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今回紹介いたしますのはこちら。

「不安の種*(アスタリスク)」第1巻 中山昌亮先生 

秋田書店さんのチャンピオンREDコミックスより刊行です。


さて、いまやショートホラー漫画の名手としての地位を確立した中山先生。
「不安の種」「不安の種+」そして「後遺症ラジオ」と立て続けにショートホラー漫画作品を連載したのですが、「後遺症ラジオ」は掲載誌が休刊し、ウェブ連載に移行したものの19年2月で連載がストップしてしまっておりました。
そんな折連載が開始された本作。
中山先生の名前を一躍有名にした「不安の種」シリーズ最新作、期待を裏切らない内容となっております!!



それに気が付いたのは、本当にたまたまでした。
街を歩いているときに、何となく目をやった団地の壁。
そこの高いところに、
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二つだけ足跡がついていたのです。
壁のあんなところに、どうやって付けたのだろうか?
誰かの悪戯なのでしょうが、つけるのが難しそうな割に、気付かれたり話題になったりしづらそうな、労働コストに見合わない悪戯のように思えます。
その時はそれで終わったのですが、その数日後にまた同じ場所を通りがかった時、その同じ壁面を見てみますと……
今度は足跡がその時より4つほど増えていたのです。
それを見て今度思い浮かんだのは、驚きよりもむしろ感動のような感覚でした。
誰に向けてのいたずらなのか、もしかしたらみられることすら期待していないのかもしれない。
だと言うのにこの悪戯を続ける熱量と根気、そして綺麗に足跡だけをつけている無駄に高い技術に惹かれてかれてしまうのです。

また別の時、感動を誰かと分かち合おうと、友人を連れてきました。
ですがどうしたことでしょう、壁面の足跡は一つ残らず消えてしまっていたのです。
消されてしまったのか、暇の結晶みたいな作品だったのに残念だ、と落胆していますと、友人の方はホントにあったのかといぶかし気。
5階のあたりにあったらしいけど、足場もなしにどうやったのか、もしかして幽霊とかじゃないのか?
そう冗談半分に茶化してくるのですが……
その時のことでした。
二人の目の前で
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団地の壁面に一つの足跡が刻まれたのは。
そして二人の視線が注がれるその壁面に、ひた、ひた、とまるで誰かが歩いているかのように、
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足跡が次々について行って……!!
地面に向かって壁を歩いている。
信じたくはありませんが、そうとしか思えません。
そしてその足跡は……確実に、地面へと近づいていきます。
逃げなきゃ。
二人はどちらも一言もしゃべらないながら、同じことを考えていました。
ですが、どうしても足が動かないのです。
そうこうしている間に足跡は壁面の一番下まで達し……そして、べちゃ、と嫌な音が響きます。
足跡が降り立ったそこには、
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生傷だらけの、足、だけがあって……!!
それ以来、団地の壁に足跡がつくことはありませんでした。
……ですが……



と言うわけで、「不安の種」シリーズらしい、得体のしれない何かが姿を現す物語を収録した今巻。
このお話は、本作の中でも一二を争うほどマイルド。
恐ろしい話は、もっともっと用意されておりますのでご安心(ご注意?)ください!!
子供たちの間にささやかれる「歯じいちゃん」のうわさ。
風に舞うコンビニ袋のような「何か」。
何もないはずのそこ、壁の中にあったもの。
いつも見慣れている鏡の中の自分の違和感に気付いた時。
「覗クナ」と書かれている壁の穴を覗いたその代償……
そんな恐怖がぎっしりと詰め込まれているのです!

どれをとっても、不安の種を生むような不気味で恐ろしいものばかり!
中山先生の持ち味である、生理的嫌悪感をあおるクリーチャー、わけのわからない恐ろしい雰囲気は健在で、今回も安定のクオリティを誇っております。
さらに不安の種の中で最高の知名度を持っているあの方も満を持して(?)登場!!
今後の展開での再登場も期待されるあの方の活躍にも期待してしまいますね!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!