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今回紹介いたしますのはこちら。

「悪徳令嬢5000兆円無双」第1巻 新谷信貴先生 

守衛社さんのヤングジャンプコミックスより刊行です。


新谷先生は、11年にマガジンSPECIALでデビューし、13年に別冊少年マガジンにて「魔乙女たちのエデン」作画担当で連載デビューをした漫画家さんです。
その後「溶解人間」などの連載を経て、集英社さんへと活躍の場を移動。
19年に発表した読み切り「TOKYO特別会計¥5,000,000,000,000,000-」が好評を博し、そちらを連載化したのがこちら作品となります。

本作はそのタイトルが示すように、とあるお金持ちのご令嬢がお金の力を持ってやりたい放題やる、という漫画になっております。
タイトル的には昨今はやりの異世界転生ものに見えてしまいますが実際は異世界でも転生でもなければ、もはやご令嬢は悪徳ですらないコメディとなっておりまして……



5000兆円。
このお金がどれだけの高額かお判りでしょうか。
日本人の平均年収3億円。
世界一の富豪の総資産、13兆6800億円。
アメリカ合衆国の19年度国防費が79兆円。
それらが束になってかかってきても、箸にも棒にもかからない超大金です。
その5000兆円の資産を、薬物や武器を売りさばく闇の証人として築き上げたのが犬飼源一郎時貞。
そしてその莫大な資産を、彼が108歳で亡くなった後受け継いだのが……
犬飼千冬、その人なのです!

犬飼千冬は退屈していました。
有り余るほどのお金はあっても、何をしていいのかわからないのです。
持つものであるからこそ感じる退屈。
その退屈を解消するには、差し当たって買い物はどうだろうか、消費こそ最高の娯楽である、と進言したのが彼女の執事である山田ゲパルトです。
何か欲しいものはありますか?
そう問いかけるゲパルトに、千冬は迷うことなくこう答えました。
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友達。
…………少しの沈黙の後、悲しげな瞳で千冬を見つめながらうなずく山田。
千冬は少し慌てて、利用できる人脈は多いほうがいいと思っただけ、今までは必要ないと思ったから作らなかっただけだ、と言い訳します。
ですが山田はそんな千冬の気持ちもすべて見透かしつつ、ご主人様はリアルガチでぼっちだったわけですね、とはっきり言ってしまうのでした。

とはいえ、友達というのはお金で買うというわけにもいかないもの。
しかし千冬には一つアイディアがあるようです。
それは……SNS、いいスタグラム。
これを使えば陽キャの仲間入り、友達も瞬く間にできるに違いない、というわけです。
ではどんな写真をアップすればいいでしょうか。
一般的には流行りのスイーツだとか、犬との自撮りだとか、そういったものが主流でしょう。
ですが千冬はそんなぬるいものではだめだ、SNSではいかに偉そうな写真を撮るかが重要なのだ、と何やらひどく偏った理論を振りかざすのです!
どれだけお金をかけて、どれだけ上級国民かを示してやろうか、と思案する千冬なのですが……
そこに対しては、山田の注意が入ります。
ネット上での上級アピールは炎上のもとである、と!
そんな山田が手始めにお勧めしてきたのが、庶民の愛するアイスの代表格「じゃりじゃりくん」が当たった、くらいのささやかな画像です。
千冬はマッハで、じゃあそれで、と山田の提案を受け入れるのですが……もちろん素直に終わりにはしてくれません。
今までじゃりじゃりくんの当たりに出会ったことがないと言う千冬、せっかくだから
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他とは違う「じゃりじゃりくんの当たり」を買って来い、というのです!!
……山田は悩みました。
千冬の運の悪さは、今までの長い執事生活でよく知っています。
ビンゴは一列もそろわず、福引はちり紙以外当たらない、風邪は誰よりも早くひき、犬には必ず吠えられる……
そんな千冬が、じゃりじゃりくんの当たりを引くことなど、不可能に近いでしょう。
ですが……5000兆円と言う金があれば、どんなことでも可能!
山田は早速手配を始めるのです!

数日後。
千冬の下には、4億本のじゃりじゃりくんが届けられました。
280億円を現金で一括払いして作らせたこのじゃりじゃりくん、もちろんただのじゃりじゃりくんではありません!
なんとそのあたり確立、実に98%!!
当りとはずれの確立が逆になっているのです!!
このじゃりじゃりくんを開封し、次々に当たっているところを見せればきっとみんなが驚くはず!!
2%のはずれは、外れが存在しない当たりなんて当たりとは言えないから、というスパイス的な意味合いで封入されているのです、が……
千冬が引いたのは、
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そのはずれです。
日頃の行いが悪いのか、生来の運の無さなのか……
もう一本開封すれば流石に当たるでしょうが、アイスを立て続けに日本も食べればお腹を壊してしまいかねません。
千冬はへそを曲げ、じゃりじゃりくん当たり画像の撮影を諦めるのでした!!

ちなみにこのいきなりの売り上げ増で、じゃりじゃりくん工場は設備を刷新。
コストも抑えられ、価格と子供たちの笑顔を維持するのに一役買った、とか買わないとか……
また、千冬が食べ残した残り3億9999万9999本は全国に出荷されまして、ネット上は最近のじゃりじゃりくんは異様にあたりが出る、と少し沸き立ち……しばらくたつと、Sソシャゲの話題にかき消されてしまったのです。
とはいえ、千冬の行動がみんなの笑顔を生み出したのは待ち派がいないでしょう……!
……当の千冬本人は、ネットで沸き立つじゃりじゃりくんの当たりフィーバーを冷ややかな目で見つめ……
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ネットオークションで当たり棒を買おうとすると言う寂しい行動をとろうとする始末なのですが!!

じゃりじゃりくん4億本、280億円。
千冬の友達、0人。
残り総資産……4,999,972,000,000,000円也!!




と言うわけで、千冬がその有り余る財力を使い、友達を作るために奮闘する(主に山田がですが)本作。
この後も様々なものを買ったり借りたりしてお金をどんどんと使っていくわけですが、大丈夫、問題ありません。
なにせ千冬のお金は5000兆円、使っても使ってもやすやすと使い切れるものではないのですから!!
とはいえ、財力はさておいても千冬の精神力が持つかは別の問題かもしれません!
果たして千冬はお友達を作ることができるのか?
そうは問屋がおろさないのか?
千冬と山田の周りに次々と個性の強い人物が現れ、そして様々な事件が勃発!
それでもマネーパワーでねじ伏せて行く様をお楽しみください!!





今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!