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今回紹介いたしますのこちら。

「案山子村 外薗昌也恐怖作品集」 外薗昌也先生 

朝日新聞出版さんのソノラマ+コミックスより刊行です。


さて、今やホラー漫画家としての地位を確固たるものにした外薗先生。
本作はその外薗先生の単行本未収録だった読み切りを集めた短編集となっています。
ごく短い作品から70Pを超す読み応えある作品まで系6編を収録した本作ですが、今回はその読み応えある一編、表題作の「案山子村」を紹介させていただきたいと思います!


死んだような目で仕事をする男、シノブ。
その視線の先にいるのは、三人の同僚たちでした。
その中心的人物、タツミを囲い、他の二人が凄い凄いと叫んでおります。
なんとタツミ、「ツテ」が会って手に入れた、という拳銃を見せびらかしています。
ツテと言っても、彼の兄がその手の人物で、こっそり抜き取って持ってきた、というところでしょう。
ガキの頃から兄貴の力を借りてやりたい放題だったもんな、とシノブはぼーっとそれを見つめていました。
3年前、シノブはタツミに逆らえずにとんでもないことをしてしまったことがあります。
タツミが急にAVを撮りたいと言いだし……逆らいきれなかったシノブは、ヒロコを呼び出して……
その時タツミに乱暴されたヒロコは、今はタツミの彼女になってしまっています。
その事件以来、シノブの目は、心は完全に死んでしまったのですが……

今やシノブは、何も考えずタツミの言うなりになる日々を送っています。
今回も、銃の試し打ちをしよう、と言い出したタツミに命ぜられ、愛車である大人数の乗れるワゴンを出させられることになってしまいました。
タツミと取り巻き二人、ヒロコとヒロコの女友達二人、そしてシノブ。
7人で、銃の試し打ちの出来る人気のない場所に向かうのです。
……3年前、タツミに乱暴をされてしまったヒロコ。
彼好みの……行ってしまえば、ケバい風貌に変わり果てた彼女は、乱暴を働いたタツミ本人のことは完全に許しているようです。
が……自分を差し出したシノブのことはいまだ許しておらず、激しい憎悪の瞳を向けてきます。
ですが……シノブはそんなことももはや気にしません。
彼の心は死んでいるのです。
どうでもいいか、考えるのめんどくせーし。
そう考え、笑みすら浮かべるのでした。

気が付けば、一同は奇妙な場所に迷い込んでいました。
見渡す限り、一面の草むら。
そしてその草むらの中に……数えきれないほどの案山子がたてられているのです!
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ナビでは「大字村」と出ていますが……ここが村とはどうしても思えません。
気味が悪いから引き返そうというものもいるのですが、タツミはここで車を止めろと命じます。
どうやら……案山子を的にして、銃を撃とうと言うつもりのようです。

それにしても見れば見るほど君が悪い風景。
一体誰が何音ために案山子を立てたのでしょう。
キモいと言いながら写真を撮ったりして盛り上がる一同なのですが……シノブの方は、むしろ案山子に親近感すら感じていました。
黙って立ってるだけ、俺みたいだ。
そう呟いて、案山子を見つめていると……
案山子と、
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目が合いました。
人?
中に、人が入っている……?!
シノブが驚愕すると同時のことでした。
後ろから、乾いた銃声が聞こえてきたのは。
早くもタツミが案山子を狙って銃を撃っていたのです!!
素人のタツミの銃弾はなかなか当たりません。
今度こそよく狙って……と狙いをつけているところを、シノブは慌てて撃つなと止めようとするのですが……
そこで放たれた銃弾が、案山子に命中してしまったのです!!
ヒギッ!と奇妙な声を立てて倒れる案山子。
その案山子は真っ赤な血を流し、倒れ……死んでいました。
……疑いようもありません。
ここの案山子はん人間だったのです。
案山子祭りでもやってたか、案山子のコスプレでも流行ってんのか。

理由はわかんねーけど、皆人間だ。
……その真実は、この光景が常軌を逸した異常なものである事を実感させます。
怯える一同ですが……さらにこの後、一同を恐れさせる自体が巻き起こるのです!
気が付けば、皆バラバラの方向を向いていたはずの案山子が、
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シノブ達の方を向いている!?
恐怖にかられた一同は、一斉に逃げ出して車に乗り込みました。
逃げ出そうと車のエンジンをかけるものの、そこでタツミがこんなことを言いだします。
銃がない、逃げているときに落とした、と。
もしこのまま銃を置いていけば、兄に勝手に持ち出したことを知られ、とんでもない仕置きをされてしまうことでしょう。
タツミは誰か一緒に探しに行ってくれないかというものの……あまりにも不気味過ぎるその案山子の集団の中に戻ってくれるものは誰一人いませんでした。
勿論、ヒロコもです。
タツミは意を決し、一人で銃を拾いに行くのですが……
その背後で、動き出していたのです。
案山子の一人が、静かにタツミの背後に忍び寄り、
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その袖口から巨大な鉤針を伸ばして……!!



と言うわけで、外薗先生渾身の読み切りが収録された今巻。
この後本作はみなさんの想像通りの流れになっていきまして、外薗先生の十八番であるスプラッタホラーな展開になだれ込んでいきます。
が、ただ全滅するとか、生き残ったもののところに案山子がやって来てエンド、と言ったようなスタンダードなオチにはなりません!
シノブと言う主人公ならではのクライマックス、驚くことうけあいですよ!!

その他の作品は通常の10~20ページほどのボリュームの読み切り。
こちらは2012年ごろ「インソムニア」の流れで発表されたと思われる作品がメインで、その為外薗先生が最近描かなくなっている心霊系の恐怖漫画が主となっています。
最近のスプラッタ漫画ではどうしても感じづらい、心霊ならではの「おどろおどろしさ」が堪能できる、こちらの作品群も必見です!!
個人的にはこっち系の作品もまた描いてほしいのですが……!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!