am0
今回紹介いたしますのはこちら。

「あらくれお嬢様はもんもんしている」第1巻 木下由一先生 

講談社さんのヤンマガKCより刊行です。


木下先生は08年にデビューした漫画家さんです。
09年より「くろのロワイヤル」で連載デビューされ、単行本も発売されたものの残念ながら第2巻が発売されずじまいとなってしまいました。
その後コージィ城倉先生原作の「湯けむり球児」の作画を担当。
そして18年より本作の連載を開始されました。

そんな木下先生の最新作となる本作は、とあるお嬢様の悶々とする様子を描くラブコメディです。
昨今流行っている、単純な惚れた腫れたではない、一捻り加えられたラブコメの類である本作ですが、その内容はと言いますと……?



口無椿。
すらりとした長身と類稀なる豊かなボディを兼ね備えた抜群のスタイルと、バレー部で活躍する運動神経、そして凛々しく整った「王子様」的な美形で、女子たちから絶大なる人気を得ている彼女。
今日もいつものように、親衛隊とまで言われているファンたちに囲まれていたのですが、そんな彼女達のいつもの光景を砕く一人の男が参上します。
風紀の乱れの元凶、口無椿と親衛隊よ、その騒がしい存在を慎みたまえ!!
真っ向からそうやって注意の言葉をぶつけて行く眼鏡の男は、風紀委員・起立匡史。
風紀委員である彼の言うことはちょっと言い方はあれですが、廊下に拡がってやかましくしている椿たちに対しては一利も二利もある言葉のような気もします。
が、椿は全く怯まず、そっちが慎みなさい、退学にされたくなければね、とこちらも真っ向から受けて立ちました。
それもそのはず、椿はこの学校の理事長の孫娘。
祖母である理事長の力を借りれば、生徒一人をこの学校から消すこともできる、と言うわけです!
とはいっても、この行動は風紀委員としては正しい行動。
そんな正しい行動をしている生徒を、真っ当な理由もなく退学にすることなどできはしません。
椿が今まで退学にしてきた生徒や教師たちと言うのは、基本的に彼女にセクハラ的なことをしてきた者達。
気に入らない相手もルックスは抜群である椿のハニーなトラップ的なものに惑わされ、セクハラ的な行動を誘発、その証拠をゲットして退学に追い込んできたらしいのです。
そんなことから男子生徒には恐れられている椿。
男子生徒たち自身も、あの大きなお胸で迫られてエロいことにならない男はいないもんな、と不可避の罠に戦々恐々としているのです。

話は戻り……椿はやはり匡史の存在を面白くなく感じていまして。
その偉そうな言動だけでも腹が立つと言うのに、成績は常にトップ、常に自分の上にいる、と苛立つ椿。
いつも私の上にいて……と言う自分自身の心の声に、椿は
am1
なぜか自分の「上に乗る」匡史を想像してしまいました!!
違う、そーじゃない!あの男が上とか絶対ない!と思わず顔を赤くして叫んでしまう椿!
その妄想の内容など知る由もない親衛隊は、椿様はあんなザコ眼鏡より断然上です!と人間力の上下的な意味の言葉を送るのですが、その言葉を聞いて今度は自分が「上に乗る」シーンを想像してしまい……!?
赤面して顔を覆う椿。
最近何故だかこんな匡史とのよからぬシーンの妄想をちょくちょくしてしまうようで……これもアイツが鬱陶しいせいだ、と椿は結論付けます。
さっさと消してやる!そう決心し、その日の放課後に早速いつものような作戦を実行に移すのです!!

