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今回紹介いたしますのはこちら。

「白異本 参」 原作・外薗昌也先生 作画・高港基資先生 

日本文芸社さんのニチブンコミックスより刊行です。


さて、ホラー漫画界の重鎮がタッグを組んだ本シリーズもとうとう三冊目。
様々な怪異を描き続けてきた本作ですが、今巻では果たして……?



彼女が最初にそれを見たのは、幼稚園ぐらいのとても小さいころでした。
テーブルの下に潜り込んでお絵かきをして一人遊んでおりますと、誰かが彼女の肩を叩いてきます。
振り返っても、そこには誰もいません。
気のせいだったのかと向き直り、再びお絵かきを再開しようとすると……
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テーブルの前に、バラの柄の服を着た、自分と同じくらいの歳の頃の女の子が経っているではありませんか。
こんな服を着た人に思い当たる人物がいなかった彼女、誰なんだろう、とぽかんとしておりますと、後からそんなところでお絵かきしてると目が悪くなるよ、と声が掛けられました。
声の方にいたのは、お母さん。
はーい、と振り返って返事をして、再び視線を戻すと……
そこにはもう誰もいなくなっていたのです。

次にその女の子を見たのは、小学6年生の時でした。
日曜日に仲良しの子と近所の公園で遊んでおりますと、少し離れた繁みに女の子が経っているのに気が付きます。
あの子ずっとこっちを見てる、と仲良しの子に声をかけたものの、その子が振り返るともうそこには誰もいません。
どこ?ときょろきょろする彼女に、私たちと同じくらいの子で、バラの柄のワンピースを着ていて……と、そこまで説明したところで彼女は、子供の頃に見たあの女の子である事に気が付きます。
その瞬間でした。
バシッ、と音を立てて彼女の背中に何かが当たったのは!
一体突然何が起きたのでしょうか。
後ろを振り返って、自分の背中に当たったものを見てみると……それは、ウサギのぬいぐるみ。
空から落ちてきたの?なんで?と仲良しの子が首をかしげている一方で、そのウサギのぬいぐるみを拾い上げた少女は……あまりにも不思議過ぎる事実に驚いていました。
空からぬいぐるみが降って来た。
それだけならまだ不思議なだけで済んだのでしょう。
そのウサギのぬいぐるみは……少女のものだったのです。
いつもベッドの横に置いてある、お気に入りのぬいぐるみ。
それが、なぜ……?

次に彼女がその女の子に出会ったのは、高校2年生の時。
学校の帰りが遅くなった夜、帰路を一人歩いておりますと……
彼女の目に、とんでもないものが飛び込んできたのです。
あおむけに寝そべった、バラ柄のワンピースの女性。
彼女は地面から数十センチと言った場所に、「浮いて」いました。
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そして、そのまますべるように移動しているではありませんか!!
ワンピースの女は、彼女の後を追いかけるように、歩道橋を仰向けのまま辿ってきます。
不気味なものを感じた彼女は、恐る恐るワンピースの女を気にしながら道を歩いていたのですが……
やがてワンピースの女は、ものすごいスピードで歩道橋の階段を下り、彼女に猛然と迫ってきたのです!!
恐怖にかられた彼女は、叫び声をあげてその場から逃げ出します。
とにかく全力で走り、そして女の姿が見えなくなったところで、物陰に隠れて一息つく彼女。
あれは何なのか?
どれだけ考えてもわかるはずもありません。
彼女は恐る恐る女が追いかけてきていないか確認するため、物陰から顔をのぞかせると……
少し前の曲がり角から、ゆっくりと近づいてくるのが見えました。
あの子だ、バラの柄のワンピース、私と同じくらいの年……
そこでついにあの女の子であることに気が付いた彼女。
ですがその時にはすでに、ワンピースの女は彼女の間近にまで迫って来てしまっていました!!
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うふふふふ。
気味の悪い笑い声とともにやって来たその女……!
彼女は大きな悲鳴を上げ、その場から飛び出して逃げるのですが……
そこに、トラックが突っ込んできて……!!

彼女は、その命をとりとめました。
ですが体はトラックの下に巻き込まれ、めちゃくちゃに。
立ち上がることも、歩くこともできません。
これから先、彼女は長い年月を病院の天井を見ながら過ごすのです。
それがどれだけの期間になるのか……
回復の見込みは、未だわからないのです。
……彼女の頭の中には、あの時ワンピースの女が言った言葉が、脳裏に焼き付いて離れなくなってしまいました。
いやらしく笑ったその後、彼女はこう言ったのです。
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おまえもこうなれぇ。



と言うわけで、外薗先生の忌まわしいお話に、高港先生のおぞましい作画が合わさり、たまらない恐ろしさを醸し出している本作。
今巻でもこのように、情け容赦ない、死の香りがプンプンと臭うお話をたっぷりと堪能することができます!
この他にも、いわくつき物件を改装する業者の体験した恐ろしい話、夜ごと屋根の上を跋扈する「クロイカゲ」にまつわる話、人がごった返す観光地の中で一つだけ空いていた旅館で起こる奇怪な出来事、廃寺で遊んでいた子供たちの前に現れた奇妙な二人……
そして極め付けには、最強の心霊スポットともささやかれる「おいらん堂」に向かう男二人に降りかかる、恐ろしすぎる呪い!!
今巻も今まで同様、いやそれ以上に息をもつかせぬ恐怖が押し寄せてくるのです!!

そして本シリーズを読み続けてきた方にはおなじみ、「外園」が集めた怪異が拡がっていく様が今回も描かれていきます!!
今度はどんな形で外園が登場するのか!?
こちらも見逃せませんよ!!


余談ですが、高港先生が某webコミックで連載していた「新編 恐之本」が、最終回を入稿していたにもかかわらず掲載されず打ち切り、という悲しい事件がございました。
出来ることならそちらの単行本化をこの流れでお願い物でしょうかね、日本文芸社さん……!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!