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今回紹介いたしますのはこちら。

「怪異と乙女と神隠し」第1巻 ぬじま先生 

小学館さんのビッグコミックスより刊行です。


さて、「虎子、あんまり壊しちゃだめだよ」のぬ島先生の最新作となる本作。
「虎子」は女子たちによる日常コメディでしたが、本作はがありと経路が変わった作品となっているようで……?



首都圏のとある町にある本屋さん、みどり書店。
そのレジの中で、カッコーと閑古鳥が鳴いていました。
といっても本物の閑古鳥がいるわけではなく、その鳴き声は手持無沙汰で暇を持て余したアルバイト、化野のあげた声です。
一緒にレジで細かな仕事をしていた同僚の董子は、そんなに私と一緒のレジは退屈かい、と化野に問いかけるのですが……
化野は、むしろ董子と一緒にレジに入るためにここで働いている、と嘯きます。
それは光栄だけど、十年早いんじゃないかと返す董子。
十年もたてば董子も本格的に熟女だしなぁ、失礼なことをのたまう化野……
これ以上この話題を続けてもあまり面白いことにはならなそうですし、董子は話をお店の暇さ加減のほうへと戻します。
駅近くに大型書店がオープンした成果、客足は鈍目。
それ以前に昨今はどんどんと書店自体が減っていますし、本屋自体が落ち目問技rを得ないのかもしれません。
世知辛いなぁ、とため息交じりでぼやく化野ですが、そこで董子が大あくびを書いていることに気が付きました。
なんでも昨晩は、ネット掲示板で都市伝説についての話題が盛り上がっていて、夜通し読んでしまって徹夜だったとのこと。
あんな嘘丸出しな都市伝説でよく盛り上がれますね、と化野は冷静に突っ込むのですが、董子は創作だっていいじゃないか、オカルトは食欲や性欲のように人の根源に関わる感情を刺激する娯楽なんだ、と鼻息荒く語るのでした。

そんなことをしておりますと、彼女の手に一冊の本が渡りました。
同じ書店で働く大仁志さんが、明日は董子の誕生日だということを知っておりまして、プレゼントと言って渡してくれたのです。
とはいってもそれは董子のためにわざわざ買ったちゃんとしたプレゼントの類ではなく……
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「逆万引き」の本。
逆万引きとは、本来盗まれてしまう万引きの逆で、いつの間にか「増えている」もので。
いくらさかのぼってみても、監視カメラには犯人は映ることはなく……
いつ、だれが、なぜ、どうやっておいたのか、何一つわからない出どころ不明の本なのです。
そんなことを言ってみても、迷惑客の嫌がらせか何かというのが関の山なのでしょうが……

バイトが終わり、帰り支度をする董子と化野。
その際化野は、最近は言ったバイトの三輪さんという人物が、ネットで連載していた小説の書籍が害待ったらしい、という話をしてきました。
書籍化かい、それはすごいね、ぜひ読んでみたいなぁ。
なかなかできることじゃないよ、三輪ちゃんって確か18歳だっけ?
あの若さで大したもんだ!!
そう褒めちぎる董子に、化野は、董子さんのほうの調子はどうです、前言ってた新作は?と問いかけました。
最近とんと書いてないなぁ、三輪ちゃんの活躍を聞くと自分の様が恥ずかしくなるね、さっさと帰ってしっかり描かないとなぁ。
困ったような顔をしてそう返す董子に、化野は言うのです。
それにしても水臭いですよ、誕生日教えてくれてたらプレゼント用意したのに。
これでも、作家・緒川董子のファンですから。

