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今回紹介いたしますのはこちら。

「彼女の野生が手に負えない」第1巻 末広光先生 

集英社さんのヤングジャンプコミックスより刊行です。


末広先生は17年にヤングジャンプの新人賞を受賞しデビューした漫画家さんです。
18年にはシンマンGP2018で優勝を獲得され、その際発表された「さばいさんインブッシュ」を下敷きにして本作を19年より連載開始されました。

そんな末広先生の初連載作である本作、ボーイミーツガールから始まる日常もの、と言うとよくある作品に思えるのですが……?



制服に着替え、学校に行く身支度を整える少年、小平坦(こだいらひとし)。
前のボタンを留めていたところ、携帯電話が振動を始めました。
電話の相手は、今日から出張で家を空けることになった両親です。
今日から一人暮らしと言う、不安と期待の入り混じったスタートの日だった坦ですが、そんな坦の気持ちなどお構いなしとばかりに、電話口の母親は馬鹿明るい声で一方的にこうまくし立ててきます。
ヒロ君、ママすっかり忘れてたんだけど、今日からウチにホームステイの子が来るのよ!
これでじみっこなヒロ君もグローバルっ子に大変身ね!
ちゃんと仲良くするのよ?
坦が質問をはさむ間もなく、フライトの時間だからと電話を切ってしまう母親。
するとその電話が切れるとほぼ同時に、窓の方から何か大きな物音が。
そちらを振り向いてみますと……そこには、何か巨大なものを背負った女の子が立っているではありませんか。
その巨大なものは……
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ワニ。
ワニを背負った彼女は、おもむろに自己紹介を始めます。
私は鯖井春子!
子作りをしに来ました!!

春子は3日前まで、山奥で祖父と暮らしていました。
ワニを軽々背負っていたことからもわかるように、彼女の狩猟テクは相当なもの。
なんと、あのヒグマを一人で仕留めるほどの腕前でした。
が、それでも彼女は祖父にはまだまだおよばない、史上最高のサバイバリストになるのが自分の目標だ!と、何やらストイックで珍妙な目標を語っております。
ですがそんな春子に、祖父はこう言うのです。
ならば決定的に足りんものがある!!
サバイバルとは「個」の保存だけに非ず、自らの種を残してこそ真に「生き延びた」と言えよう。
つまり

個を作らねばサバイバルとは言えん!!
文明社会へ出て、パートナーを探すのだ!
個を成すことができた暁には、真のサバイバリストになれよう!!

……そんな祖父のわけのわからない理屈を素直に信じて、彼女はわざわざここに居候にやって来たのでした。
が、だからといって坦がパートナーに選ばれたのかと言うとそうではありません。
むしろ弱そうだからとお眼鏡にはかなわない様子。
ではなぜわざわざこの家をホームステイ先に選んだかと言いますと……
その昔、坦の家のお隣に住んでいたから、とのこと。
あまりにテキトーな理由に突っ込まざるを得ない坦ですが、そうこうしている間に背負っていたワニガメを覚ましてしまいました。
当然のように暴れはじめるワニ。
ですが春子はあくまで冷静。
口を拘束してあるから無力だ、と言うのですが……やはり巨大なワニですから暴れる力は半端ではなく、部屋中を駆けずり回って荒らし放題荒らしまくってしまいます!!
止めて止めて!!と叫ぶことしかできない坦……
しかしそこは流石の春子、どこかから取り出した刃物で素早くワニの首を切り裂き、あっと言う間にワニをしとめてしまうのでした!!
……が、その直後、坦は春子(とワニ)を外に頬りだして、がっちり戸締り。
なんだあの子、輪に背負ってくるし、ためらいなく殺すし、子作りとか言ってるし……
もう正直言って、関わり合いになりたく無さがものすごいです……!
しかし一人になって一旦は落ち着いたものの、いくら戸締りしたところで彼女にかかればすぐこの家の中に入ってこれそうなものですが、彼女が入ってくる様子はありません。
恐る恐る外の様子をうかがってみると……
庭で火を起こし、ワニを焼いて食べようとしているところでした!
どこまでもマイペースな彼女ですが、ここは住宅街。
ご近所の奥さんにはこんなところで火を起こしたら危ないと怒られてしまいますし、誰かが通報したようで消防車までやって来てしまいますし……
春子はしこたま怒られ、早くも文明社会の洗礼を受けるのでした。

