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今回紹介いたしますのはこちら。

「無敵の人」第2巻 きづきあきら先生+サトウナンキ先生 

双葉社さんのアクションコミックスより刊行です。


さて、何も失うものがないが故の凶行を企てる「無敵の人」を秘密裏に始末する組織の一員となってしまったいのり。
彼女はこの恐ろしい組織の中に加わることでどうなっていってしまうのでしょうか。
苦悩する間にも、次の仕事は近づいてきていて……



青山陽子は、男女の双子として生まれました。
そのせいもあって、幼いころから非人間の間に確固として存在する「違い」を物心ついたころから認識する人生を送ることになります。
陽子の家はそれほど裕福ではなかったため、大学進学できるのは一人だけ。
その為陽子は進学をあきらめることになったのですが……
成績の面で言えば陽子の方が明らかに上でした。
大学に進学を目指すことになった双子の片割れである月彦は、勉強に没頭……するものの、やはり陽子ほど成績が良くないこともあって上手く行かず、苛立ちを募らせていきます。
自分が勉強のために部活をやめなければならないのに、陽子が部活をやっているのは気に障るらしい。
そんなことを言われて陽子はまだ2年生で、試合にも出られる実力があったにもかかわらず部活を退部。
月彦が集中する環境を作るために家出のテレビも控え、部活をしない代わりに家事を手伝うようになりました。
そうしていると今度は月彦本人から、いいよな陽子は、女ってだけで勉強も免除、就職だって適当なとこ選んでも恥をかかない、甘えた考えでそのまま生きてけると思うなよ、と独りよがりないやみまで言われる始末……
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それでも陽子は、じっと耐えてきました。
これでいいんだ。
そう自分に言い聞かせてガマンの日々を送っていると……そのかいもあって、月彦は有名私大に合格することができました。
陽子は早いうちに就職して家を出まして、これからは自分の申請が遅れる、息ながら死んでいるような人生はこれで終わる、とようやく未来への希望を見出すことができたのです。

ところがそんなある日、陽子のもとに母親からメッセージが届きました。
滅多にメッセージなど送ってこない母、その内容を見た陽子はすぐに実家へと駆けつけます。
するとそこにはとんでもない光景が広がっていたのです。
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引きこもり始めた月彦が、苛立ちのままに食器や本などを家中にぶちまけて、怒りとも嘆きとも取れない叫びをあげて暴れまわっている、という……

本人の言い分をそのままうのみにしていいのかはわかりませんが……
月彦が言うには、就職した企業がブラックだったとのことで、自分の才能が活かされる職場で働きたい、と退職。
そのまま今は「お休み中」なのだそうです。
父もそんな月彦のドローに回ります。
「矜持」って知ってるか?
女の陽子にはわからんかもしれんが、男が誇りを気付付けられると言うのは本当につらいことだ、すこし気長に傷がいえるのを待ってやろうと思うんだ。

……そうして、30年の時間が失われました。
「いつかなんとかなるだろう」。
そんな希望の形をした思考停止状態で、事態が好転するわけがありません。
再び家に戻されることになった陽子は、「家」という密閉された瓶の中で、家族もろともに誰にも気づかれずただ腐敗していきました。
月彦も完全に腐りきってしまい、女子高生に話しかけるなどして警察に不審人物として苦情が行ってしまうなど、完全に外から見ればどうしようもない存在に。
家の中でも、ネットを見ながらひたすら自分勝手な毒を吐き散らすだけで……

そんな生活の限界は、両親が亡くなってからしばらくしてとうとうやって来てしまいました。
両親の葬式にすら出てこなかった月彦。
夜中ひとりでおもむろに出かけて行き……
これは世直しだ、奪われたものの脅威を思い知らせてやらなきゃいけない、と公園を一人歩く女性にお襲い掛かろうとしたのです!!
幸い、月彦の不審な動きを察知していた陽子がギリギリのところで駆けつけ、事件にはならずに済みました。
帰ろう、まだ間に合うから。
そう月彦に声をかけ、家に連れ帰ろうとするのですが……月彦は差し伸べた手を払いのけてこう言うのです。
バカだなお前、何がどう間に合うっていうんだ?
俺にはもう残ってるものなんてただの一つもない。
皆死んじまえばいいんだよ、あのクソオヤジみたいによぉ……

もう月彦はどうにもならないのかもしれません。
そんな絶望と不安にさいなまれながら、床に就く陽子。
すると域内大きな物音がなり始め、慌てた様子で月彦が逃げ惑い始めました!
暗闇に目を凝らしてよく見てみますと……
深々とフードをかぶった誰カバ、斧を手に月彦を殺そうとしています!!
ですがその男もなれていないのか、斧が突き刺さったのは床。
食いこんでしまって抜けず……犯人が焦っているうちに、月彦がタックルで反撃を試みます。
陽子、ケーサツ呼べケーサツ、ドロボーだちくしょう!早く!
ヤバイ、だから無理だって……とうろたえるばかりの犯人と、早くしろよと陽子に怒鳴りつける月彦。
まるで生気を感じさせないたたずまいでそれを見詰んていた陽子は、床につき立っていた斧を手にして……
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月彦の頭を、叩き割ったのです……!!
飛び散る返り血で真っ赤に染まった斧と、陽子。
陽子はその斧で男を指し、尋ねました。
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それで?
あんた誰?

それがニルと、ニルとパートナー関係らしい「おばさん」の出会いでした。
どうしてあんないい人が殺されたのか、犯罪は未然防げなかったのか?
そんな人たちに、「じゃあ未然に予測して犯人を決していいですか?」と聞いても許可されるはずがありません。
それをひそかにやってしまおうと言うのがこの組織なのです。
「無敵の人」を排除しながら……こうして徐々に仲間を取り込んで密かに拡大している組織……
そんな様子を、今のところ上々だとモニタリングしている男と女がいました。
国益にかなう優良な国民の生活を守るために行うこの計画は福祉だ、と言い切るその男。
彼の名は……嘉門。
かつてある男を地獄にいざなおうとした、あの男だったのです……!



と言うわけで、おばさんの過去が明かされる今巻。
と同時に、この組織を動かしていると思われる人物の正体も判明しました。
きづき+サトウ両先生の過去作品、「奈落の羊」のキーキャラクターの一人であった嘉門……
彼がどうしてこの組織を動かすことになったのか、その本当の目的は何なのか?
これから先そのあたりが明かされていくと思われるのですが、それはまだ先のことになりそう。
この後物語は、いのりの仕事の方へと戻ります。
ターゲットが追い詰められ、無敵の人となっていく様が描かれ、そしていのりとニルがその人物の始末に行くわけなのですが……
その人物とは、いのりの良く知るあの人物なのです!!
兄に続いて自分の周囲に人物がターゲットとなり、しかも今度は自分の手で排除しなければならない。
果たしていのりはそんな大仕事をこなすことができるのでしょうか。
「無敵の人」に話し合いで解決を試みるのは難しいと言うのは、第1巻収録のあの事件でよくわかっているはず。
そんないのりの取る道は……!?

今巻でもきづき+サトウ両先生の持ち味である、どろどろとした人間の闇は健在。
ただ無敵の人を始末するだけでは終わらせない、様々な要素が用意されています。
苦悩するいのり、つらい過去に際慣れるニル、無敵の人が無敵の人に至るまでの地獄、その周囲の人物の心の動き、そして驚くべきどんでん返し。
読むものを圧倒する驚愕のドラマはまだまだ続いていきそうです!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!