董子は15歳のころ、文芸クラブで書いた小説が書籍化され、新人賞をもらいました。
董子は意欲的に次なる作品をと執筆をしていたのですが……
十で神童十五で才子二十すぎれば只の人、とはよく言ったもので。
残念ながらその後芽が出ることはなく、董子は自分が「只の人」であることを思い知らされることになったのです。
プロになれず、でも夢は捨てきれず、少しでも本の近くにいたい。
そうやって書店で仕事をしている董子なのですが……
たくさんの本が与えてくれるつかの間の安らぎは、ふとしたことで切れてしまいます。
思い出すのは、幾度となくかけられてきた「今おいくつですか」という言葉。15歳でデビューして注目を浴びていたころは、その言葉はいい意味で使われてきました。
技術的な粗さはあるが、それが若さを感じさせていい。
未成熟な部分も個性だ。
……そして今董子に浴びせられるその言葉は、逆の意味で使われるのです。
技術的にはいいが、斬新さが足りない。
狙いや仕立ては面白いが、勢いでごまかしていないか?
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……考えれば考えるほど、憂鬱になってしまう董子。
ちょうどその時、日付がかわりました。
28歳、誕生日おめでとう私。
祝福の言葉とは裏腹に、董子の気持ちは沈むばかり。
15の時は何だって書けたんだ。
あの頃に戻りたいなぁ……
そうつぶやいていますと、先ほどもらった逆万引きの本が目に入りました。
何となく目を走らせますと……その本、なんだかよくわからない文字や図形が書いてありまして、ほとんど読むことができません。
それでも一部は判読できる文字がありまして……
董子はその部分を、声に出して読み上げます。
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天なるや、月日のごとく吾が思へる。
君が日に異に老ゆらく惜しも。
……これは万葉集の一節でしょうか。
いつの時代も若返りたい人ばっかりだ、友達になれそうだ。

その後、誕生日おめでとう、一層いい熟女になってくださいね、となめたメッセージを送ってきた化野に、ゆめゆめ忘れるな小僧、老いは誰にも平等に訪れる、と返し……
コンビニに買い物に向かう董子。
そんなメッセージでも気はまぎれたのでしょうか、ケーキでも買おうかとコンビニの加護に手を伸ばそうとしました。
すると……どうしたことでしょうか。
妙にいつもより袖が邪魔になるのです。
服が……大きくなっている?
いや、違いました。
董子の体が、どんどんと小さくなっていたのです!!
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気が付けばその体は、15歳どころか、小さな子供のように縮んでいて……!!

翌日。
董子はバイトを無断欠勤しました。
心配した大仁志さんは、化野に何か知らないかと尋ねてくるのですが、化野も何も知りません。
とりあえず彼女が後々立場が悪くならないよう、事情を知っているふりをして病欠だということにはしておいたのですが……
董子に何があったのか、一番知りたいのはほかならぬ化野。
バイトにやってこない董子を心配して送ったメッセージ。
何度も送っても返事は返ってこず、それでも送り続けると……こんなメッセージが返ってきたのです。
邪魔しないで。
誰だか知らないけど迷惑です。
…………そして董子は、失踪しました。
いや、本人にはそんなつもりは一切ないのかもしれません
子供のような姿に変わり果てた董子は……
薄暗い部屋の中で、ひたすらパソコンに向かい……一心不乱に、小説を書き続けていたのです。



というわけで、董子の身に不可解な出来事が降りかかる本作。
彼女が子供のような姿に若返ってしまった原因は、あの本にあります。
この後、董子の身に魁夷が降りかかったことに気が付いた化野が動くのですが……
董子は何をきっかけにああなったのかと言った菫子に降りかかった謎や、元に戻すための行動を描きつつ、化野に秘められた様々な謎が徐々に浮き彫りに!!
さらにこの後も別の場所で別の怪異に出会って行き……?
ひとエピソードごとのドラマはもちろん、本筋ともいえる化野の物語も静かに進み、今後より深くかかわってくることは間違いなさそう。
本作は心霊ホラーとは一味違う、都市伝説と言うわけでもない、まさしく「怪異」が描かれる、読み応えある作品になっているのです!

そして見逃してはならないのが、ぬ縞先生の持ち味を存分に生かした魅力的な叙せキャラ達でしょう!
よくあるヒロイン像とはまた一味違う造形のヒロインである董子の他、他にも個性的なヒロインやサブヒロインが登場!
怪異に立ち向かうだけでなく、彼女たちのコミカルな日常も楽しめます!
先の読めない物語に加え、蔵クターたちの生き生きとした活躍も必見ですよ!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!