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今回紹介いたしますのはこちら。

「しょうもないのうりょく」第1巻 高野雀先生 

竹書房さんのアクションコミックスより刊行です。


さて、普段は陰鬱ポエム煮凝り漫画(高野先生自称)をメインに描いていらっしゃる高野先生の最新作となる本作。
本作は最近の主戦場であった祥伝社さんではなく、竹書房さんの、それも4コマ漫画誌で連載の日常漫画となっております。
掲載誌と同じように、その作風も今までとは違うようで……?



とある会社に勤める、眼鏡の似合う地味系女子の星野さん。
そんな彼女の下に、主任の加地さんが相談を持ち掛けてきました。
それは、今回の募集で届いた履歴書に関してのこと。
ある人物の「異能」の欄に、こんなことが書いてあったのです。
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「最大3人までの技能適性判断」。
それを見ると星野さん、これは高スペック、と唸ってしまいました。
加地さんはこの「異能」、うち程度の会社では持て余しそうで……と困ってしまっているのです。
逆に別の人の異能蘭に書いてある「ポスター等をまっすぐ貼ることができます」というものは、これくらいだと安心できる、と高評価……なのですが、この人はダメ、と加地さん。
大事なところを書きミスってる、というのです。
流石見つけるの速いですね、と星野さんは加地さんを褒めますが、当の加地さんからすれば、自分の異能はそれぐらいだから……とのこと。
とはいえ星野さんの異能は「書類を崩さずに積み上げること」というちょっぴりしょぼいものなので、「それくらい」の能力でも羨ましかったりするのです。

この世界の住民には、ほとんどすべての人が特殊な能力「異能」を持っています。
ですがそのほとんどは星野さんや加地さんのように、ほんのささいな、しょうもない能力ばかり。
みんなその異能を活かしたり活かさなかったり、活かしようもなかったり……とにかく、世界は異能がごく当たり前の状態で動いているのです。

で、その星野さんですが……実はもう一つ異能を持っています。
依然お医者さんで受けられる異能チェックを受けた際に発覚したのですが……
なんとその能力、この世界ではかなり有能な
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「他人の異能がわかる」異能!!
実は子供のころから自覚がなくはなかったのですが……お医者さんが言うように、あまり精度の方は高くないようで。
100%わかる、という事でなければ、履歴書にも書きづらい……と言うわけで、星野さんの異能は「書類を崩さずに詰めること」だけになっているのです。

実際そうしたおかげで、星野さんは比較的安穏と暮らすことができています。
たまに見る、あなたの異能を当てます、というような広告を見ますと、異能を仕事に活かすのは大変そうだ、この異能、私には趣味程度でいいや、と胸をなでおろすのです。

この星野さんの勤めている会社、異能を仕事に活かそう!という社風ではございません。
エンジニアの佐々木さんは「さっきまでいた場所がわかる」異能ですし、同じ部の多部さんは「カロリーがわかる」異能、財前さんは「目当てのものがすげだせる異能」……
そんな取るに足らない異能ばかりで、さらにその伊能が仕事に全く結びついていない、そんな会社なのです、が!
やはりすごい異能の持ち主というのはどこかに隠れているもののようです。
診断じゃなくて異能を当てる人いるじゃん、という多部さんが降ってきた話題にぎょっとする星野さん。
幸い自分のことを言っているわけではなく、テレビでそう言う話が出ていて、そんなすごい異能の人がウチにもいたりするのかな、というお話だったのですが……
実際取るに足らない異能が多い中、自分の異能をわざわざ診断しない人も少なくはないようで。
開発部の藤原さんもその手なんだそうですが……
しょっちゅう風邪をひいている彼、「病気が悪化しない程度に治る」異能なんじゃないのか、などと同僚たちは笑いあっておりました。
が。
彼の異能は
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「不老不死」だったりしまして……!!!
超レア、なんてもので片付けてはいけない気もする、異能の範疇を超えた異能なのです!!
藤原さんは、たまに病気が悪化することもあるけど、病院行くほどじゃない体調不良がずっとスね、とその異能が当たりかもしれない、とふわふわした返答をしています。
体が弱いんだろ、運動しろ、などと言われても、運動嫌いなんで、と受け流している藤原さん……
彼がその異能に気が付く日は来るのか?来なそうだなあ……
そんなことを一人考えていた星野さん、来ないほうが幸せですよね、とつい口に出してしまいました。
一同からすれば何の脈絡もなく出た言葉に聞こえてしまうそのセリフ、星野さんは独り言ですとごまかすのです。

並べて世は事もなし。
今日も今日とて、星野さん達は普通にお仕事を頑張ります。
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「自由に半休をとれる」異能はないかなぁ、などとぼやきながら!



というわけで、陰鬱なことは起こらない、ちょっとした事件がたまに起こるくらいの日常を描いていく本作。
この後も星野さんは、隠れ異能でひっそり楽しみながら、仕事に遊びにと頑張ってまいります。
基本的には、異能がある世界の何気ない日常の一コマを描いていく形になるのですが……
そんな日常の一コマにちょっとした波紋を起こすのが、藤原さんの存在なのです!
色恋沙汰とは縁のない、友達と遊んだり、同僚と飲み会に行ってみたりという日常を過ごしていた星野さんなのですが、レア異能だからとちょっと目を引いた藤原さんが、なぜか気になってしまい始め……!
急展開とはなりませんが、じわじわと二人の関係が変わっていきそうな、そんな予感を感じさせるほのかな恋愛要素も香ってくるのです!!

そんな日常たまーに恋の予感、という感じの本作ですが、事件が起こらないわけでもありません!!
平和なはずの会社に、大きな波紋が起きることも!?
本作のコンセプトからも、とんでもない大事件にまではならないものの、かといってとても安心とは言えない事態にはなってしまいまして……!!
作風は違えど高野先生ならではの味わいはしっかりと感じられる本作、楽しく読める一冊となっております!!
今後の星野さんと藤原さんの動向も気になりますし、個性も異能も豊かな同僚たちの活躍も待ち遠しい、本作の今後が楽しみですね!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!