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今回紹介いたしますのはこちら。

「新日ファンタジー」第2巻 小田扉先生 

小学館さんのコロコロアニキコミックスより刊行です。


さて、「団地ともお」の小田先生が、新日本プロレスを題材に描くショートギャグとなる本作。
「男ロワイヤル」などの作品でも知られているように、プロレス愛に満ち満ちている小田先生、今回はどんなお話を描いて下さるのでしょうか!?



空き地でケンカをしている不良少年二人。
ですがそこに、ちょっと違和感のある奇妙な人物が居合わせていました。
縦じまのポロシャツに黒いズボンをはいた、ひげの似合うダンディさん。
彼はじっと不良少年二人を見つめておりまして……
不良少年がそれに気が付き、見せものじゃねえぞ、どっかいけ、と彼の襟首をつかみあげました!
するとダンディ、ノーノー!とそれを諫めだしまいた。
それでも不良少年が襟首を離さずにいますと、ワン、ツー、とカウントをし始め……
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ファイブとともに、不良少年を殴りつけたのでした!!

彼の名はタイガーハットリ。
彼は先日、長く勤めていた新日のレフェリーを引退し、隠居生活を始めていました。
ですがハットリ、家でなぜか求人誌を読んでおります。
何でも今までずっとプロレスに関わり続けていたため、違うことがしたい、と思ったのだそうです。
奥様は、もうゆっくりすればいいのに、と心配そうに見つめるのですが……

ハットリはシルバー人材センターに向かいます。
その道中、また先日の空き地で同じ不良少年が喧嘩をしているのを目撃。
その片方が額から流血しているのを認めますと、ブレイク!と割って入り、ユーオーケー?と疵の具合をすかさず確認。
このくらい平気だよ、と不良少年が答えますと、ハットリはファイッ!と喧嘩の再開を促し、今度こそシルバー人材センターに向かうのでした。

長い間戦いを見届ける仕事をしてたから、そんな経験を生かす仕事を。
割とむちゃな希望を出すハットリでしたが、センターの係の人はちゃんと考えてくれました。
戦い、戦闘、セントウ……
そうしてあっせんしてもらったのが、スーパー銭湯の店員さんでした。
ですがここで、ハットリのレフェリーとしての悲しいサガが顔をのぞかせてしまいます。
リラックスしていたお客さんがあおむけになって眠り始めた瞬間、
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その枕もとでワン!ツー!と床を叩いてカウントし始めてしまい……!!

残念ながらと言いますか、当然といいますか、首になってしまったハットリ。
奥さんは、仕方ないわよ、向いてなかったのよ、と優しく諭してくれまして……さらに、近くでパートを募集しているところがあって、と別のところを教えてくれたのです。
レフェリーをやっていただけあって、目配りが得意なハットリ。
そんな彼の特技が生きるその職場は……
幼稚園でした!!
大勢の子供たちが庭で遊ぶさまをしっかりと見届け、滑り台から落ちてしまいそうな子供を見つけるといち早く察知し、落下先に回り込んで優しくキャッチ。
さらにその少年にオーケー?と確認するフォローも欠かしません。
そして、子供同士のいざこざを発見すれば、ノーノー、と諫めた後カウントをはじめ、ファイブの前に大人しくあやまちを認めた少年にグッドボーイ!!と頭なでなで。
仕事の合間には空き地の不良少年の喧嘩のレフェリングを行い、今度は子供たちと一緒にお昼寝。
この仕事はハットリにベストマッチだったようで、幼稚園の職員の皆様もにっこりです。

そんな毎日が続いたある日の事。
空き地の不良少年の喧嘩に、タイムアップ、ドロー!と引き分けの裁定を下したハットリ。
すると不良少年、帰ろうとするハットリを呼び止めてこんなことを言うのです。
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俺たち、今日卒業式だったんだ。
ケンカもこれで卒業だ、なんか、じいさんに仕切ってもらいたくてケンカ続けてた節もあるな。
さわやかな笑顔で告げられたそんな言葉。
ハットリは踵を返して少年たちの元に戻ると……
バッと両者の腕をあげました。
そして、今度こそその場を立ち去って行くのでした。

少年たちもケンカを卒業し、ハットリもレフェリーを卒業しつつあるそんな時の事。
買い物帰りのハットリの腕に、そっと奥さんが腕を絡めてきました。
照れくさいハットリは、ノー。ブレイク!とそれを制獅子でカウントを始めるものの……
ファイブまでカウントしても、ハットリは何も言えませんでした。
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そして二人は……腕を組んだまま、街へ消えて行くのです……




と言うわけで、待望の第2巻刊行となった本作。
タイガー服部レフェリー引退記念(?)作品の他、様々なレスラーたちの活躍がバッチリと収録されております。
実はものすごくまじめな性格であるタグチ選手が、あれだけはっちゃけるために用意した「スイッチ」とは?
ショー選手とヨー選手がロッポンギ3Kになるまでに歩んできた道とは?
みんな仲良しロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンの日常とは?
ケダモノそのものかと思われていたイイヅカ選手の見せる意外な一面とは……?
そんな様々な選手たちの様子が、シュールでコミカルに、ついでにハートフルに描かれていくのです!!
小田先生の持ち味とプロレス愛がたっぷりと堪能できる、プロレスファンのみならずとも楽しい一冊となっております!

コロコロアニキで連載され、当初は20年5月発売とされていた本作ですが、実際に刊行されたのは7月。
何があったのかなと思っていたのですが、なんと同日発売のコロコロアニキコミックスの中で、「全2巻」と表記がされておりました!!
単行本には、第2巻刊行時に雑誌掲載されていたエピソードが全て収録されておりますので、どうやら本作は本当に完結となってしまったようです。
急な完結は非常に残念ですが、出版社さんにも小田先生にもいろいろ事情があるでしょうし、やむを得ないと言えばやむを得ないのでしょうか……
それでも、プロレスラーにとって引退なんて日常も同然!
いつか戻ってくる日を信じて、待つとしましょう……!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!