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今回紹介いたしますのはこちら。

「川島芳子は男になりたい」第1巻 田中ほさな先生 

講談社さんのシリウスKCより刊行です。


さて、「聖骸の魔女」の田中先生の最新作となる本作。
本作は実在した人物、川島芳子を主人公にしたアクション漫画となっております。
ですが、しっかりと史実に基づいたリアルな歴史漫画、と言うわけではなく……?


1924年11月。
17歳になった川島芳子は、上海にわたりました。
芳子が上海に来た理由は、ここに何でも夢をかなえてくれると言う「上海キング」がいるから。
彼女の夢は、自分一人で叶えるのは難しすぎる者なのです。
緊張の面持ちで謁見した上海キングは……小さな女の子のような見た目でした。
何でも夢をかなえる上海キングが少女、ということからも、上海キングが単なる権力者ではないことがうかがえるというもの。
そこで芳子は、意を決して切り出すのです。
上海はホントに何でもありってことね、どんな狂った夢でも。
じゃあ、あた……ぼくを、男にしてくれって言っても!?
上海キングは、それはいいけど、とその難問をあっさり受け入れるのですが……その前に、せっかくの美人なのになんで男になりたいのか話してくれ、と問いかけてきました。
……芳子には二人の父親がいます。
一人は清の粛忠親王、愛新覚羅善耆。
もう一人は、日本の活動家、川島浪速。
芳子はその二人の教育を受けて育ちました。
ですが芳子は、その教えに沿って生きることはできません。
何故なら……「女」だから。
国家の大業を担うような冒険。
それらはすべて男のもので……
芳子は、男になって、父たちが誇れる自分になりたい、と願い続けてきたのです。
その覚悟は生半可なものではありません。
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上海キングの前で、自らの美しい髪を短く切り落とすことでその覚悟を示して見せました!

上海キングも芳子の気持ちはよくわかったようで、願いを聞いてくれることになりました。
ですが、形成手術となると大事だし、費用も莫大、取り返しもつかない……ので、一時的に男になって、本当に女を捨てていいか考えたらいい、と言いだすのです。
そのとりあえずの施術の代金は、「他の誰かの夢をかなえること」。
自分の夢の対価として他の誰かの夢をかなえる……夢を夢で買う、というのは流石上海と言うところでしょう。
上海キングが持ち掛けてきた代価となる仕事は、「廃帝」溥儀を紫禁城から助け出して自由の身にすること。
滅亡した清朝最後の皇帝、溥儀を、紫禁城から助け出す……
それはとある軍人の夢なのだそうですが、これこそ芳子が夢見ていた国家の大業を担う冒険ではありませんか!
この仕事を受けると約束してくれるなら施術をしてやると持ち掛けてくる上海キングなのですが……
芳子はこう言うのです。
約束?男に約束などいらない!!
それは父たちからの教えとのことで……
「男は言葉じゃない」行動で示す!!と胸を張るのでした!!

奇妙な催眠術めいた儀式、そして鍼。
その儀式をの中で、芳子は「忘我の境地」に達した時、女のお前は消え、男のお前がたちあらわれるであろう、と告げられました。
が、芳子本人には変化があるようには到底思えず……
戸惑いも残る中、約束を果たすために霊の軍人の待つ地へ向かうのです。

軍人、田中隆吉は……何といいますか、ちょっと変わった人物でした。
上海借金王として名を馳せ(?)、上海キングからも金を借りているのだとか。
ですが溥儀を助けようと言う気持ちは本物のようです。
ところが、芳子が溥儀救出作戦のお役に立てると思うから、弟子にしてください、と三つ指をついてお願いしたものの、田中は信用できないと言い切るのです。
女だから、と。
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勿論男女差別をしているわけではありません。
愛新覚羅の娘と言う血筋はその作戦に役立つでしょうし、上海キングの紹介なのですから血筋も間違いないでしょう。
ですが……依然溥儀救出作戦をしたときに、7人の犠牲が出たのです。
この仕事は女には危険すぎる。
俺はもう足手まといはごめんなんだ。

門前払い同然の扱いを受けたものの、一晩だけ泊めてもらうことになった芳子。
すると夜、田中は街に繰り出し、次々に女性と会って金を渡していくではありませんか。
最初は愛人か何かかと思っていたのですが……注意深く様子を見ると、どうやらかつての仲間の遺族だと言うことがわかります。
その為だろうとはいえ、借金を重ねている田中ですから……何やら彼の後を怪しげな男が追いかけているのも仕方ないことでしょう。
芳子はその怪しげな男たちの前に立ちはだかり、師匠を煩わせたくない、借りた金は今この瞬間からぼくが働いて返す!と宣言したのです!
すると男たちは芳子を働ける場所へと連れて行きました。
そこは……
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いわゆる、体を売る場所!?
屈強な男たちがたくさんひしめくこの場所から、芳子一人が逃げ出すことなどできるはずもありません。
戸惑っているうちに部屋に連れ込まれ、隅々まで体を調べられてしまう芳子……なのですが、触られているうちになぜか体が熱くなってきてしまうのです。
自分の体ではないかのように熱く燃えて行く体……!!
それが絶頂に達した、その時でした!!
芳子の体が
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男へと変じ、超人的な力を発揮したのは!!
まさか、今の経験が「忘我の境地」!?
芳子はこうして、「男」へと変わったのです……が!!



と言うわけで、男に変わることができた芳子。
ですが完全に変化したのかと言うとそうではなく、あるきっかけで一瞬のうちに女性の体に戻ってしまいます。
男になって、冒険をする。
それが最大の夢である芳子にとってそれは一つの枷になる、かと思われたのですが……
この後、芳子は溥儀救出作戦に挑むことになります。
その作戦の中で、芳子はある道を見出して……!?
男を目指す芳子の「冒険」は一筋縄ではいかないものに!
田中先生の得意とするアクションシーン、お色気シーンはもちろん、前作「聖骸の魔女」ですっかりおなじみの個性の強い女性キャラも登場し、読むものを飽きさせません!
この第1巻は丁度切りのいいところまで収録されているのもあり、非常に読みやすい一冊になっております!
溥儀の救出だけでは終わるはずもない芳子の果て無き夢、是非とも皆様目でもお確かめください!!




今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!