今回紹介いたしますのはこちら。
「恋は世界征服のあとで」第1巻 原作・野田宏先生 漫画・若松卓宏先生
講談社さんのKCデラックスより刊行です。
野田先生は04年にジャンプの新人賞を受賞、その後06年に小学館さん系の漫画賞を二つ受賞し、デビューした漫画家さんです。
若松先生は13年にデビューし、原作付き作品を多く手掛けられてきました。
量先生は17年から連載された「人魚姫のごめんねごはん」で初タッグを組み、本作でもそのタッグを継続。
同時に同タッグで「異世界失格」を連載するなど、精力的に活動されております。
そんな先生方の最新作は、ラブコメとなります。
ですがタイトルから何となく察することができるように、普通のラブコメではないようで……?
蝶が舞い、花咲く野原。
一人の女性が、隣に座っている男性におずおずと小箱を差し出しました。
中に入っているのは、手作りのクッキー。
男性はそれを食べると、衝撃的にうまい、とズバット感想を述べ、こう呟くのです。
このうららかなデート日和に、最愛の人の手作りお菓子を食べる。
俺は宇宙一の幸せ者だ!
そうのろける二人の、すぐ下では……
正義のヒーローと悪の組織が、激しい戦いを繰り広げていたのです!!
すぐ近くの大乱闘など全く別の世界での話だとでも言うように、二人は二人だけの時を楽しんでいます。
男性は女性を瞬きもせずにずっと見つめ……女性は、そんなに見つめるな、でもこれは嫌なわけじゃなく、単純になれていないだけで、と視線を遮りながらも嫌じゃないよとフォローを入れてみたりもします。
男性はそんな女性に、意を決してこんな提案をしてみました。
ものの本によると、カップルは手を繋ぐものらしい。
俺たちもやってみないか?
すっと差し出された手のひらを見て、女性は……散々ためらったあげく、我々にはまだ早すぎる!無理だ!!と顔を真っ赤にして拒否したのでした!!
私たちはまだ付き合い始めで会うのは3回目だろう、時期尚早だ!
そう言って思い切り構えてしまう彼女に、男性は統計によると2~3回目のデートでみんな手を繋ぐらしい、とデータを突きつけますと、女性は仰天!!
世のカップル凄いな!と感嘆するのでした!!
そこまでいけば後は待つだけ。
男性はずっと手を差し伸べたまま、彼女が応じるのを待ちまして……
そっと彼女の手が、男性の手に触れようとしたその時!!
レッド無事か、加勢に来たぞ!!
そう言って、ヒーローの一人がその場に現れたのです!!
瞬間、
二人は正義のヒーローと悪の組織の幹部の姿へ変身!!手四つの体勢になるのでした!!
男性の名は細川不動。
正義のヒーロー戦隊、ジェラート5のリーダー、レッドジェラートを務めています。
女性の名は禍原デス美。
悪の秘密結社ゲッコーの戦闘員リーダー、死神王女を名乗り、人類を恐怖のどん底に叩き落としております。
彼らは、本来なら決して交わることのない二つの組織の壁を乗り越え、禁断の交際をしているのです!!
勿論そんな二人の関係がばれてしまってはどんなことになるかわかりません。
二人はそのままさも激しい戦いを繰り広げているかのように、激しいオーラを放ちまして……
その割ってはいることのできない雰囲気を感じ取った仲間は、これは助けに入った方が邪魔になる、とその場を退散。
……そして仲間の目がなくなったところで……
不動は言うのです。
つないでいるな、手を。
……それに気が付いたデス美もまた、やったな、とほほ笑むのでした。
勿論こうなるまで、二人の間に何もなかったわけではありません。
彼らの関係が出来上がるまでは、一週間前までさかのぼる必要があります。
仲間からは筋トレしか考えていない脳筋扱いされている不動ですが……その日もとんでもない量のトレーニングと、瞑想をしていました。
ですがその日の瞑想はなんと5時間を超えています。
通りがかったジェラート5の総司令であるビッグジェラート博士は、5時間も何を考えているんだ、と思わずつぶやいてしまうのですが……
地球平和とか、正義とは何か、とか、そう言った求道者的な返答が帰ってくると思い込んでいた博士が思わずマッハで振り返ってしまう答えが返ってきたのです。
大好きな女性のことを考えています、と!!
