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今回紹介いたしますのはこちら。

「家族対抗殺戮合戦」第1巻 菅原敬太先生  

新潮社さんのバンチコミックスより刊行です。


さて、「走馬灯株式会社」「鉄民」「隣町のカタストロフ」と、独自の設定を盛り込んだサスペンス現代劇を描いてきた菅原先生。
その最新作となる本作ですが、本作もやはりサスペンス現代劇となっています。
今回はいまだ根強い人気を持つデスゲームものの一種のようですが、デスゲームものにつきものであるとある要素を強くフィーチャーした作品になっているようで……?




毬山雅彦。
一家の長たる雅彦ですが、奥さんには毎日怒鳴りつけられ、娘の明穂には疎まれ、息子の晃助には無視同然の扱いを受け、優しい笑みを投げかけてくれる母は認知症を患っている。
そんなうだつが上がらないながらも、大きな問題はない「平和な日常」を送っていました。
その日もいつものように一日の仕事の確認をしながら、通勤に使っているバスが来るのを待っていたのですが……
いつもは見ることがない、目の前を大きな頭の着ぐるみが三体横切っていったのです。
何かイベントでもやっているのか、とさして気に留めない雅彦だったのですが……徐々に、異常はその着ぐるみだけではないことに気が付きました。
いつもなら出勤や通学で人の途切れることのない街中に、人通りが全くない。
バスも全く来る気配がないどころか車の一台も通らず、携帯電話も圏外になっている……?
一体何が起こっているのでしょうか。
雅彦が驚き戸惑っていると、そこに明穂と晃助が帰ってきます。
街に誰もいないしコンビニもしまっているから、引き返してきた。
ふたりがそう言うという事は……この異変、雅彦の周りがたまたまこうだ、と言う事ではないようです。

いったん家に帰り、妻も交えて近所じゅうを尋ねる毬山家ですが、やはりどこにも誰にもおりません。
そうこうしていますと、突然奇妙な放送が鳴り響くのです。
子供がふざけているかのようなその放送は、みんなパニクっていると思いますが、何が起きてるか知りたいなら教えてあげるから、いますぐ家族全員で講演に集まって、というもの。
やむなくその放送に従い、母もつれて公園に向かうのでした。

するとそこには、同じように放送を聞いたと思われる家族が何組か公園に集まっています。
そしてその前に立っているのが、先ほど毬山が見かけた着ぐるみのうちの一体でした。
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そしてその着ぐるみ、「せいらちゃん」は説明を始めます。
ここはみんなのいた天舘町とは違う、「裏・天舘町」。
街から消えたのはみんなではなくて、ここにいる家族たちなんだよ。
それで……
と本題に入ろうとしたところで、集まった家族たちの中から不満の声が上がり始め、そのうちの一人、関さんちの慎二さんは自宅に帰ると言いだしたのです。
どうしても帰ると言い張る慎二に、せいらちゃんは、それはざんねん、といって
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頭をたたきつぶしてしまったではありませんか!!
文句ばっかり言う人はこんな風になっちゃいます。
そういいはなつせいらちゃん。
ぞの場に集まった人々の顔からは一様に血の気が失せ、戦慄するのですが……
そこに、残りの着ぐるみ二体が現れたのです!
パパ、ママ、と呼ばれるその着ぐるみ。
どうやらその二体も危険度は変わらないようで、パパはペガサスらしい自分をカバと呼んだものがいると切れて浅倉さんちのご主人を殺害。
その血が飛び散って汚れたから、とママは手近にいた野本さんの奥さんを惨殺したのです!!
その上死んだ者たちの亡骸は、
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どこからともなく現れた気味の悪い姿をした人型の怪物、「ラクガキ」が貪り食ってしまい……!!
もはやこの着ぐるみたちに逆らう気は失せてしまいました。
誰もが押し黙ったその時、せいらちゃんはあらためて説明を始めるのです。
毬山さん、野本さん、浅倉さん、入来さん、浪川さん、土井さん、関さん。
みなさんたち7家族は選ばれてここに来ました。
今からレクリエーションを始めます。
勝ったチームには豪華賞品をプレゼント、最下位のチームは代表者一人を選んで罰ゲーム。
その人は、ラクガキたちがおいしくいただいちゃいます。
負け続けたら人数が減っていって、誰もいなくなったらそのチームは失格になります。
最後まで生き残ったチームが優勝、その家族は元の天舘町に返してあげます。
それじゃあ本日のレクリエーション、発表しちゃいます。
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わなげ。
みんな、死にたくなかったらがんばってね。



と言うわけで、理不尽なデスゲームが幕を開ける本作。
本作はゲーム自体は実にシンプル。
この第1巻ではわなげのほかもう一つゲームが行われるのですが、そちらも「すもう」と、ゲーム自体が何か危険なものだったり、奇をてらったりするものではないようです。
ゲームで人が死ぬことはおそらくなさそうなだけに、その命を懸けることになるゲーム自体のうまさや強さよりも、精神的なものが大きく勝負を左右することになります。
そしてその精神的なものを左右するものといえば、人間関係でしょう。
こう言ったデスゲームものでは、全く無作為に参加者が選ばれるタイプと、何らかの意図があって選ばれるタイプの2タイプがありますが、本作はどうやら後者のようで。
お話が進んでいくにつれ、参加者の家族同士の関係性が徐々に見えてきて……そして、その家族同士の過去の関係や、現在のパワーバランスがかかわってくるのです!!
生死をかけたこの極限状態になってなお、無視はできない「過去してきたこと、されてきたこと」、「現在の上下関係」。
それらが本作の大きなカギとなり、本作の最大の軸となっていくようです!

そして今巻のラストには、早くも着ぐるみたちの正体と思しきものまで見えてきます。
これもおそらく、参加者たちの関係に比重を置いているからこそなのかもしれません!!
このゲームはどのような目的で、誰が画策したのか、本当に残り一家族になるまで帰れないのか。
数々の謎をはらみながら、物語は進むのです!!




今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!