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今回紹介いたしますのはこちら。

「くにはちぶ」第8巻 各務浩章先生 

講談社さんのマガジンエッジコミックスより刊行です。


さて、執拗にたんぽぽを追い詰めるかざりとの対決が行われた本作。
なぜ彼女はそこまでたんぽぽの排除に、そしてたんぽぽを守ろうとするあざみに執着したのでしょうか?
その真意は……



かざりとの戦いは、衝撃的な結末を迎えることとなりました。
そのショックからタンポポはしばらく学校を休んでしまうのですが……
くにはちを、たんぽぽの番で終わらせるためには、このまま引きこもっていてはいけません。
意を決して今まで通りの生活を行い、くにはちとの戦いを再開するのでした。

そんなある日のこと、たんぽぽとあざみのもとに予想外の人物からコンタクトがありました。
自殺してしまった、たんぽぽのまえのくにはち。
その親友だった少女の、母親から、です。
ある程度のリスクを承知の上で現くにはちにコンタクトを取ってくるということは、何か重要な話があるということでしょう。
そしてそれは、決して明るいものではないことは間違いありません。
……その話を……みんなが同乗するようなかわいそうな、みんなが同情するような話を聞いて動画に撮れば、くにはち廃止の大きな一歩になるはず。
ですが……くにはち廃止のためとはいえ、その行為は下種なものに感じられてしまうのです。

夏休みに入り、たんぽぽとその父、そしてあざみで依頼者の待つ大阪へと向かいました。
大阪ではまず、あざみとたんぽぽの動画配信に協力してくれている粘の弟さんが出迎えてくれました。
そして弟さんは、二人をある団体の事務所に連れて行ってくれます。
10年前に発足し、本年から「ダンデライオン」と名前を改めた、反くにはち団体の西日本支部に!
ダンデライオンは、いままでのくにはちの中で最も精力的に動いているたんぽぽに力を与えられ、近いうちにこの悪法を必ず廃止させようと気を吐いているようで。
その意気込みは非常に頼もしいのですが……たんぽぽの目標はあくまで、自分の代でのくにはちの廃止!
はっきりとそう宣言したたんぽぽに……は直接声がかけられないので、隣のあざみにいつもの「無言の主張」が素晴らしい、と喝さいを送るのでした。

そして二人は、弟さんに連れられて依頼者の家へとやってきました。
平野ひなげし。
それが、先代のくにはち対象者であるなずなの親友だった少女の名前です。
一体そんな人物になんて声をかければいいのだろうか。
たんぽぽは苦悩するのですが、それでももう一つの思いが強く胸にともります。
あざみと同じように、自分も彼女を助けたい、という思いが。

ひなげしの家を訪ねると、依頼者であるひなげしの母親が、予想よりも軽いノリで出迎えてくれました。
あざみんさん、本当に来てくれるなんて感動やわ、友達のために頑張ってはって偉いわねえ。
本当に来てくれてありがとう。
にこにこと出迎えてくれ、そして深々とお辞儀をするひなげしの母親。
その後、いよいよひなげしに声をかけるのです。
やがてひなげしは現れました。
たんぽぽは一歩前に出て、はじめまして、とあいさつしようとしたのですが……
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ひなげしは何も応えず、たんぽぽとあざみの間を通り抜け……ちらりと一瞬振り返った後、そのまま何も言わずにいを出てしまいました。
その態度の意味するのは何なのでしょうか。
ひなげしの母親は、説明をはじめます。
あれからもう半年も経つんやね。
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あの子は周りを無視することで、自分を無視させようとしてる。
なずなちゃんを無視して、自殺させてしまったと思うてるから……
自分を、くにはちぶと同じ目にあわせているの。
……ひなげしは、母親が作ったご飯を食べないそうです。
どれだけ起こっても泣いても、目も合わせてくれないそうです。
ずっと声すらも聴いていないそうです。
……母親は改めて深々と頭を下げ、あざみの手を取って懇願します。
お願いします、どうかあの子を助けたって。
お願いや、私ではどうにもできひんのです……

ひなげしは一人自動販売機でジュースを買っていました。
ちょうど近くで遊んでいた子供たちが、ひなげしのほうにボールを転がしてしまい、取ってくれとお願いされるのですが、やはりひなげしは無視します。
ですが子供たちは、おねえちゃんひどいわ、とおどけて笑ってすますのです。
……自分の境遇を思い起こすひなげし。
私の周りの人はみんな優しい。
私がみんなを無視しても、みんなはまだ私を無視してくれない、あざみんまで来てくれた。
たんぽぽちゃんは、日本中から無視されてなおくにはちぶと戦っている子。
それなのに、そんな子を私は今日また無視した。
また……
ひなげしの脳裏に、「あの日」の記憶がよみがえってきます。
電車が通過するアナウンスの流れる駅のホーム。
そのホームで、ひなげしに向かって必死に彼女が呼び掛けています。
ねえ!
ひな!ねえ!
私はここにいるよ!
そんな呼びかけを最後に……彼女、前回のくにはち、なずなは高速でホームを通過しようとする電車の前へと吸い込まれていったのでした。

あの時、ほんの少し手を伸ばせば助けられたのに。
無視をして、なずなを殺したんだ。
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私なんて、だれからも無視されてしまえばいい……
くにはちのせいとはいえ、親友を無視し続けてしまったひなげし。
彼女だけが原因ではありませんが、親友の死の原因の一つになってしまっていることは間違いないわけで。
その記憶は、ずっとひなげしを苛んでいたのです。
自責の念に押しつぶされそうになり、うずくまってしまったひなげし。
そこに……一人の女性が姿を現しました。
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とある事情により、たんぽぽの監視を外れた踏の代わりに配属された彼女の名は、三途ひがん。
そして彼女は、前回のくにはち、なずなの監視者でもあり……!




というわけで、前回のくにはちの関係者が登場する今巻。
くにはちはその対象者だけでなく、その周りの人々まで深く深く傷つけている。
わかっていたことではありますが、それが目の前の現実として突き付けられました。
たんぽぽの感情も大いに揺さぶられるところでしょうが……
ひなげしを救うことがくにはちぶを潰すことにつながるかはわかりませんが、とにかくいまはできることを全力でするだけ。
それだけに今回から姿を現した悲願の存在が不気味なところですが……
この後物語は、ひがんの底知れない恐ろしさを描いていくことになるのです!!

そして前半で描かれるかざり編の結末も見逃せません!!
様々な手を使ってたんぽぽを学校から排除しようとしていたかざり。
そのかざりの驚くべき過去が明かされ、そして意外な結末が描かれることになります!!
たんぽぽやあざみの決意をさらに固くするきっかけになるのか、それとも……?
今後の展開を大きく左右していきそうなひなげし編はもちろんのこと、かざり編の決着も必見ですよ!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!