ともかく学校です。
坦が学校に行こうとしますと、春子は若者が集まる学校ならば強いパートナーが見つかるかもしれない、と自分も学校に行くと言いだしました!
彼女が学校に来たらパニック必至。
絶対に連れて行くわけにはいかない、と考えた坦は、あんなところに野生のスベスベマンジュウガニが!と謎の嘘をついて彼女の注意を引き、その隙に逃走を図ったのです!
幸い素直な彼女は、スベスベマンジュウガニは有毒種だから絶対に食べてはいけない!と化に探しモードに入ってくれたので、その場から離れることは出来ましたが……
少し走ったところで、安心してください、ただの沢蟹でしたよ!と小さなカニをもって追いかけてくる春子。
坦はとにかく逃げの一手で、なんとか発射寸前のバスに飛び乗ることに成功。
これでようやくまくことができた、と胸をなでおろすのです。
……しかしそうは問屋が卸してくれません。
窓の外を見ると、すぐそこに春子が!!
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なんと彼女、ダッシュでバスに追いついていたのです!!
驚愕する坦でしたが、その直後にさらに驚く事態が巻き起こります。
坦に気を取られていた春子は、
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トラックと正面衝突!!
あまりにも衝撃的すぎる光景に、坦も慌ててバスを降りて彼女のもとに駆け寄ろうとするのですが……
危ないところでした、と涼しい顔!!
なんと、受け身を取ったから大丈夫だ、と言うのです。
トラックに、正面からぶつかったと言うのに……

改めて彼女のヤバさを知った坦、再び逃走。
春子はそんな坦をすぐさま追いかけ、瞬く間にとらえてしまうのです。
じゃあ早く学校に行こう、とくっついてくる春子。
押し付けられた胸の柔らかな感触に、もうどうでもよくなってきてしまった坦なのですが……
そこにまたまたトラブルが。
最近街を騒がせているひったくりが、二人の目の前に現れて犯行を行ったのです!
しかもその犯人、世紀末の世でヒャッハーしていそうな、エンジョイ&エキサイティングルックスをしている見るからにヤバ気な人物!!
もはやツッコミも間に合わない坦でしたが、春子はそんな犯人たちを見て……強そう、あれならパートナーにふさわしいかも、と言いだすではございませんか!
早速春子は犯人がお相手にふさわしいか試そうと近づいて行き……
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あっさり撃破!!
犯人たちはノックアウト、乗り回していたバイクは大爆発、と完膚なきまでに力の差を見せつけるのです。
完勝を収めた春子は、見込み違いでしたね、つぶやきます。
今の騒動で気を失っていた坦に気が付き、死んだふりですか、サバイバルでは愚策ですよ、と近づいて行くと、彼女の肩をたたく何者かが現れました。
今度現れたのは……警察です。
刃物を振り回し、あれだけの騒ぎを起こしたのですから……まあ当然の登場でしょう。
春子はあえなく、しょっ引かれてしまうのでした……

幸いにもその警察の方はおおらかな人物で、例のひったくりを捕えた功績を認めて今回だけは不問にしてやろう、と春子を解放してくれました。
ですが流石の春子も深ーく落ち込んでいるようです。
私は気付いてしまいました。
自然かいと文明社会では、ルールが全く違う!
サバイバルでは一つのミスが死につながることもあります、下手したら今日死んでいたかもしれません!
このままでは小作りはおろか、生きるのさえ困難……
サバイバリストとして、まずは文明社会に適応しなければ!!
話しているうちに、徐々に気合を取り戻してきた春子。
トラックと正面衝突しても大丈夫だった彼女が、ひとつのミスで死ぬのは考えづらい気もしますが……
ともかく、こうして彼女の新たなサバイバルが始まります。
文明社会に適応し、そして子作りして最高のサバイバリストになる!!
そんな彼女の戦いと……坦の苦悩の日々が!!



と言うわけで、春子と坦の文明社会サバイバルが始まる本作。
取り立ててとりえのない少年、坦と、取柄は山ほどあるものの、それを補って余りあるずれっぷりの春子。
ふたりが……と言うよりも、春子がひたすら暴走し、坦がそれに巻き込まれていくドタバタコメディ学位ひろげられていくのです!
春子が挑む文明社会には、様々な敵がいるようで。
生まれて初めて見る自動お掃除ロボットを生物だと勘違いしてバトルしてみたり、初めて見た冷凍室の中に坦と二人閉じ込められてしまったり……
そんな文明の利器との戦い(?)だけでなく、今巻の後半からは学校にいる個性的な生徒たちとのバトルが巻き起こったりもしていきます。
まさにルール無用と言う言葉がふさわしい春子に対し、てこでもルールを守らせようと立ち塞がる生徒指導の教師。
全身鋼鉄のロボットのような謎だらけの生徒会長。
そして、暴れまわる春子にいきなり包丁を見せつけて脅してくる、ちょっと怖い感じの少女の甘木……!!
あまりにも個性的すぎる春子に負けず劣らずの個性派次々に現れ、物語を引っ掻き回していくのです!!
ついでに、子作りが目標なのに全く臭って固なさそうだったラブコメ要素まであったりなかったり……!?

パワフルでハイテンションな文明社会サバイバルコメディ、一応(?)まともなサバイバル知識を織り交ぜ、設定資料的なおまけも収録して大充実の内容となっております!
春子の目標は達成されるのか?
そのお相手は誰なのか?
そんな気になるような気にならないような要素も含め、今後が気になりますね!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!