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今回紹介いたしますのはこちら。

「火ノ丸相撲」第25巻 川田先生 

集英社さんのジャンプコミックスより刊行です。


さて、完全に立ち直った鬼丸の、復活の快進撃を予感させた前巻。
鬼丸の力はもはや疑うところはなくなりましたが、 だからと言って盤石とは言えません。
もう本割では直接対決のない横綱刃皇に負けてもらわなければ優勝には届かないこと、そしてまだまだ越えなければならない相手が立ちはだかっている事……
果たして今巻で鬼丸が戦う相手とは!?



迎えた六日目。
五日目には鬼丸の勝敗以上に度肝を抜かれるある事件が巻き起こったのですが、それはとりあえずおいておくとしまして……
今日の対戦相手は、鬼丸にとって一二を争うほど因縁深い男です。
大関、草薙。
学生時代からライバルと言っていい関係だった二人ですが、大相撲入りしてからは一度たりとも鬼丸が勝ったことはありません。
草薙は学生時代をはるかに凌駕する実力を備え、必殺の形、「右上手」を取ればどんな相手だろうとも飲み込む力を持つに至っています。
が、それだけでは勝てないのが大相撲の、幕内力士たちの恐ろしい所です。
右上手を取られれば勝ち目がなくなるのならば、取らせなければいい。
研究を重ねた幕内力士たちから右上手を取るのは容易ではなく。今場所もすでに2敗を喫しています。
とはいえ、その徹底した右上手封じをこじ開け、指一本でも右手が廻しにかかれば……
それだけで勝負が決まってしまう、こだわるだけの威力があるのもまた事実!!
鬼丸もそのことを肝に銘じ、土俵に上がるのです。

土俵で対峙した二人。
ですが草薙の心中は複雑です。
昨日の相撲で、鬼丸はいわゆる「横綱相撲」らしからぬ戦法をとりました。
鬼丸はあの体格で、真っ向勝負の横綱相撲を取ろうとしていたはず。
だというのにあれでは、横綱相撲とはとても言えない小兵の相撲に過ぎない。
それでも鬼丸は、優勝を、横綱をあきらめないと言っている……
鬼丸にとっての横綱相撲とはなんなのか。
草薙は父・大和国に代わって、土俵の上でそれを問いかけようとしているようです。
が、土俵の上で聞きたいことがあるのは鬼丸もまた同じ!
鬼丸にはないものを含め、すべてを持っている草薙。
そんな男が、何かに悩んでこの地位に甘んじている……
お前はそんなものじゃないだろう!
見せてやろうぜ、インターハイの時より成長したワシらの相撲を!!

時間一杯を迎えました。
鬼丸は、負けられない戦いを、因縁深い戦いを前にしているとは思えないほど落ち着いています。
対する草薙は……
その全身から怒気を立ち上らせていました!!
君はこだわりを捨てた、君の生き方だ、好きにすればいい。
ただもう誰にも、君と僕がライバルだなんて言わせない。
八艘飛びでも猫だましでも何でもすればいい。
僕は変わらない……!
草薙は、いつものように……相手より先に土俵に手をついて待ちます。
父が、大横綱大和国がそうしていたように、「受けて立つ」のです。
そんな草薙に、鬼丸は……語りかけるかのように、深く沈み込んでから……
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真っ向勝負を挑んだのです!!
それはかつてのインターハイで激突したあのころをほうふつさせる、正真正銘の真っ向勝負!
鬼丸の今までの戦いをどれだけ見て、どれだけ考えても、結局完全に理解することなどできません。
ですが、全ては土俵の上で語り合えば分る事。
鬼丸の気持ち、鬼丸の強さ、鬼丸の相撲。
待ち望んだそれを今、草薙は存分に味わうのです!!

