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本日紹介いたしますのはこちら。

「魔導士Lv99は空気が読めない」第1巻 山西正則先生 

少年画報社さんのYKコミックスより刊行です。


さて、「放課後!ダンジョン高校」を完結させた山西先生の最新作となる本作。
掲載誌をアワーズGHに移した本作、日常の中に非日常が当たり前のようにある……という山西先生の作風は健在の本作ですが、その内容はと言いますと……?



いっぱい遊んで、いっぱい異性とお付き合いをして、それなりに勉強も。
そんな夢の拡がる大学生活ですが、有馬はその楽しさを享受する余裕がありません。
授業が終われば生活費や学費の全てを自分で稼ぎ出すためのすぐさまバイトに向かい、深夜まで働いては泥のように眠る。
時間に余裕があれば、故郷にいる唯一の肉親である祖母に電話をかけ、頑張って卒業したらそっちで就職するからまた一緒に暮らそう、と毎日の生活の大変さを押し隠して安心させる。
苦学生、を絵に描いた様な有馬なのですが、大変な思いをする人に限ってさらに不幸の種が襲い掛かってくるものだったりするのです。
わずかな時間を縫って洗濯機を回せば、隣に住んでいるおっさんが、自分が家にいる時はうるさいから洗濯機を回すな、と胸倉をつかんで脅してきます。
真昼間でもかまわず因縁をつけてくるオッサンに逆らうのも恐ろしいので、やむなくスクーターでコインランドリーに向かって、虎の子のお金を使って洗濯すると……今度は少し目を離したすきにそのスクーターまで盗まれてしまうのです。
止む無くバイト先に徒歩で向かい、遅刻したことにいやみを言われ……

今の家から、大学までも、バイト先までも、全てそれなりの距離があります。
代わりのバイクが欲しくても、あのバイクですら貯めた小遣いと祖母からのカンパで、ようやく買ったものなので、じゃあ新しく買おうとはなりません。
自転車を買うしかないかと考えるのですが……ただでさえ余裕のない生活を、さらに切り詰めなければならなくなるわけで……
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何もかもうまくいかない。
そんな自分の身の上に絶望しながら、フラフラと道を歩いていますと……
今や珍しくなって来た、ゲームショップが目に入ってきました。
昔はよくやっていたゲームですが、最近は受験以来忙しくなってご無沙汰でした。
思い出に浸る気分で中に入っていきますと、動くかどうかわからないジャンク品コーナーに、懐かしのゲーム機本体が500円、ラベルがはがれてタイトルもわからないゲームソフトが50円で売られていました。
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550円は今の有馬にとっては大金です。
ですが……今のあまりにも辛い状況で、何の心の潤いもなく過ごすことの方が辛すぎて……
動いてくれという願いを託しながら、有馬はその二つを購入するのでした。

祈るような思いとともにテレビに接続し、ゲーム機のスイッチを入れる有馬。
すると何が起きたのでしょう、突如電気のようなものが走り、爆発したかのように激しい閃光が光ったのです!!
一体何が起こったのか?
濛々と煙が立ち込める部屋の中で呆然とする有馬ですが……
気が付けば、その煙の中に
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「魔法使い」としか言いようのない恰好をした女性が立っているではありませんか!!
そしてその女性は、いきなり有馬に尋ねてきました。
なんだキミは?と。
……それはこっちのセリフです。
おまえこそなんだ!?という言葉が口から出ないまま、輿を抜かしてしまう有馬。
するとそこに、先ほどの選考の際に鳴り響いた音にブチ切れたとなりのおっさんが乗り込んできてしまいました!!
やかましいって言ってるだろうが、と有無を言わさずに有馬を殴りつけ、胸倉をつかみ上げるおっさん!!
その物すごい剣幕を見た女性は、おっさんにこう言いました。
よさんか低級魔族が!
本来貴様のようなゴブリンの類に本気になる必要もないが、我らのいる世界とは違うようであるこの異文明で我が力が発揮できるか試させてもらおう。
轟け天の咆哮、
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閃く雷神槌(ウルクスブラ)!!
すると彼女の杖からとんでもない激しい光が放たれ、その光の直撃を食らったおっさんは……手首だけを残して消え去ってしまったのです!!!
にわかには信じられない出来事が連続して起こり、有馬は驚愕するほかありません。
ばあちゃん……これは、やばいことに巻き込まれたようです。
女性が、立てるか?と自分に手を伸ばしてくる様を見つめながら、有馬はそんなことを考えるのでした……!



さて、最近よく見るようになってきた感のある、異世界転生ものの逆パターン、異世界から召喚モノとなる本作。
日常の中にファンタジー的な人物が現れてしまう、という内容になっているわけですが、そこは流石の山西先生。
山西先生ならではの、淡々とした日常とのんびりしたムードとともに、残酷な現実をしっかり突き付けてくるような物語展開が待っているのです!!
異世界からやって来た魔導士が、そのとんでもない魔力と、こちらの世界での常識のなさからトラブルを起こす……というテンプレートな展開はもちろんのこと、他のこの類の作品には珍しいかもしれない、召喚された者の不可思議な変化などが描かれていくのです。
その召喚元の謎などは今巻の中で早速示唆されていきまして、どんどんとこの作品が単なる異世界転生系の作品ではないことも判明。
さらに召喚されてくるものもどんどんと増えて行き……!?
日常要素に加え、様々な謎要素も加わっていき、先生らしい読み応えのある内容となっているのです!!
日常ものとしての楽しみ方、キャラクターの動き、謎の解明、さらに普通の人間同士のドラマなんかが混ぜこまれた本作、今後の展開も必見ですよ!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!