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今回紹介いたしますのはこちら。

「フールズ」第1・2巻 皿池篤志先生 

集英社さんのヤングジャンプコミックスGJより刊行です。


皿池先生は04年にヤングマガジンの新人賞を受賞してデビュー曽田漫画家さんです。
デビュー後は何本か読み切りを発表したものの、なかなか連載の機械には恵まれませんでしたが、11年にミラクルジャンプで発表した「チェスターバレー1930」が好評を博し、「レイチェル・ダイアル」として連載作品となりました。
その後「無限団地」などの読み切りの発表を経まして、18年より本作の連載を開始。
隔月刊の「グランドジャンプむちゃ」の連載とはいえ、単行本が一向に出ずファンをやきもきさせましたが、連載開始から1年半を経てようやく1・2巻同時発売で単行本刊行となったのです!

そんな皿池先生の最新作となる本作は、先生の得意とするSFに、能力バトル的な要素を盛り込んだ作品になっております。
気になるその内容はと言いますと……



町は騒然としていました。
街中に
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異形の物体、「バカ」が現れたからです。
いかにも目立たない風体の女子高生、須永文子は初めて生で見る「バカ」に目を奪われていました。
しばらくしますと、その場に黒塗りのセダンが続々とやってきまして、そこから銃を携えた黒服の男たちが何名か姿を現します。
彼らは「交渉課」を名乗り、警察手帳をかざし……一人の男を取り囲みました。
黒服の男に取り囲まれ、銃を突き付けられた男は……自分のことなのか、と戸惑うばかり。
そんな男に、交渉課の面々は淡々と業務を行うのです。
警告1、ソレを消しなさい。
……そんなことを突然言われても、男には何が何だか、消すと言われてもどうしたらいいかわかりません。
交渉課はまったく男の戸惑いを意に介さず、さらに続けるのです。
警告2、ソレを消しなさい。
どうしていいかわからない男は、とにかくその場から逃げ出そうと駆け出すのですが、その首根っこをひっつかみ、地面に転がした交渉課。
そして男を見下ろしながら、全く同じ内容の警告3を出すのです。
消すこともできなければ逃げることもできない、男にできるのは縋りついて命乞いをすることだけ。
男を見下ろしながら、交渉課が次に告げたのはこんな言葉でした。
交渉決裂。
処分。
交渉課は男に銃弾を撃ち込み……
男が息絶えると、「バカ」もまた溶けるように消えて行くのでした。
その様子を見たふみ子の耳にこんな声が聞こえた気がします。
この世界ではバカを出してはいけない、バカになってはいけない。
清く正しく行きましょう、でないとバカになってしまうから。
バカは死ななきゃ治らないから。
文子は思わず、消えゆく「バカ」の画像を撮影し……

教室では先ほどのバカの話題で持ちきりでした。
文子はと言うと、そんな盛り上がりを無視しでひたすらノートにペンを走らせています。
ですが突然、その話題は文子が中心になってしまいました。
誰かが持っていた、先ほどのバカ騒動の動画。
そこに文子が居合わせていた様子が映ってしまっていたのです!
クラスメイトが取り囲み、どんな様子だったかを聞いてきます。
文子はその圧に何も言うことができずに押し黙ってしまうのですが……
そこで文子と昔は仲が良かったものの、最近は他の女子と文子をいじめているクラスメイトの千夏が、それに気がついてしまうのです。
文子がひたすらノートに記していた物。
それは……
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バカをスケッチしたものでした。
本来恐れるべき、忌避すべきものであるバカ。
それをよろこんでスケッチしている。
クラスメイト達は一様に気持ち悪いと文子を罵り始め……やがて、バカってうつるんじゃなかったっけ?バカだ、近寄るな、と文子に罵倒をはじめ……!

その後、いじめはエスカレート。
居場所がなくなった文子がトイレの個室でお弁当を食べていると、千夏たちが上から水をかけてくるなど、わかりやすい陰湿な行為をしてくるようになりました。
文子はそこでやり返すようなタイプではなく、黙って受け入れるだけなのです。
文子には、そんな溜まる一方のフラストレーションを解消する、イケない趣味がありました。
それは人気のなくなった夜、密かに誰もいない高架下に出かけて行って、バカが街を壊す落書きをすること。
退屈な世界、つまらない世界。
こんな世界、壊れてしまえばいい。
そんな彼女のやり場のない怒りは、落書きにぶつけることでひとまずは発散される……はずだったのです。
背後から伸びる、黒い何か。
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それはそっと、文子の方へと伸びてきて……!!!

背後に迫る、奇怪な姿をした「バカ」。
文子は逃げることしかできませんでした。
私、バカになった?
バカになっちゃった、殺されちゃう!!
逃げ惑ううちに、いつしか文子は街中に出ていました。
突如現れたバカの姿に、町の人々はざわめきます。
文子はそんな人々の中に、千夏の姿があることに気が付き、駆け寄って助けを求めるのですが……
当然助けてくれるはずもありません。
ふざけんなよ、と蹴り飛ばされ、千夏はその場から逃げてしまうのです。
このままでは、やがてやってくる交渉課に殺されるしかありません。
だからと言ってバカを消す方法もわかりませんし、これだけの人に目撃されてしまっている今、隠れることもできないでしょう。
どうしよう、と絶望する文子の前に……
一人の女性が現れました。
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だったら、人間やめれば?
話は後だ、車に乗りな!!

彼女に導かれるまま、車に乗ってその場を離れる文子。
彼女……サンディは、車を運転している男、ワタナベとともに、交渉課を振り切ってどこかへと向かいます。
その道中で、サンディは文子に話しかけました。
今機にみとって重要なのは、真実を知る勇気があるかどうかなんだよ。
バカとは一体何なのかってことをね!
そしてサンディの後を受けて、ワタナベが問いかけたのはこうです。
進化についてどう思う?
鳥は飛びたいから飛んだ。
キリンは首を長くしたいから長くなった。
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生物たちの進化は全部、なりたいからそうなった。
その力は一体何なんだ?
……突然の「進化」の話にあっけにとられてしまう文子。
その話がバカと何の関係があるのか、と質問するのですが、そこでしびれを切らしたサンディが割って入るのです。
君は一体、何になったんだい?
その顔は、何とも言い難い……怖気の走るような迫力を孕んでいて……!!




と言うわけで、「バカ」になってしまった文子の物語を描いていく本作。
「バカ」とは何なのか?何故「バカ」になるのか?
そして本当に「バカ」は死ななければならないのか……?
文子はサンディに導かれ、その道を歩んでいくこととなります。
バカの正体が明かされるのはまだまだ先のことになりそうですが、物語はまず交渉課に終われる文子の逃亡と戦い、そして自問を描いていきます。
その中で出会っていく、サンディをはじめとした様々な立場の存在。
それが、今まで自分の体をじっと縮こめて生きてきた文子に、大きな一歩を踏み出させるきっかけを与えるのです!!
文子がバカになり、そしてその生き方を決めるまでの、いわば序章が同時発売となった第2巻の冒頭のあたりまで展開。
そして第2巻からは、いよいよ本作が本格始動を始めます。
文子はどう生きるのか?
バカはどう生きるのか?
文子たちだけではなく、交渉課の内部でも蠢き始める大きなうねりは……!?

掲載誌が掲載誌だけに、次巻が発売されるのはおそらく早くて10か月後くらい。
この第2巻の引きも非常に先が楽しみになっているだけに、早くも続巻の発売が待ち遠しいところ……!!
とにかく今は続巻を楽しみに待つことにしましょう!!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!