言うまでもなくその女性と言うのはデス美のこと。
とはいえそんなことを明かすわけにはいかず、自分はヒーローだから彼女と住む世界が違いすぎる、とふんわりした言葉で諦めている旨を告げる不動。
ところが博士、バカモーン!と不動をなぐりつけ、その女性に想いを伝えてこい、これは命令だ、愛を知り一回り成長してこい、責任は自分が持つ!!とものすごい暑い台詞で不動を送り出してくれたのです!!
……相手が敵対する組織の幹部だとも知らず……
その言葉に力づけられた不動は、デス美を廃工場に呼びつけます。
一対一で決着をつけようと言うつもりなのだろう、と万全の態勢で、きちんと一人でやって来たデス美。
一騎打ちが所望だろう、望むところだ、と構えるデス美に、不動も真っ向から立ち向かうのです。
好きだ!!
あまりに突然の予想外過ぎる告白に、デス美は何かの罠だろうと警戒心バリバリ。
そして、自分にそう言う経験がないと知ってからかうと言う陽動作戦なのか、と結論付けて不動に襲い掛かるのですが、不動は必死に誤解だと説得します。
デス美は仲間から、熊の生肉が好物だとか、猪の生き血をすすっているだとか、夜な夜な強者を求めてさまよっているだとか噂されているそうで、そんな自分が好きなものなどいるはずがない、と自虐的なことを言いながら攻撃。
不動はそれを何とか受け流しつつ、好きな食べ物はパンケーキとパスタで、吸っているのはグリーンスムージー、夜はピラティスだろう、と彼女の隠された真実を暴いていきます!!
……と言っても実は隠されているわけではなくて、彼女の遣っているSNSに上がっている情報だったりしまして……不動はそれを欠かさずチェックしていただけでした!!
キュートなネイルを欠かさず、気分によって香水を使いわける。
君はこんなにも女の子じゃないか。
デス美さん、俺は本気なんだ。
……初めて自分の本当の姿を見つめながら、愛を告げた男……
敵対する相手とはいえ、乙女な彼女がときめかないはずもなく……!!
二人は戦い続けます。
交際していることは決して明かさず、いつか胸を張って付き合える世界が来ることを夢見ながら……!
と言うわけで、禁断の恋を描いていく本作。
不動とデス美の恋は前途多難と言わざるを得ませんが、付き合い始めて幸せいっぱいの二人にはそんなことは一切関係ございません!!
二人はジェラート5とゲッコーが戦っている時を狙って、束の間の逢瀬を重ねて行きます。
お互い恋愛にはとんと疎い二人、その初々しい様子は微笑ましいもの。
徐々に近づいて行く二人の関係を見て行くのも大変楽しいものなのですが、それだけではないのが本作の楽しいところ。
ふたりが付き合っていることを知られないため、ギリギリのところでイチャイチャするわけですが、祖ギリギリさ加減から生まれるコメディ部分も本作の売りとなるわけです!!
とはいえ二人が隠れてイチャイチャし続けるだけでは、展開のバリエーションに限界があります。
そして、秘密がばれてはいけないと言う重大なポイントは、すなわち次なる展開の起点となるわけで……!!
二人の秘密の逢瀬は、このままばれずに済むのでしょうか!?
それとも白日の下にさらされることになってしまうのでしょうか!!
そもそも、大っぴらに付き合うことのできる状況など存在するのでしょうか……?
この後も、二人のどきどきデートと、紙一重のピンチが続いていくのです!!今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!
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