一人PCに向かって何か作業をしている匡史。
そこに椿は現われ、こんな遅くまで委員活動をしているなんてご苦労様ね、と声をかけて行きました。
匡史は一瞥すると、風紀だよりを作るのに忙しいんだ、と答えて再び作業に戻ってしまいます。
すると椿……何も言わず椅子を持って来て、匡史のすぐ横に座りました!!
人気のない放課後、雰囲気にのまれて理性を押さえられなくなった男の行う所業を監視カメラが収める……!
そんな作戦のようですが、匡史は舌打ちして、鬱陶しいから離れろ!と一喝するだけ!
当ての外れた椿は、本当は緊張してるくせに偉そうに、と面白くない思いを抱くわけですが……彼女の更なる作戦、「禁じ手」がここから始まるのです!
風紀だよりってこうやって作るんだね。
そう言って体を寄せて行き、その豊満なお胸を匡史の腕にのせて行ったのです!!
瞬間、椿の体には今まで行ってきた禁じ手の時には感じたことのない感覚が走るのですが、その感覚に驚く間もなく、匡史のホイッスルの音が室内に響き渡るのです!!
みだりに近寄るな、そしてキーボードが打ちづらいのですごく邪魔!!
匡史のそんなものすごい真っ当ながら、思っていたのと違いすぎる反応に椿の心はさらなる怒りで塗りつぶされてしまいました。
そうですかそうですか、いいでしょういいでしょう!
そんな苛立ちの末に取られた椿の行動は、なんと
am2
自分の着ていたシャツのボタンを引きちぎってお胸の一部を露出させる、と言うとんでもないものだったのです!!
防犯カメラの位置的に、自分からボタンを千切ったシーンは映っていないはず。
そしてこの私の露わな胸元に欲情しない男などいない!
いつでも来なさい起立匡史、カメラに収めてやるわ!
そんなじゃなる思惑を隠しながら、ボタンが取れてしまったわね、どうしよう、ととぼける椿。
そんな誘惑とも取れる行動に対する匡史の発言は……
アホか!と言うツッコミでございました。
なんというおぞましい風紀の乱れた姿、縫い付けてやるからじっとしてろ大馬鹿者!!
そう言って匡史は持ち歩いているソーイングセットを取り出し、針に糸を通し始めます。
何紳士ぶってんの?まあいい、理性に負け襲ってくるまで我慢しててやるわ。
そう考える椿ですが……
針を手にした匡史が、じっとしてろ、とシャツに手をとったその時、椿は自分自身がわからなくなってしまっていました。
何を我慢するんだっけ?
まずい、こいつをドキドキさせないといけないのに、なんで私が……
体に触れないよう気を付けながら、丁寧にボタンを縫いつける匡史。
まるでじらされているかのような気分になってしまった椿は、次第にもっとちゃんと触って、と声に出さず求めてしまい……
am3
あっ、と声を上げてしまいました!
針が刺さったか!?と血相を変える匡史!
ちがう、なんでもない、と椿が否定しますと、匡史のボタンどめはクライマックスへ突入!
玉留めがやりづらいから失礼、と椿の制服をはだけさせ、さらに真剣なまなざしで作業を続行!
自分の胸を揉みしだくシーンを想像しながら、こうやって襲いなさい!と妄想する椿の想いをよそに作業は進み……ほどなくボタンどめは終わります。
すると匡史は、そろばん教室のバイトがあるので失礼する!とさっそうとその場を立ち去る……直前に足を止め、こう言い残していったのです。
口無さん、君にセクハラ舌男子生徒や教師を理事長に告げ辞めさせる噂は知っている。
目障りな俺のこともそうやって退学させたいのだろう。
だが俺はそんな卑劣な罠にはかからんぞ!!
君には絶対指一本たりとも触れないからな!!
それだけ言うと今度こそ、失礼!と立ち去る匡史。
「指一本たりとも触れない」。
そんな匡史の言葉に、椿はショックを受けていました。
それは、罠に嵌めることができなかったと言うショックではありません。
それではこれは何なのか……?
なんか私、
am4
からだがもんもんする……
自分でもわからないその感情。
これが、「超男嫌い王子」とまで言われていた口無椿の、性の目覚めだったのです!!



と言うわけで、椿と匡史の戦いが幕を開ける本作。
この後も自分の気持ちがよくわかっていない椿による、匡史を消すため、と言う名目のアタックが続けられていくこととなります!
基本的には椿が空回りし、匡史がその圧倒的風紀力でそれを退けて行く感じのお話をコミカルに描きます。
それだけでも面白い本作なのですが、それだけではないのも本作の確かな魅力!!
初めての感情に気持ちの整理がつかない椿、その心はしっかり乙女!
今巻の最後から2話目となる第6話では、彼女の乙女の部分がしっかりと描かれておりまして、ともすれば単なる嫌な勘違い女にも思えてしまう彼女が、きちんと「ヒロイン」であることを証明してくれるのです!!
さらに匡史の方も単なる風紀の鬼ではありません!
その次、第1巻のラストを飾るお話では、匡史の主人公力が披露されまして、彼もまた「ヒーロー」であることを見せつけてくださいます!!

本作は師匠であるコージィ先生風味を色濃く残したコミカルなタッチと、コージィ先生では出しづらい(?)萌え要素の強いキュートなタッチが共存。
さらに単なるギャグでは終わらないドラマ性も垣間見え……
前途多難と言わざるを得ない二人の関係がどうなっていくのか、見守りたくなることうけあいですよ!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!