雄たけびを上げてぶつかり合う二人。
最近になって真っ向勝負以外の様々な戦法を見せる様になった鬼丸ですが、くさなぎのやることは変わりません。
草薙が目指すのはあくまで「横綱相撲」。
草薙の思い描く横綱相撲とは……かつての大和国の取っていた相撲です。
強者が持っている、自信を勝利に導く絶対の「型」。
大和国が右の上手を引いた時、相手は敗北を悟り、観衆は約束された勝利を待ちきれずに声をあげる。
相手によってやることを変えたりしない。
大和国は……
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ぶれない!
草薙もまた絶対の自信を持っている右上手。
鬼丸は左ひじを突っ張ってそれを防ぐと、すかさずその腕を手繰って一本背負いを狙います!
いくら取ることができれば必勝の右上手と言えど、来るのがわかっていれば防ぎようもあるというもの。
鬼丸はむしろそれを逆手にとって、攻めに転じたのです。
踏みとどまって一本背負いを防いだ草薙ですが、鬼丸の攻めは止まりません。
そのまま懐に潜り込んで、左手で草薙の左足を抱え込み、体勢を崩そうとするのですが……
草薙は左足に力を籠め、ドスンと土俵を踏みしめて耐えるのです!
こうなればもう足取りで体勢を崩すことは出来ません!
何でも来い!
草薙は鬼丸がどんな策を弄しようともそれを真っ向から受け止めようとしています。
そして、一瞬でも油断をしたその瞬間に右上手を取って一気に勝負を決めようと!!
右上手をつかまれれば、それは死を意味する。
鬼丸もそれだけは避けようと、回転の速い張り手の連打、焼け炮で応戦……するものの、くさなぎは微動だにせず!!
一歩も下がらず、鬼丸は依然土俵際……
張り手の乱打を浴びながらもなお悠然と勝機をうかがう草薙のそれは、まさしく強者のそれです。
そして草薙は、寂し気なまなざしをしながらこんなことを考えていました。
横殴りの張り手、暴力的で品のない相撲だ。
これが今の君の精一杯なのか?
君はこの相撲で横綱になると?
瞬間、鬼丸は横に大きく飛び跳ねました。
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八艘飛び。
小兵が大型力士の横に回り込むため時折見せる奇策です。
そして鬼丸にとっては、蛍の使っていた思い出深い技でもあり……
草薙はそれをじっと目で追っていました。
横綱とは、土俵深くに根を張る幹太い神木だ。
横綱が宙を跳ねるなよ、潮君。
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風に揺蕩う根無し草に、注連縄は巻けないぞ。
草薙は宙を飛んだ鬼丸の肩に左手をおくと、そのまま強引に土俵の上へと引きずりおろし……!!
来るとわかっている奇策はもう奇策ではありません。
ありとあらゆる手段を「受けて立つ」気概で土俵に立つ草薙を前に、鬼丸の打つ手はあるのでしょうか……!!



と言うわけで、鬼丸VS草薙と言う宿命の対決が描かれる今巻。
高校編最大のライバルであった草薙との戦いは、やはりこの大相撲編でも熾烈なものとなりました。
若くして大関にまで上り詰めた草薙ですが、刃皇と言う巨大すぎる壁にぶち当たって伸び悩み、今場所に至っては序盤戦を終えてすでに2敗と、期待外れと言っていい成績になっていました。
ところがふたを開けてみればこの力!
やはり鬼丸との戦いは、力士たちの中に眠る何かを目覚めさせるのでしょう!!
再び強大なライバルとして立ち塞がる草薙ですが、その先に待っている刃皇はさらにさらに強大な相手。
ここを乗り越えなければ、刃皇を優勝の座から引きずり下ろすことなど不可能というものです!!
激しすぎるライバル対決、軍配が上がるのは……!?

そんなライバル対決の前、今巻の前半では大関金鎧山との戦いも収録!
大関の座を守るだけで精一杯、と言う見方もされてしまっている金鎧山ですが、かといって決して油断できる相手ではありません。
こちらの一戦もやはり目の離せない熱戦となるのです!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!