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今回紹介いたしますのはこちら。

「センサー」 伊藤潤二先生 

朝日新聞出版さんのNemuki+コミックスより刊行です。


さて、原作付き作品に文学作品の漫画化と、様々なs玖品を発表されながらもきっちり本業(?)のホラー漫画も描いていらっしゃる伊藤先生。
今回の作品は、その本業であるホラー漫画。
気になるその内容はと言いますと……?



千獄岳。
そのふもとに一人やって来た女性は、あたりに舞っている毛のようなものをその手に取りました。
火山から噴出されたマグマが急速に冷えたことで、髪の毛のようになる火山毛。
舞い散る毛のようなものはその火山毛かとも思われましたが、千獄岳は昭和のころ以来噴火してはいないはず。
加えて、日本の火山毛は黒いはずなのに、この漂っている物は鮮やかな金色をしています。
手に絡みついた金色の火山毛をフッと吹き飛ばしますと、飛んでいった火山毛は木の幹に引っかかり……消えてなくなってしまいます。
火山毛が消えるわけないし、これってもしかしてエンゼルヘアー?
都市伝説的な、空から舞ってくると言う謎の繊維状の物質、エンゼルヘアー。
クモの糸だとか、UFOの落とし物だとか、様々な説があるものの、それが何なのかは完全に解き明かされてはおりません。
そんなことに思いを馳せておりますと、何かの気配を感じました。
振り返るとそこには、目を閉じてじっと天を仰いでいる男性が立っています。
そしてその男性は、不意に彼女に話しかけ始めるのです。
お待ちしておりました、あなたがいらっしゃることは天髪様から伺っております。
貴方は私たちの村にいらっしゃるのです、それは神のお導きなのです。
白夜京子さん。

はじめてあったにもかかわらず、鏡子の前を知っていたその男は、相沢と名乗ります。
実は京子、自分がなぜこの地にやって来たのかがよくわかりません。
何かに引き寄せられるように、自然とここへ足が向いた、ような。
そして今も不思議な力に引かれている……
そんなこともあって、京子は相沢に導かれるまま彼の村へと向かいました。

清神村、と相沢が呼ぶその村は、異様としか言いようのない光景が広がっています。
見渡す限り、黄金色に輝いているのです。
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建物も、木々も、草も、全てです。
よくよく見てみれば、それらにはあの謎の火山毛がびっしりとくっついているようで。
この謎の火山毛を、この村の住民は天髪様と呼んでいるのだとか。
天髪様は動物や人間にもたまにくっつくようで、村人にもくっついているのを見かけます。
くっつかれている人によれば、この天髪様がつくと超能力のようなものが身につくのだとか。
じっと目を閉じていると、はるか遠くの宇宙を感じることができて、村人同士の心を感じることもできる。
そうしているときの幸福感は言い表せない、と言うのです。

翌日、集会所に呼び出された京子。
そこで、この村のいわれと最近起こっている異変についての話を聞かされます。
この村は江戸時代の禁教令のおり、宣教師のミーゲレをかくまっていたのだとか。
ですがそれを幕府に見つけられてしまい、かくまった村人ともども千獄岳の火口に突き落とされてしまいました。
それ以来この天髪様が降りそそぎ、この清神村でだけ消えずに残るようになったのです。
が、最近の天髪様の降る量が増え、今のような金色の村になってしまったとか。
幸福感を与えてくれる天髪様ですから、吉兆とも考えられるのですが……
そこで京子がやってくるとお告げを受けた相沢。
この村に幸せを齎す特別な人物だ、と京子を持ち上げるのですが、当の京子にそんな実感などあるはずもないわけで。
自分はそんなのじゃないからお暇します、とさっさと村を離れようとするものの、相沢はそれならせめて今晩行われる星空を眺める会に参加していってくれ、とお願いされまして……
京子はその回だけ参加することにしたのでした。

確かに清神村の星空は見事なものでした。
その星空を見ながら、相沢は語り始めます。
何故宇宙に生命が損持するのか。
それは、宇宙を感じるためです。
私たちの体にある五感と言うセンサーは生きるためと言うより、宇宙を感じるために必要なのです。
天髪様はそのセンサーを増幅させる力を持っている、その目的は宇宙のどこかにいるミーゲレ様を感じ取るため。
ミーゲレ様は幕末のころ宇宙に飛び立たれました、もともと宇宙の再果てからおいでになった方だったのです。
しかしミーゲレ様は我々のために天髪様を残していって下さったのです。
と、その時でした。
見てください!!
だしぬけに叫んだ相沢が指を指す方向、千獄岳から
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物凄い量の天髪様が飛び出したではありませんか!!
そしてあたりを埋め尽くすほどのの量の天髪様が舞い散って……!!
瞬間、村人の、そして京子の意識は宇宙へと跳びました。
未だかつてない宇宙の再果てを感じた村人たちは、さらに集中してミーゲレを感じようとするのですが……そこに舞っていたのは、とんでもない存在でした。
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あまりにも禍々しい、巨大な忌まわしいモノ……!!
それは全身から天髪様の対極の存在であるかのような、漆黒の髪を飛ばします。
宇宙の再果てに飛んでいた村人たちは、みな漆黒の紙に包まれてしまい……

翌朝。
昨夜突然噴火を起こした千獄岳の様子を見るため、消防団がやってきていました。
やって来たその場所は、京子たちが星を眺め、そして……60年前の噴火で壊滅していた清神村のあった場所!
溶岩が押し寄せ、あたりが焼け野原となっていたそこには……噴火後にあるとは思えない、金色の髪でできたような、小さなドームがありました。
そしてそのドームはどろどろと溶けだし、中から
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京子が出てきたのです!
彼女の髪の毛は、美しく黄金色に輝いていました。
…そう、あの天髪様のように……!



と言うわけで、超常的な存在となってしまった京子。
この後京子の周りに様々な事件が巻き起こっていくこととなります……が、京子は主役と言うよりも舞台装置的な立ち位置に。
第2話から本シリーズの主人公と言っていいルポライター、土宿が登場し、彼女とカノjを取り巻く事件に巻き込まれていくのです!
当初は本作、「夢魔の紀行」と言うタイトルで「妖怪ハンター」的な話にしようとしていたそうなのですが、第一話で宇宙の謎に触れたことで物語は方向修正。
伊藤先生らしいおどろおどろしいホラーを織り交ぜながらも、あの漆黒の髪と天髪様、そして過去と未来と宇宙をまたにかけた壮大な物語へと変貌したのです!!

コズミックホラーと銘打たれた本作ですが、その内容は伊藤先生節前回ですのでご安心(?)を。
いつものようにグロテスクで、いつものようにおぞましく、いつものようにちょっぴりシュールな伊藤先生ワールドがたっぷりと堪能できます!!
艶やかに描かれるグロテスクコズミックホラー、本作も必見ですよ!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!