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今回紹介いたしますのはこちら。

「AGRAVITY BOYS(アグラビティボーイズ)」第1巻 中村充志先生 

集英社さんのジャンプコミックスより刊行です。


中村先生は09年にジャンプの増刊号でデビューした漫画家さんです。
その後13年に「クロクロク」で連載デビュー。
残念ながらそちらは打ち切られてしまいましたが、18年にジャンプ+で発表した読み切り「ジェナダイバージョン3to1」が好評を博し、19年より同作品を下敷きにした本作の連載を開始されました。

そんな中村先生の最新作となる本作は、四人の少年たちを主人公としたSF漫画です。
SFらしく、舞台は地球からはるか離れた惑星がメインとなるのですが、気になるその内容はと言いますと……?



西暦2119年。
とある星系の一つの惑星に、宇宙船が降り立ちました。
そこから降りてきたのは……物々しいアーマーを着込んだ、4人の人影。
彼らはまず降り立った惑星の状況を分析し始めました。
大気の成分は問題なし。
周囲に大型の生物反応はなし。
湿度60%、気温23℃。
あらかじめ調べていた通り、人間が生きて行くのに何の問題もない環境です。
警戒を解き、アーマーのマスクを外す4人。
そこから出てきたのは、子供と言っても差し支えない若々しい顔でした。
タチカゼ・サガ、17歳、操縦士。
クリス・アーウィット、17歳、医者。
ゲラルト・ゼーマン、18歳、宇宙物理学者。
ババズラギ・キプラガト、19歳、技術者。
彼らは人類の命運をかけた一大プロジェクト、プロジェクト・ヘルメスに抜擢された優秀な少年たちです。
彼らは人類の入植崎となりうる、地球型惑星「α・ジャンブロー」を目指して旅立ち……そして、今こうしてその目的の地を踏みしめたのです!
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人類史に残る偉業を達成した一同は、感動を抑えきれず、暑い涙が頬を伝うものもいたのですが……
感激の渦の中、サガが一言呟きました。
まあもう人類滅びたっぽいけどな!
……すっとテンションが下がる4人。
それはもう少し後のヤツだろう、とゲラルトにたしなめられるサガではありますが、だからと言ってこのまま見ないふりをできるほど軽い問題ではありません。
実は彼らが大々的に地球を見送られた二日後、地球で核戦争が起こったようでして。
最初に通信でその事を聞いた時は、正直あまりのいきなり具合に4人は冗談だと思っていました。
ですがその後連絡が途絶え、本当に人類が滅亡したらしいことがわかり……!
コールドスリープを使って20年かけて向かうはずが、コールドスリープに入るよりも前に人類滅亡とは。
あんまりにもあんまり過ぎて、一同はショックを通り越して笑ってしまうほどの出来事がおきたわけです。
しかもすごいことに、とんでもない出来事はこれでは終わりません。
その次の日、つまり出発後3日目、宇宙を行く彼らの目の前に、ブラックホールが現れたのです!!
目の前に突然現れたブラックホールを前に打つ手のない彼ら、人類が滅びたショックもあったのでしょう、そのままなすすべなく呑み込まれます。
当然宇宙船ごとぐしゃぐしゃ、一同はそろってお陀仏……の筈だったのですが、気付けば一同はαジャンブローの目の前へとワープしていたのでした!!

そんなこんなで、あれよあれよという間に人類は滅亡するわ、目的地に着くわとなってしまった一同。
人類の威信をかけた大計画、というのはもう瓦解してしまったわけですが、とにかく生きているのですからここで暮らしていかなければなりません!
孤児だった四人は子供のころからの付き合いで、まさに気の置けない関係です。
そんな四人なのですから、地球最後の人類としてこの星で精一杯生き抜こう!
そう考えるのですが……

すぐにゲラルトはやる気を失ってしまいました。
なにせ4人は全員男、どうあがいてもここで人類史は間違いなく途絶えてしまうのです。
何事も合理的に考えるゲラルトは、その時点でもうやる気ゼロだったわけで。
なにより、今まで生きてきて女子とあんなことやこんなことをしたことがないゲラルトは、「すっごいエロい店」とかに行けなかったことが心残りで、魂が抜けたようになってしまうのでした。
とてもプロジェクト・ヘルメスに選ばれたメンバーとは思えない、と素直な感想を栗栖が漏らしておりますと……
そこに、まさかの来客が現れました。
全身から光を放つ、不可思議な存在……
彼は、「汝らよりもはるかに高次の存在」と自らを呼びました。
確かにそのたたずまいや、いきなり言葉も通じていること、この場に前触れもなく現れたことなどから、彼が地球人類よりもはるかに文明などが進んだ存在であることはわかります。
が、それにしても、サガたちがそれを受け入れるのは早すぎました。
高次の存在を一目見ただけで、あ、うぃっす、と軽く挨拶してしまうのですから……!!
なにせ彼ら今までいろいろあり過ぎて、もう驚き疲れてもう大抵のことでは驚かなくなっちゃテるのです。
そんな一同の態度にちょっと驚く高次の存在ですが、そもそもなぜ彼はここに来たのでしょうか?
それはなんでも「単なるきまぐれ」で、滅び行く地球人類を憐れんで「チャンス」を与えに来てくれたとのことでして。
彼は一同に、こんなアイテムを与えてくれました。
「ジェナダイバージョン」。
それを使用した人物は一回限り、性別を変えることができる……!!
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つまりこの薬を使用すれば、人類の歴史がかすかにつながる可能性も……無くはないのではないでしょうか!?

