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今回紹介いたしますのはこちら。

「メイコの遊び場」第3巻 岡田索雲先生 

双葉社さんのアクションコミックスより刊行です。



さて、人の心に入り込み、「壊す」ことを生業にしているメイコ。
ですが今までいなかった、友達ができたことをきっかけに、彼女の心に何かが芽生え始め……



夜の闇に紛れ、三人の男が金庫を運んでいます。
その中の一人に、依然メイコと会ったことのある大男、ミノルも混じっています。
どうやら三人、ヤクザの依頼でこの金庫を盗みだし、その依頼主の下に運んでいくのが今日の仕事のようです。
そんな仕事ですから、危ない仕事である覚悟もしていたのですが、予想よりも簡単、というよりも、全く問題なく金庫をトラックに積み込むことができてしまいました。
金庫の中身は……噂によれば10億円以上が行っているのだとか。
運転手をしていたシミヤンはそれを聞くと流石に驚き、ここに来てやっと恐ろしさがこみ上げてきたようです。
よくこんな人数で盗みだせたな、とつぶやくシミヤン。
すると、少数精鋭の方が一人当たりの取り分も多くなる、とリーダー格の男は答えるのです。
そいつにも金渡すんか?
……シミヤンはミノルを見ながらつぶやくように問いかけます。
リーダー格の男はと言いますと、もちろんだ、と二つ返事!
稔の力が無かったらこうはすんなりいかなかった、と言うのです。
男はミノルの幼馴染だそうで、ミノルの事を良く知っています。
実の親がまともに面倒を見てくれず、メイコも会ったあのおばあさんがずっと面倒を見てくれていたらしいミノル。
ですが先日あのおばあさんが急になくなってしまったそうで……
一応親元には戻ったのですが、やはりほったらかしにされていたとか。
そこで男が一肌脱ぎまして、この仕事で一山当てて良い施設に入れてやろうとしているのだそうです。
そんな意外に人情溢れる話を聞いたシミヤンは……10億を三人で分ければ3億3333万……と皮算用を始めました。
いきなり分け前の話になりましたが、もちろんこの金を三人がまるまるもらえるはずがなく。
もし失敗したり、持ち逃げなんかしたりすれば、どんな報復が来るかわかったものではありません!
仕事さえこなせば、さすがに10億とはいかないものの、かなりの報酬はもらえることになっています。
男とシミヤンは、その報酬のために車を恥らせるのでした。

約束の場所にたどり着いた三人、
ですがまだ相手は姿を見せません。
皆ミノルのことをあれこれ言うが、こいつはちゃんと俺達の言葉を理解しているんだ、とミノルのことなどを話して時間つぶしをしていますと、稔はトイレに行きたくなったようで、もぞもぞとし始めました。
ここじゃなくて海にして来い、落ちるなよ、と告げますと、ミノルは大人しくそれに従って海の方へ行くのでした。
……二人きりになると、男はこう言いだしました。
まあもともと計画外の助っ人だから、あいつには数万円で良いだろう。
最初はミノルのためにしてやった仕事だとでも言いたげだった男ですが、やはりこう言った裏の仕事に手を出す人間なだけに、いざとなればこんなものなのでしょう……
シミヤンも、それでどこの施設に入れるんだ、と笑うのでした。

まだ相手が来る様子はありません。
シミヤンもトイレに行くと車を降りて行きました。
……ところがシミヤン、車を出てすぐピタリと動きを止めてしまいました。
扉も締めずに突っ立っていますので、閉めろよと男が身を乗り出すと……
シミヤンの前には
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メイコが立っているではありませんか!!
そして気が付くと、男もまたメイコの精神世界に取り込まれてしまうのです!!
精神世界の中で、シミヤンは紙の様なものに全身を包まれてもがいていました。
男が必死に声をかけるものの、シミヤンはすぐに動かなくなってしまい……
戸惑う男に、メイコは顔色一つ変えず、じゃんけんパー、と紙をひろげ、シミヤンと同じように男をつかんでしまうのです!!
メイコの仕事はこうしていつものように滞りなく終わった……かと思いきや、どうしたことでしょうか。
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精神世界に、ミノルがいるのです!
そしてミノルは……
きみはずっとこんなことをしてきたの?と、流ちょうに語りかけてきて……!!
自分が壊すまでもなく、ミノルがすでに壊れている、と思っていたメイコは、彼が壊れていなかったことに驚いたようです。
ミノルは紙に包まれ苦しんでいる男を見ると、優しくメイコに語り掛けてきました。
こんなことしちゃ駄目だよ。
こんなことよくないよ。
するとメイコの中のもう一人のメイコが顔を出し、強くミノルに反発。
うるさい、お前に何がわかる、と左手を大きな鋏にしてミノルの首に突き付けるのです!!
しかしミノルは動じません。
この人もぼくの友達なんだ。
助けて欲しい。
助けたい。
ミノルの純朴で優しい心に触れ、メイコのもう一つの顔は徐々に力を失っていきます。
そんな様子を気に留めることもなく、ミノルは続けました。
音が聞こえる。
風の音だ、もうすぐ春が来る。
家を建てよう。
小さいけど暖かい家。
屋根に鳥が巣を作る、鳥や風が種を運んでくる、家の周りには綺麗な花が咲く。
花を摘んで髪飾りを編もう。
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きっと君に似合う。
にこりと笑うミノル。
すっかりもう一人の自分が鳴りを潜めたメイコは、その髪飾りをつけてもらって……

いつものように仕事の後始末に来たハンチング帽の男。
ですが始末しているはずのターゲットが一人足りないではありませんか。
しかもそいつは、涙が来たまさにその時、金庫の入ったままの車に乗ってその場から去っていってしまい……!!
……組織は金庫を盗むだけ盗ませて、かかわったものを始末して一人占めにするつもりだったのでしょう。
ですが、メイコがあの男を見逃してしまったせいで、その目論見が全て崩れたのです。
……組織が仕事に、それも10億円と言う超高額のそれをふいにしたものを許すでしょうか……?

組織に戻り、報告を行うハンチング帽。
報告を聞いた組長は……ごとりと音を立てる、重い金属が入っている包みを机の上に置きました。
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わかっとるやろ?
父娘とも己はが始末つけェ。
苦楽を共にした、メイコとその父の命を握ることになってしまったハンチング帽は……!!



と言うわけで、クライマックスを迎える本作。
今まで一応は味方であったはずの組織から見限られてしまったメイコ。
一見無敵に見えるメイコではありますが、弱点もないわけではありません。
通常メイコは、その左目を相手が見ない限り精神世界に取り込むことができません。
遠くから狙撃されたり、周囲を囲まれたり、目隠しをしてやたら滅多羅刃物を振り回されたりしたら、メイコに打つ手はないのです!
さらに言えば、ハンチング帽が本気でメイコを殺そうとすれば……あっさりとだまし討ちをされてしまうことでしょう。
果たしてメイコとメイコの父親の運命は……!?

とうとう完結となる本作ですが、この第3巻で最も注目したいのは、やはりメイコの心の動きでしょう。
友人と遊ぶうちに育まれていった、年相応の少女らしい心。
今巻の中でも、メイコはどんどんと心を育てて行きます。
あの能面の様な表情しかなかったメイコが、時折素晴らしい表情を見せる様になり……
そんなメイコの成長が、ミノルの声を聞く理由になったのは間違いないでしょう。
クライマックスに向かっていくにつれ、様々な顔を見せてくれるようになるメイコ。
彼女の成長と、その先にあるフィナーレをぜひともご覧ください!!

……そして岡田先生の溢れまくるつげ義春先生愛もご堪能ください!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!