえあればいい、という結論にたどり着くのでした。

放課後、友達と別れ、その足で本屋さんによっていき、蛤ハム子の最新短編集を購入して家路に急ぐマリ。
すると、なんという事なのでしょうか。
道の真ん中で
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あの花水木くんが血まみれで倒れているではありませんか!!
必死に彼を励ましながら、救急車やパトカーを呼ぶマリ。
救急車がたどり着いて花水木を運んでいく間も、マリは彼の手を握って励まし続けまして……

マリが癒えについたのは、すっかり日も暮れた頃でした。
門をくぐると、庭ではマリの弟、サトルが三匹の大型犬と遊んでいるのが見えました。
サトルは毬を見るなり、お姉さまお帰りなさい、と笑顔で出迎えるのです。
サトルと一緒に家に帰ると、お手伝いさんがお出迎え。
旦那様がお待ちですよ、といわれましたので、マリは父親の下に向かってただいまと挨拶するのですが、父親はマリの帰りが襲うのに腹を経っているようです。
同級生が事故に遭っていて、と説明するのですが、父親はその言葉が言い終わるよりも早く、お前が他人の問題にかかわる必要はない、と冷たく遮ってしまうのでした。

その夜、床に就いたマリは花水木のことを考えていました。
彼は大丈夫だろうか?
そんな心配から、次第にマリは自分が花水木を意識し始めたきっかけのことを思い出していきます。
学校で掃除をしていたマリに、突然先生見なかったかと話しかけてきた花水木。
見ていませんが、と答えると、そっかありがと、と立ち去ろうとした花水木、突然立ち止まって毬を見つめ始めます。
直後、マリの髪にそっと手で触れ……
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白髪見っけ!と一本髪の毛を引き抜いたのです!!
……実はそれ、光の加減で白髪に見えただけで普通の髪の毛でして。
花水木は顔を青くして、ごめん!と素直に謝ってくれたのですが……
前々から花水木のことをかっこいいとは思っていたマリ。
そんな彼が期せずして自分の髪に触れてくれた。
些細ことでも、彼女には大きな事件だったのでしょう。
それ以来、マリは花水木を意識するようになってしまったのです。
当時の事を思い出し、眠れなくなってしまったマリ。
止む無く眠気が来るまで今日買ってきた漫画でも読もうとするのですが……そう言えば、漫画を持って帰ってきた記憶がありません。
あれ?漫画は?
マリはぽかんと口を開けてそう呟くのですが……

一週間後。
頭に包帯はまだ残っているものの、花水木は元気に学校に登校してきました。
予定より早めに退院させてもらったんだそうで、授業嫌いなお前がどうして、と男友達には不思議がられる花水木。
彼が予定より早く学校に来たのは、ある人物を探すためでした。
自分の手をずっと握って、励まし続けてくれた女生徒。
名乗りもせず、持っていた漫画も忘れて立ち去っていったと言う彼女を見つけるために、花水木はやって来たのです。
そしてその女性とは、すぐに見つかりました。
おぼろげな意識ながら、しっかりとその脳裏に彼女の顔は焼き付いていたようです。
一目見るなり、その人物が彼女だと気づいたのです。
花水木は、蛤ハム子の新作短編集を差し出しながら……マリにこう言ったのです。
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俺と、付き合ってください!!
入院中ずっと頭から離れなかったんだ、俺を助けてくれたキミのことが。
……騒然、とすらならず、絶句するばかりの周りにいたギャラリーたち。
思いもよらない逆転満塁ホームランに、トリオ・ザ・ダークネスの二人は思わずガッツポーズをとっていました。
マリは、ギュッと返してもらった単行本を握りしめ……
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お断りします、と答えたのでした……!!!
……花水木と何の憂いもなくお付き合い出来たら、どんなに素敵なことでしょう。
その日、自宅で夕食中、彼女はずっとうなだれていました。
食事もまともにとらないまま、席を立とうとするマリ。
すると父親は、マリを呼び止めて、こう尋ねました。
学校へ通わせてやる条件を言ってみなさい、言いなさい!!
……マリはうつろな表情でこう言いました。
「目立つことなかれ」。
「恋することなかれ」。
父親は言うのです。
我々は影に生きるモノ、光を浴びれば滅びるしかない。
日々静かに誰の関心も引くことなくやり過ごせ。
恋愛感情は判断を曇らせる、我々に必要なの蜂のつながりのみ!
決して他人に心を許すな!!

こんな家に生まれたくなかった。
マリは一人、孤独に涙を流します。
「こんな家」では、日常的にこんなことが行われています。
父親が、一人地下室へ向かうと、そこにいたのはしばりつけて拘束され、目隠しされ、口をふさがれた女性が。
父親は、そんな彼女をどこかへ連れ出し……
そして翌朝、サトルが飼い犬たちに朝食を与えていました。
バケツに入っていたのは、まだ血の滴る新鮮な……内臓。
犬たちがそれを貪る姿を見てにこやかに笑っているサトルですが、その目を一層輝かせたのは、犬に与えた内臓の入ったバケツの中に、歯が落ちていたのを見つけて拾い上げた時でした。
その歯は、どう見ても……人間の、歯。
ということはその内臓は、人間の……?
新鮮だったと言うことは、昨晩父親が連れ出した……!?
マリはそんな家の中で唯一安心できる空間かもしれない自分の部屋で、必死に漫画を描いていました。
早く漫画家デビューしなきゃ。
早く。
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早くデビューして、この血生臭い家から出なきゃ……




というわけで、うぐいす先生初のストーリー漫画となる本作。
この後もマリと花水木の恋と、神業寺家の忌まわしき家族模様を軸に物語は進んでいくことになります。
花水木は基本的にものすごくいい奴なのですが、頭はからっぽです。
ですが空っぽだけに、マリと決めたからにはマリへの想いを貫こうとしているようです。
マリは、付き合えばもちろんどうなるかわかりませんし、花水木が自分に言い寄っていると言う事実が父親たちに知られでもすればその時点で彼に危険が迫ることをよくわかっていますから、とにかく拒絶するわけです。
めげずにアプローチをかけてくる花水木、花水木を遠ざけながらなんとか現状を打破しようとするマリ。
そんな二人の関係が描かれていくのです。

マリと花水木の関係とともに軸となるのが、神業寺家の物語です。
マリの家には、父親とサトル、お手伝いの安田さん、そしてお母さんとマリのお兄さんが生活しています。
父親や悟の異常性はこの第1話でもわずかに垣間見えましたが、他の人物の強烈な個性を持つ人物ばかりです。
蔭の存在だと言う神業寺家の異様で血生臭い家業を、笑顔でこなす家族たち。
果たしてこの中でマリは、正気を保ち続けることができるのでしょうか。
彼女の味方をしてくれるものがいるのでしょうか?
この第1巻の内から、神業寺家のおぞましい部分が早くも噴出し、激動の予感のする出来事が巻き起こっていき……
ホラーと恋愛、どちらも見逃せない内容となっているのです!!
うぐいす先生らしいグロテスクな描写と、常軌を逸した登場人物、そこかしこにちりばめられたコミカルな要素。
うぐいす先生の描くラブコメ少女マンガ(自称)、今後の展開からも目が離せません!!




今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!