高次の存在は、ジェナダイバージョンを置いていずこかへと消えました。
早速誰かを女性にして……と言いたいところですが、高次の存在はこの薬の使用期限は1年だと言い残しています。
ならばその一年で、しっかり生活できる基盤を作ってから使用してもいいのではないでしょうか?
クリスのその提案を受け入れ、一同は早速周囲の調査を開始するのです!!

……が。
クリスがまずは綺麗な生活空間からだ、と宇宙船内の片づけを始めたところ、そこにサガが現れました。
サガはクリスが持っていた箱をサッと取り上げ、こう言う力仕事は俺がやるからお前は向こうで休んどけ、と言いだします。
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そこまで重くはないもので、何故助けてくれたのかがピンと来ないクリスですが、そうこうしている間に今度はババが現れました。
ババはそっとクリスに毛布を掛けてやり、地球に近い環境と言えど夜は冷える、と気遣いを見せるのです。
自分ばっかり悪いよとためらうクリス、すると今度はそこにゲラルトが。
二人の様子がおかしい、とゲラルトに助けを求めようとすると、今度はゲラルトが「その服に合ってるな」と、この場にそぐわな過ぎる言葉をかけてきまして……
ですがクリスこの中で一番非力な自分を皆が気遣ってくれてこんなことをしていると思っていたようで。
足手まといにはなりたくないから、皆の思っていることを言ってくれ、とちょっとピントの外れたことを言ってきました。
そんな彼の思いが伝わったのでしょうか。
サガはクリスの目をまっすぐに見つめながら、こう告げました。
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クリス、女になれ……!
そうです。
皆はビジュアル的に一番可愛らしいクリスを女性にしようとしていまして、女性になった後自分を選んでもらおうと好感度アップを企んでアレコレしていたのです!!
期せずしてクリス以外の三人の心は一つになっていたわけですが、これは一番なってはいけないタイプの一つです。
こうなれば当然誰がクリスとお付き合いするのかで争いが起きる……と思いきや、自分が女性になっても結構いけている感じになれる、いや俺の方が……と言う謎の張り合いが起きてしまいまして。
なんとかその不毛過ぎる争いを抑えようと説得を試みるクリスなのですが、今度はそんな素敵なクリスを守れるのは俺だけだ、と別の張り合いが起きてしまいます。
遂にはみんなアーマーを着込んでバトルしようとし始めてしまい……!?
一体このどうしようもない争いは、どうやって収集をつければいいのでしょうか!?



と言うわけで、意外に(?)ハードなバックストーリーを持ちながら、ハード過ぎて開き直ってしまった感のあるコミカルな日常を描いていく本作。
この後もうひと悶着会ってこのジェナダイバージョン事件は幕を下ろすのですが、ここからがまた大変なのです。
なにせ最後のチャンスを与えると言っていた高次の存在、最後どころかこの後毎回のようにやってきます。
どうもこの高次の存在、本当の目的はさがっちを助けると言うよりも、自分が渡した超過額アイテムを巡ってドタバタする様子を見て楽しもうとしているようでして……!!
その思惑通り、四人はものすごい勢いでドタバタしてしまうのです!!

物凄いプロジェクトに選ばれた天才少年たちとはいえ、彼らも思春期真っ只中の青少年。
クリスはともかくとしまして、他の3人はいろいろな意味で餓えております。
そんな彼らが高次の存在によって弄ばれまくる様は、一生懸命な彼らには悪いですがやっぱり滑稽でして……
そして結構アレなやつである高次の存在とはいえ、持ってくるアイテムはなかなかにガチンコでして。
そのアイテムがあれば、実はかすかに残っていた別の人類存続の目も見えてきたりもするのです!!
ドタバタとともに少しだけ見える希望。
彼らの未来に幸あることを願わずにはいられません……!!




今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!