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今回紹介いたしますのはこちら。

「君が肉になっても」 とこみち先生 

集英社さんのヤングジャンプコミックス・ウルトラより刊行です。



とこみち先生は14年にフレックスコミックスさんの漫画賞を受賞し、デビューした漫画家さんです。
デビュー作でもある「ゆーあい」をコミックメテオにて連載後、芳文社さんや集英社さんの雑誌で読み切りを発表、竹書房さんのまんがライフで「見上げるあなたと星空を」連載されました。

そんなとこみち先生が20年にウルトラジャンプニコニコ版にて短期連載をしたのが本作。
先生は一風変わった仕掛けのある作品を得意としておりまして、本作もやはり驚きのギミックが用意されています。
気になるその内容はと言いますと……?



路地裏から何やら奇妙な音が聞こえてきました。
そっと覗いてみると、そこには大きな肉の塊のような何かが、何かを食べていました。
物凄い血と、物凄い匂い。
これは夢なのか現実なのかもわからない異常なものを目の当たりにしたひな子は、ただただその光景を見つめ続けるのですが……
その時、その肉の塊に見覚えのあるものがくっついていることに気が付くのです。
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蝶の形をしたピアス。
……まき?
思わずひな子は、友人の名をつぶやくのでした。

翌日、通学途中の電車に揺られながら、あのピアスのことを思い返していました。
あれはまきが、飽食の学校に通っている従姉妹に作ってもらったものだ、と言っていた物……のように見えました。
似たデザインの物も当然あるとは思うのですが……
気になって、帰った後まきにメールをして聞いてみたものの、返信は無し。
それ自体はそれほど珍しいことでもありませんから、とにかく今日学校にまきが来ているかどうかで判断することにしたのでした。

下駄箱であっさりとまきに出会うひな子。
確認してみると……やっぱり彼女の耳についているピアスは、あの肉の塊についていたものと同じです。
やっぱり見間違いじゃない、ということは……
どうなるの?と本人に突然訪ねてみるひな子。
ですがいきなりそんなことをいわれても、まきからすればどうしていいかわかりません。
時間ないし先行くよ、と歩きだすまきを見送りながら、まきに何かあったわけじゃないのか?従姉妹のピアスが他にもあったのか?と、とりとめもなく考えるのでした。

ひな子はまきを焼肉に誘いました。
急なお誘いに戸惑うまきですが、昨日変な肉を見ちゃってから肉が食べたくてしょうがない、というひな子はしつこく誘ってきます。
そこでひな子は、実は撮影していたあの肉の塊の画像をまきに見せながら、無性にホルモン食べたくならない?と尋ねてくるのです。
ついでに(?)ここにあるピアスがまきと一緒なんだよね、などと尋ねますと……
まきは言うのです。
なんで?
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なんで、私の夢の写真持ってるの?

何かが繋がりました。
聞いてみればまきは昨日の夜、夢を見たのだと言います。
気付いたら外にいて、いつもより視界が低くて、歩いている感じもおかしかった。
気持ち悪い夢だなと思っていたら、見せのウィンドウに映った姿があの肉の塊だった。
そしてすごくお腹がすいていて……
気付けば目の前に人がいて、真木を見て驚いていた。
そりゃそうだよね、と思いながら……その人を……
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食べた。
目が覚めたら返り血も何もなく布団の中だったので、やはり夢だとまきは思っていたのです。
もしかして今の状態が夢なのか、とほっぺたを(ひな子が)つねってみても当然覚めることはありません。
結果……何一つわからないまま、と言うわけです。
夢と現実のつながりはもとより、その夢で食べた人はどんな味がしたのか、ということも気になってしまうひな子……
そんな状況なのになお焼肉に誘ってくるのは、さすが彼女というほかありません。
肉焼きながら対策考えよう、というひな子のですが……
まきは、またなるなら対策は必要だけど、またなるとは限らないよね……?と不安そうに尋ねてきまして……
うん、とひな子は笑顔で頷いてくれまして、それはまきのささやかな救いになったようです。
それでも焼き肉を食べに行くテンションにはならず、今日はまっすぐ帰って休む、とまきはひな子と別れるのです。
……てきとうに誘って行くかな、と日菜子はまだ焼肉に行く気満々のようですが!!

その日の夜のこと。
日菜子の前に、あの肉の塊が這いずっていました。
昨日より大きくなっている気のするその肉塊に、ひな子は声をかけてみます。
まき?
すると……肉の塊の巨大な口の中から、こう聞こえてきたのです。
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ひ……な……
……やはりこれはまきなんだ。
と納得すると同時にひな子は、しゃべった!!と、そっちの方に驚きの声をあげるのでした!




と言うわけで、夜眠ると人を喰う肉塊になってしまうまきと、怖がりもせずそんなまきにくらいついて行くひな子の二人を描いていく本作。
眠れば怪物になってしまい、人を食べてしまうかもしれない。
こうなっている間の記憶はあるまきは、当然人を食べてしまうことを恐れます。
ひな子はこんな調子なので驚きはしませんが、一つ間違えれば彼女だって食べられてしまうかもしれないのです!
眠ることはできない、でも眠らずにいることなどできるはずもない。
まきは苦悩し、そして衰弱していきます。
ですがそれでもひな子はまきにくっついて、彼女を責めるでもなく励ますでもなく、怪物にできるだけなら無いようにサポートしながら普通の友人の様に接してきて……!!
そんな二人の様子を、コミカルに、ショッキングに紡がれていくわけです!

序盤は二人の不思議で恐ろしく、なぜだか暖かな生活を描いていくのですが、中盤から物語の様相がどんどんと不穏になって行きます。
「変身」はまきとひな子だけの問題ではなくなっていき、学校の友達を、そしてそれ以外の人々も巻き込んでいくことに。
どんどんと絶望は増していき、それでもひな子の笑顔は変わることなく……
予想はるかに超える展開となって行くクライマックスから、心に独特の読後感を残すラストはまさに必見ですよ!!

さらに単行本には、変身以前を描く特別編と、完結後の様子を描くエピソードが描き下ろしで収録!!
ネットで全話読んだ方も是非とも読んでいただきたい、短いながらも心に残るエピソードになっているのです!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!